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10、白い平原

『お母さま、元気を出してください!』


『そうだよ、母ちゃん。

北に行けば何かあるかもしれないよ!』


『後で飛んで行ってみましょう。

もし北にも壁があっても、そのうち私たちがきっと何とかしてみせますから』


『ホクもがんばるの。

だから元気出してなのー』


「うん……ありがと」


いい子や。

あんたたちいい子や。


でもまあ、そう簡単に文明圏に脱出できるわけはないんじゃないか、とはうっすら思っていた。

一定期間山奥、と言われていたし。


(―――どこまで信用できるか分かんないけどね。

もし本当に一生このまま帰れなかったら恨む。恨んでやる)


「仕事はクビだろうし、シャレにならん。

まあ心配かける家族はいないからいいけどさ」


『えっ』


「えっ」


『………お母さま、ご家族がいらっしゃらないって……』


「あー、父母も祖父母も死んじゃってるから、一緒に住んでる家族はいないってこと」


父母は私が中学の頃に交通事故で。

母方の祖父母は私が物心つく前に亡くなっていたので、しばらくは元々いっしょに住んでいた父方の祖父母と暮らしていた。

しかし祖母は私が高校の頃、祖父は就職して一年経った頃に病気で亡くなった。

兄弟はいない、ひとりっ子である。

 

「あ、天涯孤独じゃないよ。

叔父さん叔母さんがいるし、いとこに至っては10人以上いるからね。

みんな飛行機の距離に住んでたけど、仲は良かったんだよ。

私の多趣味もこの親戚の多さが一因だしね」


みんなが心配して、それぞれの得意分野に私を引っぱりまくったのだ。


「まあそのおかげで、なんとかサバイバルできそうだから人生どう転ぶか分からないねー

叔父さんたちには心配かけちゃうから、それがちょっと気になるけど――――ってちょ、な、君たちなになに、なんなのどうした」


『母上えええええええええ』


『ナンたちがっナンたちがおりますからっっ』


『母ちゃん大丈夫だああああ』


『ホクたちが家族なの!

ずっといっしょにいるのお!!』


「つぶれる!一気に抱きつかないで、あんたたち今巨大化してるんだからってマジつぶれるつぶれるうう!!」



   *   *   *



そしてとにかく北に行ってみることにした。


その前に浜辺におりて、打ちあがっていた昆布を回収。

昆布だしゲットである。


森は改めて探索に来ることにして、再び4匹と共に空に浮かび上がった。

森を越えて火山上空に差しかかった所で、私はあっと気が付いた。


「あそこ、カルスト地形だ!」


『カルスト地形?』


「そういう名前の地形があんのね。

あー、石灰岩ほしいな、石灰があると色々助かる」


『母上、後で私たちが運んで持っていきましょう』


「やー、あなたたちいい子だマジいい子だ。

そして喜べ、これでカレーへの道がまた一歩近づいたぞ!」


『えっ!?それは本当ですか、母上!』


「石灰は園芸にもばりばり使えるのだ!

カレーさんもすくすく育つぞ!」


『すげえええ』


『やったのー!!それならがんばっていっぱい石を運ぶのー!』


『『わーい』』


「わーい」


『『わーい』』


踊りながら飛んでいると、あっという間に火山上空を通りすぎた。

火山岩の広がる黒い大地がしばらく続く。

やがて草一本生えていない茶色の大平原に入り、それからなおしばらく飛んで、やっとその白い平原に到達した。


「ひとまずこの白い平原を進めるだけ進んでみよう」


『はい、母上』


トウ君がうなずいてスピードを上げる。

ぐんぐん飛ぶ。

でも広い。

かなり広い。

相当飛んできて、もしやこれは無限果てなしパターンか、なにそれ怖すぎると思いはじめたとたんに


『ぐえっ』


「ぐわっ」


がくんと衝撃を受けた。


『お母さま!?』


『母ちゃん!?』


「大丈夫大丈夫、今度はしっかりつかまってたから……

ってやっぱり進めないんだねトウ君」


『うう、すみ、ません、母、上』


「いや、そうだと思ったんだよね。

いいよいいよ、下に降りて調べてみてから戻ろうよ」


『すみません……』


しゅーんと小さくなるトウ君をなでなでして

(いい子や、ホントあなたたちいい子や)

下に降りていく。


トウ君の背中から降りた私の足の下で、地面がさっくり、と変に渇いた音を立てた。


「ん!!?

こここ、これはまさか!?」


『どうしたの、母様ー』


下にしゃがんで、転がっている白い石を手に持ってみる。

手についた粉をちょびっとだけなめてみた。


「しょっぱ。

……ということは!やっぱり!!」


『それ、昨日母様が洗濯に使ってた粉と同じなの―』


「………え?」


『同じものでできてるの。

中身も重さも同じなの―

でも今母様が持ってるものの方がずっと混じりけがない感じなの。

昨日は少し違うものが混ざってたのー』


「…………」


な・ん・だ・と。


『お母さま、ホクは地の精霊ですわ。

ですからホクはこの世界の地表から生み出されるものには特に詳しいんですわ』


『石とか土とか砂とかが得意なのー

何でできてて、どこにあるのかとかが分かるの―』


すげえええ!


「アニマルダウジングじゃないですか!!

むしろダウジングよりすごいじゃないですか!!」


『わーい、ほめられたのーうれしいのー』


「そして確定!

高純度トロナ、ゲットおおおおお!」


あこがれの天然重曹ですよ!!



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