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1・ここどこ

そして見上げた向こうには青い空。


はい、しちゃいましたよ、どこぞに転移移動。

さっきまで確かに自宅のベッドで夢見てたはずなのに、ばっちり山の中。

とっさに頼んだ趣味の道具たちが積んである傍らに、仰向けにひっくり返ってました。


夢だ夢にちがいないと、頬をつねってみたり(うわー、お約束過ぎて恥ずかしすぎる、でもやっぱりやっちゃうよね、だってお約束だもんね)もう一度寝て目覚めれば夢が終わるとばかりにその場を転がってみたりしたけど、すぐにやめた。

だってやっぱり夢と現実は違う。

風とか温度とか匂いとか。

ゆるい斜面の落ち葉やごつごつした木の根は、絶対に本物だ。

脱力したけれど、何はともあれ積んであった物品の小山を確かめることにした。


(まだ夢だという可能性は捨てたくないけど、とりあえず死にたくないし)


とほほな気持ちでひとつひとつを探ってみる。

そしてちゃんと頼んだものが一通りそろっているのを確かめて、少し安心した。

500冊近くはある本に至っては揃えて並べてあった。

わたしはそれに感動しかけて、すぐにがっくり項垂れた。


(こんな山の中でザックはともかく、本に園芸用品にDIY道具…

持ち運べないじゃん…

本よごれるし…)


そしてパソコン。

ああ、スマフォ。

あと2秒、いやせめて一秒あれば…


一定期間山奥、って聞いてなぜにテンパって登山道具にしちゃったかな、わたし。

そしてなぜ園芸道具とDIY道具と本500冊。

そして小太刀。


(つかわねええええ)


しかしともかく、ありがたいことにテント泊の装備一式の中には登山靴と靴下も含まれていたので、すぐに履く。

半袖シャツも上に羽織っておく。

パジャマ代わりのマキシワンピースに半袖シャツ、背にはザックと手には小太刀。

という世にも珍妙なスタイルが出来上がった。


(いやー町中でこのスタイルだったら間違いなくおまわりさーん、変質者がー!だね。

山の中ででも変質者だけどね)


念のためGPSで現在地を見てみようとしたが、一定期間山奥、という単語からうっすら予感していた通り、だめだった。

電源は入るけど画面は真っ黒だ。


(どこだよ、ここおお。

まっくろってさ、まっくろてさああ。

壊れちゃったのかな、このGPS。

高かったのにいい)


(…それにしても立ちどまっててもなあ…

とりあえず周りを少しだけ、見てみよう)


残りの趣味道具は無駄だと思いながらも、ザックから出したビニールシートの上から落ち葉をかぶせる。

目印にソーイングセットから赤い糸を出してそばの木に結びつけた。

そしてそろそろと斜面を登り始めた。


(おっと、斜面がもう終わった)


すぐに尾根が見えて拍子抜けした。

斜面を登りきると展望のいい、広い尾根に出る。

でも期待した登山道は見つけることができなかった。

本当に人のこない無名の山だったらやばいな、と思いながら周りを見渡して、はっとなった。


「家……!?っぽい……!?」


尾根を下った所に霧がかかった湖が見える。

そしてその湖畔に人工物らしきものが見える。ような気がする。


(避難小屋だったらラッキー!)


見に行くしかない!

俄然はりきって、しかしクマを警戒しつつ、慎重に湖へ向かう。

尾根を下ってからは草を踏みかため、石を積んだり落ちている枝を組んだりして道しるべを作ったりしながら進む。

そのおかげでゆるい下りだったものの、かなり時間がかかった。

それでもようやく湖の近くにまで来ることができた。


(どんどん霧が濃くなるな……?)


不安に思いながら進むうちに、突然森が開けた。


(……………)


(は?)


「はああ?」


岩のように見える石の壁。

崩れかけた塔。

明らかに人の手で造られたもの。

ヨーロッパの城塞にしか見えない建造物が、そこにでででーんとそびえ立っていた。


「はあああああああああ!!?」


日本ですらねええええええええ!!?


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