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20・建築暴走

芋ともろこしの生産計画破綻はここに至って完全に修復不可能となった。

でも餓死はなくなったので良しとする。というかあきらめる。


衣、食に関してはひと段落したと言えよう。

むしろもっと暴走した項目がまだひとつある。


そう、住。


建築関係もろもろである。

これは暴走、というかこの世界の予測できる文化水準をまるっと無視してやりたい放題やった。

いいのだ、止める人がいないから。

それに私は人間らしく生きたいのだ。

なのでどんどんいく。



まず調理用のかまどを作った。

これは実は和紙作りと同じ日に着手、日暮れまでには完成させた。

簡単なものだったし、この程度のものでどれだけの火力が得られるか見たかったというのもある。


粘土と石灰をまぜてこねこね。

石で土台をつくり、さらに石と粘土を交互に重ねて積み上げる。

上部に鍋をつけ、その通りの大きさと形に穴を作る。

城塞の煙突っぽいものを拝借して、かまどから城塞の壁の穴まで通る通気口をつける。

仕上げに表面をこてでつるっつるにして完成。

ちゃんとしたものは後で作ることにする。


しかしこれだけのもので、かなり料理がしやすくなった。

お湯を沸かすだけでも大変な違いである。

これはいけるかもしれない、とぐつぐつ煮立つお湯を眺めながら以後の計画を模索。


翌日、さっそく粘土と石灰、石英、藁を混ぜて日干し煉瓦を作る。

混ぜたものを木枠にはめこみきれいな長方形を作ってから放置。

同時にろくろを急造。

電気なんてないし、手で回すだけの超簡単なものである。

それから煉瓦と同じ粘土を使って食器を数点、るつぼもどきを作れるだけ作る。

こちらも煉瓦と同様に天日干しに。


次に城塞からやや離れた斜面に穴窯を作る。

石英がとれた付近に風化した蛙目粘土の層があったのでそこをロックオン。

斜面に沿って横からトンネル状に穴を掘りぬくことにする。

4匹に手伝ってもらってさくっと終了。


そしていよいよ日干しが完了。

この日干し煉瓦で掘ったトンネルの天井をしっかり支える。

そして石灰、石英と近場から取れた土灰を地味にごりごり砕いて釉薬を作る。

それを食器にかけ、窯の中に作った日干し煉瓦の棚に納めていく。

あまった日干し煉瓦も残らず中に入れておく。

設置が終わったらいよいよ焼成開始。

窯の入口にアカマツの薪をくべて燃やす。

どんどん燃やす。

ひたすら燃やす。

4匹と交代しながら燃やし続けること三日三晩。

ついに窯出しの時がやってきた。


窯出しの時というのはなぜかいつも緊張する。

陶芸の道にはまったまま帰ってこなくなったいとこが一人いるのだが、そいつに付き合ってちょこっと手伝っただけの窯出しの時も緊張したのだ。

緊張しないわけがない。


そして今回の結果はというと



――――まあ成功??



と言えるだろうか?

いや他に表現のしようがない。

食器やるつぼもどきは半分が爆発していたのだ。

爆発。爆発って本当にするんだなーと妙に感心した。

4分の1はひびが入っていた。

まあこんな急造穴窯なんだからしゃーない。


それでも成功した分はかなりいい感じに仕上がっていた。

食器の表面は白色、もしくは透明でつるつる。所々青味がかっている。

立派に陶器と言って通用するだろう。

「こんなものはわしの求めていた作ではないッッ」とか言って床に叩きつけることはしない。全部大事に使用する。

そして日干し煉瓦。


そーなのだ、これが欲しかったのだ。

ぶっちゃけ今回の陶器とるつぼは実験、おまけである。

この煉瓦が作りたかったのだ。

石で叩いてみるとかちんかちんと固い音がした。


(よっしゃ――!

耐火煉瓦ゲットだぜ!)


そしていよいよ建築暴走は加熱する。


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