2・突撃攻撃!
なんじゃこりゃああ、と叫ばなかった自分を褒めてやりたい。
城塞だ。
どう見ても城塞だ。
ヨーロッパっぽい。
絶対日本の戦国時代とかのじゃない。
そしてボロボロ。
屋根とか壁とか、所々崩れてるし。
(いや、わたし日本人。
ここはドコデスカ)
ちょっと片言エセ外国人に脳内で現実逃避。
(いやいやいや。
まだ夢かもしれないし)
おそるおそる近づいてみる。
城塞の前はただっぴろい野原になっていて、霧の向こうに薄く湖が見えた。
湖を覗き込んで、その透明度にちょっとびっくりする。
(おお、魚。
これは何とかして捕獲できれば食料になるよ!)
いよいよとなったら飲料水もゲットできるかもしれない!
そんなことを思いながら、さらに城塞に近づいていく。
(うーん、見れば見るほど城塞…)
そんなに詳しくはないけれど、11.12世紀の城塞っぽい印象を受ける。
確かその頃から石造になっているのではなかったか。
(本格的な石造の城塞は14世紀頃、じゃなかったけ…
これはそれにしちゃずっと小さいし…大砲がつくのはもっとずっと後の時代だものね)
そこまで考えてぎくり、と立ちつくした。
近くまで寄ってみて分かったのだが、その城塞がボロボロなのは壁や屋根が壊れているからだ。
歳月によるものではない。
(…燃えたような跡…)
歳月による劣化ではない、とすると。
(―――タイムスリップ?)
ぶんぶんと首を横に振る。
まだそうと決まったわけじゃない。
さらにおそるおそる近づいてみる。
正面に木の扉が見えた。
この扉は所々焼け焦げているが、崩れてはいない。
扉の前に立って、息をつく。
しばらく立ち止り、扉を見つめた。
(―――よし!)
意を決して扉に手をかける。
そして――――
「―――――!!」
思い切って開け放った。
「…………」
「…………」
「…………」
「……ふう。
なんだ、何も起きないじゃん。
イノシシやクマでも飛びかかってきたらどうしようかと思っ」
『お待ちしておりました、お母さまあああああ!!』
「ぎゃあああああああああ!!」
『母上!!とうとう!とうとう来てくださったのですね!!」
『母様、うれしいの!!やっと会えたの!!』
『かあちゃーん!会いたかったよーかあちゃーん!』
光の玉が4つ。
部屋の奥からわたし目がけて突進してきて、ぶんぶん竜巻のように周囲を旋回し始めた。
『お母さまあああ!』
『母上ー!』
『母様―!』
『母ちゃんー!』
「私は24歳!!独身じゃあああああああ!!!」
せめてお姉ちゃんと呼べえええええええええ!!!