18.食料事情
芋ともろこしの生産計画は破綻したが、その他の食料に関してはまあ予定通りになった。
予定通りというより、手に入れられる時期に然るべき量を手に入れられた、といった方が正しいだろう。
ヤギのミルクは毎日朝・夕2回ずつ絞った。
畜産農家の親戚のおじちゃんが
「毎日絞ってあげないと乳房炎になるっぺ」
と言っていたのを覚えていたのだ。
それを低温殺菌して飲んだり、生クリームを取ったりしていた。
ちなみにこのヤギさんのミルクはたいそう美味だった。
すばらしい。
鶏の卵は毎日は取れなかった。
2日連続だったり、3日後だったり不規則。
でもおいしい卵だったし、少なくとも1週間に1個は食べられたのでたいへんありがたかった。
鶏は堆肥作りにも役立つ。
オガクズは醗酵が遅いらしいとは知っていたが、交換のためにトイレから出したオガクズもやはりまだ不足な気がしたので堆肥床を作ることにした。
穴を掘って木で囲って、鶏糞と落ち葉と使用後のオガクズ、調理後の野菜くずなどを重ねて積んだものである。
しかしこの堆肥床はなかなかの出来で、数ヵ月後にはかなりいい感じの堆肥に仕上がった。
この堆肥を使えば、何か他の大問題が発生しない限りまた大豊作になりそうである。
秋植えには間に合いそうなので次回使用予定。
それに加え、椿の苗木からは早々に椿の実を取ることができた。
苗木から実を取ろうと思ったら、植木鉢で小さく育てるのがミソなのだ。
同時に元からあった椿の実から十数個を選んで発芽させ、苗木を増やす。
ゆくゆくは椿の林を作ってやろうという壮大な計画である。
残った実は絞って椿油にして小太刀の手入れ、食用油、ヘアオイル、灯りに使った。
油の搾りかすは全て畑の肥料にした。
他にも油と搾りかすはクルミやヘーゼルナッツからも入手できた。
秋の森で大量にゲット、同時にブルーべリー、イチジクも収穫。
このベリーとイチジク、ナッツとコーンスターチ、卵で作ったビスケットは我ながら会心の出来だった。
保存食にもなるし。
しばらくはこのビスケットを作りまくった。
とはいえ逆に言えば、このベリーとイチジクが採取できる唯一の甘味だった。
が、それを不満に思ったことはなかった。
そりゃまあ、私だってスイーツは大好きだ。
カレーが正義ならばスイーツは癒しだ。
でも野菜が十二分に甘かったし、特にミニトマト。
ありえねえ、フルーツかよと思うほど甘く育った。
わざと水分と肥料をひかえ、スパルタで育てた成果がでたと言えよう。
愛のムチってやつである。
このミニトマトは乾燥させてドライトマトにした。
そしたらさらに甘さを増して、砂糖かと思うほどになった。
トマトすごい。
……マゾ?
いや、叩くとのびるタイプなんだろう。