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4話 おかしいな、話が噛み合わない

実を言うとタイトル適当に決めました。

どんくらい適当かというと


『東方槐無夢』


どう読みますか?


はい、俺も読めません。

今のところ『かいぶむ』ってよんでる

「うぐぅ・・・」



外が騒がしい、早朝騒がしいのはスズメだけにしてくれ。

選挙活動もこんな住宅街なんかより大通り出た方がいいんじゃない?

そもそも車から選挙活動って何様?市民の事考えるのなら地に足つけて俺らの視点から物を言え馬鹿者。

カーペットの上を転がり毛布を被りなおすも、体の節々が痛い。

やはり布団が欲しい、カーペット越しとはいえ直接寝るのはつらいなぁ。

つーか今何時?


んー8時30かぁ






・・・・・・・・・・・・・・・・・




「はっ!?」



がばりと跳ね起きる。

こんなに悠長に寝ている時間じゃない!

クラリと軽く目が霞む。低血圧はこれが辛い、頭に血が足りない。

目の前を霧が張った様に白く霞む、しかしそれは一時的なもので10秒も待てば次第にそれも晴れていく。


早く仕事に・・・・・っああ?



「そうだ、今日や休みだ」



なんてお約束をやってしまったんだろう。

俺は自分の失態を誤魔化す様に軽く頭をかいた。

すでに脳みそに血の通って意識もはっきりしてきたので、再び毛布に包まるという選択肢は間違っているだろう。


ふと窓の外に目を向ける、外はまだ少し騒がしい。

おそらく登校時間になった学生が騒いでいるのだろう、朝っぱらから元気だね。

ボーっとまどろみの余韻を楽しんでいると、いい香りが鼻をくすぐる。


どうやら彼女は既に起きて朝食を作ってくれてるようだ。

素晴らしい素晴らしい素晴らしい、これは実に素晴らしい素晴らしい






昨日魚介鍋を食べ終わった時、それを待ちわびたかのように彼女はこう切り出した。



「悪いけどあなたの答えを悠長に待っている時間はないの。期間は今日を含めて七日間、幻想郷に来るべきか来ざるべきかの答えをそれまでに出しておきなさい」



彼女は食べ終わった箸や皿をまとめながらやや厳しく言った。

それだけ重要事項なのだろう、彼女の目は俺を捉えて離さなかった。

とはいえ七日、一週間か・・・・・一週間、少なくないか?



「七日間ってずいぶんと即急ですね、その日数でないといけない理由でもあるので?」


「ええ、幻想郷には管理者が存在して彼女が提示した日数がこの期間。これを過ぎる締め出されるわね。地力で帰るのは少しばかり面倒よ」



そういって彼女は洗い物をまとめて台所へ向かった。

「今日残った鍋は明日の朝おじやにして食べましょう」と彼女が片付けの作業をしながら提案する。

ああ、実に楽しみだ。俺はそう答えてごろりと横になった。


なるほど、そういう理由か。

しかし理解は出来たが俺は到底納得できない部分が存在した。

幻想郷という場所には管理者が存在し、その人物が忘れ去られた物や存在を選別するのなら、何故彼女は八意さんの行動を容認したのだろうか?

俺は別に孤高でもなければ差異者でもない。それなりに社会に溶け込み、それなりに身を置いてる。

そんな存在が忘れ去られた幻想の居場所に行くだって?前提条件からして間違ってはいないだろうか?

それとも何か、俺が話したところで与太話として処理してしまう気か?

くそ、『管理者』そんな存在がいなければ俺も疑問なんて持たなかったことだろうに。


ガリガリと頭をかく。

しかも驚きなのが俺に一週間とは言え猶予を与えていることだ。

ただ彼女が何かしら駒を欲しがるだけなら簡単だ、攫えばいい。

連れ去る場所は比喩でもなんでもなく、正しく忘れ去られた郷だ。絶対に見つかることのない場所だといえる。

俺がいたという証明も月日と共の剥離し、微分化していき、最後には消えるのだろう。今回の様に猶予を与えるよりそっちの方がよほど機密性を高めている。

そうして俺もめでたく幻想と化す、めでたしめでたくなし。


しかし件の管理者は俺に猶予を与え、選択肢まで用意している。

問答無用で攫うことと比べれば破格の待遇、いやもはやそんなレベルではない。これは変革といっていい。

幻想という郷の変革、異様にきな臭い。


さらに言うなら八意さんが嘘を言っている可能性。

俺をどこぞに身売りしてやろうと考えるなら実に都合がいい。

一週間という期間に自らの近辺を整理整頓してくれるのだ、後始末が実に楽だ。



厄介だ、非常に。

どう転んでも俺に厄介ごとしか降りかからない気がしない。

面倒なのか?そうか、じゃあもう答えが出てるんじゃないのか?と自問自答する。

もちろんだとも、断ればいい。簡単じゃあないか。


だが俺はかちゃかちゃと軽い音を立てて洗物をする彼女の横顔を見つめる。

月光のように澄んだ白銀の長髪に、それを同化したかのように写る白陶器のような肌。

すらりと美曲線を伸びる鼻先とふっくらとした唇、そして彼女の瞳は横顔から見ても吸い込まれそうに大きく、美しかった。


そうだとも、厄介ごとが来るなんて彼女が来た時点で分かっているし、それで納得出来るのなら俺もこんなに迷ってない。

ああくそ、この自問もいったい何回したことか。いい加減はっきりしろ、いつもの俺じゃないぞ、俺!




ごろごろと悶絶する。

満足に食べ終わったばかりで膨れ上がった胃は抗議の声はあげるも全て無視する。あーうーどうするよ俺ぇ・・・


と、そこではたりととても重要な事項に気づいた。



「そういえば八意さんは期限来るまでどうなさるんですか?一旦幻想某に戻るので?」


「いえ、その予定はないわね。二度手間だし面倒だもの。七日の間は適当にこの場にとどまるわ」



鍋で使った皿を謎の技術で半瞬かけず汚れを消し飛ばしながら、彼女は淀みなく答えこちらに目を向けた。



「嫌なら私はどこか宿でも取るけど・・・」



全力で拒否した、それはもう体全体を使って。






そうして俺は同じ部屋で一夜を共にしたのだった。

俺が床のカーペット、八意さんは俺のベッドで。


別に何かしら如何わしいイベントはなかった。

まぁ当然ではある。


しかし今日から後六日間とはいえ八意さんと同居できるのだ。

鼻歌でも歌いたい気分だな。

と、その時俺の携帯電話がけたたましく鳴り響いた。


『刑部 先輩』


あれ?先輩からだ。

今日は先輩は仕事じゃなかったっけ?と疑問に思いながら携帯に手にとり通話ボタンを押した。



「はいもしもし、槐ですが」


『ああ、今起きたか?』


「いや、大丈夫です。それでなんすか、先輩今日仕事ですよね?」


『ああ、いや・・・そうだな』



先輩にしてはいやに歯切れの悪い言い方だった。

今頃携帯片手に唇を撫でていることだろう、実に分かりやすいなぁ手に取るようだ。

そんな上機嫌且つ余裕綽々な俺に先輩は突然冷水をぶっ掛けてきた。



『もしかするとだが、八意 永琳って女性がお前のところに来なかったか?』



・・・・・・・・・・


数秒、俺の思考はショートした。

数々の疑問が振って湧いてきて収拾がつかない。

いかん、だんまりはまずい!何か話さなければ!


俺は手当たり次第に湧いてくる疑問の一つを手に取り投げつけた。

しかしその疑問は非常に全うでありながら、今言ってはいけない疑問ワースト一位だったと、後で気づいたのだった。



「なんで先輩が知ってんですかぁ!!!」



その俺の叫びに先輩はため息と共に答えた、やはりお前か・・・と。

疑問符が頭の周りをくるくる回っている俺に先輩はこういった。



「テレビでも見てみろ、あーチャンネル8だ」



その台詞に迷わずテレビのリモコンに手を伸ばす。




そして見た。

今台所に立っている八意さんが買い物袋を片手に、何も付けず大空へと飛んでいく映像をー。





「や、やごころさぁぁぁあああぁぁああぁぁん!!!???」



先輩の事も忘れて大声で叫んだ。電話越しに何か叫んでいるが、もう知るか!

今の俺はこれ異常ないくらいに混乱している、というか最近混乱してばっかりだな俺は!

とにかく俺は混乱をどうにかして欲しかった

納得する理由が欲しかった

解決するべく答えが欲しかった


だからこそこの混乱の大元凶である八意さんに駆け寄った。

今の俺にはそれしか考えられない。



「や、八意さん!て、てててれびぃ!」



声が異様に震えるが俺は一切気にかけない。

冷静な自分が「なに言葉を噛んでるいるんだ」と失笑する。

しかし今は気にかける事項がでか過ぎてもう何がなんだか分からない。

そんな小さなことには目が移らないのだ。

うおー


そんな俺を彼女は『?』で答え、今しがた見ていたテレビの画像に視線を移し、



「あれが?どうしたの?」



とおっしゃられた。わふー、くーるびゅーてぃー



「いや、どうしたもこうしたも!何飛んでるんですか!つーか飛べたんですか!?」



あれ?おかしいな、話が噛み合わない。

そもそもおかしいのは彼女か?俺の方がおかしいのか?

俺ら人間は何にもなしに空を飛べたか?

・・・・・・・・・・・・・・うん飛べない。

じゃあ、おかしいのは彼女だ。そうだそうに違いない。



「おかしいですよ!やごころさん!」



再び部屋に俺の絶叫が響き渡った。








「霊力で空を飛ぶのが普通ではないの?だったらどうやって地上の民は月へ到達出来たのかしら?」


「純粋科学力で宇宙へ昇ったんですよ。そもそも霊力なんてここでは稀有な代物なんです。俺ですら珍獣扱いされるんですから」


「え?そんな!地上の民は結局霊力と科学の融合がないまま成長したの!?・・・・・なんて、原始的な」



まずそこからか、彼女はあまり俺たちが住む世界に興味なかったのかもしれない。

となるともし俺が幻想郷に行ったと仮定したら、あっちの常識に馴染めるのかという問題だ。

霊力で空を飛ぶ事が常識の世界だと考えると他にはどんなものが常識だろうか?

幽霊に絡まれて世間話するのが常識とか?

それとも死んだ人間が生き返るのが常識とか?

・・・どちらにせよ、あまりこちらの常識に捉われてはいけないな、まだ行くって決まってないけど。


その間、八意さんは驚きの声を上げた後「・・・そうか穢れが・・・・・」とか「・・・・・だからこれほど時間を・・・」と呟いていたが、俺はふと別の懸案にぶつかった。

何故先輩はピンポイントで彼女の名前を言い当てたのだろうか?

部屋の隅に転がった携帯を眺めながら俺はそう考えた。








八意さんと朝食を取った後、俺はノートパソコンを開けてネット回線を繋げる。

ちなみに八意さんは俺の部屋においてある小説を手にとって読んでいる。

速読というのだろうか、司馬某作の分厚い本で、一ページに細かい文字が2行にわたって出来たものなのだが、ほんの10秒ほどで次から次へとめくって行く。

いや、幻想郷ではこれが常識なのかも・・・と自分を納得させパソコンでニュース項目を開けた。



『スーパーマーケットに飛来するする女性!?


○○市○○のスーパーマーケットで、夕飯の食材を求めにやってきた主婦のなかに、空中を浮遊して来た女性が、買い物をして再び浮遊して帰宅するという事態が起きていたことが明らかになった。

一部始終を撮影していた一人がウェブサイト上に掲載、そのコメントのなかで「空から降りてくる少女(シータ)を探すために空を見上げたことはあるが、実際に起きるとは想像もしていなかった。幻想郷は幻じゃないんだ!」と述べている。

19日午後6時15分ごろ、スーパーマーケットのもっともピークに達した時、一切の飛行器具らしきものを持たず、買い物袋片手に東方Projectの登場人物の1人『八意 永琳』と思しき人物が、空中を文字通り滑空して訪れた。

その場に居た100名近くが絶句する中、八意 永琳と思しき人物は魚介類や葱、白菜などを買い込んで、再び夜の闇に消えていった。

東方Projectとは、同人サークル『上海アリス幻樂団』の作品群の総称であり、主にZUN氏一人が制作している「弾幕系シューティング」を主軸としている。

ニコニコ動画という情報媒体を主軸に、巷でささやかながら急速に広まったゲームの一つであり、八意 永琳と呼ばれるキャラクターはそのシリーズの一つに登場するボスの内の一人である。


何故この場所に現れたかは、完全に不明となっており、製作者のZUNも口を噤んでいる。』



東方Project・・・

シューティング好きの先輩がやたら押していたゲームだったか、なるほど道理でばれる訳だ。

昨日に見た幽霊の話を逐一先輩に報告したからばかりっだったからな、もしかしたら先輩は八意さんのことを知って進めたのかも・・・いやそうだろう、あの先輩だからなぁ。

試しに幻想郷で調べてみたらwikiが頻繁に更新されるほどに知名度は高いらしい。


調べてみると、なるほど・・・わからん。

冥界、妖精、吸血鬼に閻魔。

確かにそれは幻想だろう、昔の文献に載っているだけで今の現代社会は居るとは真に受けないだろう。

というか昔の話でも『いた』と真に受けるやつなんて居ないだろう。


ちらりと外を見ると、相変わらず騒がしい。

後で改めて外を見たら、騒がしいのは登校中の学生ではなく、多くのいい大人がカメラやビデオを片手に、犬のように走り回っているのだった。

中にはプロも混じっているのだから笑えない。

ごついアンテナつけたワゴンが牛歩のスピードで走っていて、しかも中の人間は全てのものが不自然に見えるのか、一箇所に視線を写すということをしない。

確かにここは住宅街で車の往来はほぼないが、一言やめてくれといいたい。


俺はため息を一つもらしてパソコンの電源を切った。

調べた所、幻想郷の管理者は『八雲 紫』という妖怪らしい。

妖怪って・・・なんだよ、とも思ったがそういうものなんだから仕方ないんだろう、俺にはさっぱり理解できないが。

俺はごろんと横になる・・・・・あれ?頭に枕が置いてある、こんなところに置いたっけ?


ちらりと八意さんに目を向ける。


目が合った。


笑いかけられた。


視線を外した。





ゴホンッ!


この八雲はいったい八意さんをどうするつもりだろうか?

たしかに八意さんは大きく行動をとってその存在を世に知らしめた。それは幻想郷の理に反するはず、だがその一方で東方Projectという幻想郷ほぼ同系列の話を容認している。

つまりこれは同列とは言え本質が違うため放置したか、もしくはその行為そのものが幻想郷に利する事ゆえに容認したかのどちらか、か。


前者だった場合どうなるか?

本質は違えどその根本にあるのは『秘匿』だ。

『これほどしか情報の相違が激しいのなら大丈夫』というのは逆に言うと『一部分とはいえ相違が合致したら拙い』ということにならないか?

そうなると八意さんは非常に苦しい立場になる。相違が激しかろうと、類似するものがあり、それを証明する存在があるなら幻想は幻想でなくなる。

つまり幻想郷の崩壊、それを管理者が許す?許さないだろう。

いや、それ以前に何とかしてこの状況下に火消し行為を行うはずだ。

俺ならそうだな、さっさと八意さんを始末して情報の風化を待つのがベターだろう。

昔妖怪が本当に存在していたのなら、今の現状を鑑みたら分かる。彼らはいつぞや存在しないものとして扱われたのだからな。


では後者ならどうか?

東方Projectという同系列の話が広がって幻想郷が得することとは一体なんだ?

もっとも可能性が高いのは神や妖怪の為に行われているという事だろう。

神や妖怪は人々の信仰なくして存在できないと書かれていた。

神は畏怖や尊敬を糧に、妖怪は恐怖や憎悪を糧に。

人に想われるというのはそれほど重く大切なものなのだ。


人に慕われ神になる、釈迦やキリストの様に。

人に疎まれて妖魔に落ちる、吸血鬼や鬼の様に。


そしてこの東方Projectはそれらの想いを増幅するための神輿として使われたのでは?



そこまで考えて俺は軽く頭をかいた。

確かに東方Projectは幻想郷の謎を紐解く優秀な資料だが、あくまでこれはゲームであり現実ではない。

恐らく前者としても後者としても肝心な部分は隠されている可能性の方が高い。

それなら・・・と俺は視線を八意さんに向けた。


(直接聞こうじゃないか、なんせ彼女はデジタルな情報体ではなく、現実に存在する人物だからな)


そして俺と八意さんは、その日一日を幻想郷の話に終始した。




ところで明日の仕事はどういう顔でいけばいいか、誰か教えてくれ。

初めて感想もらいました、ひゃっほーい

ptがまたあがったよ!やったねジラちゃん!



・・・・・・・・・

身内にばれたらバイツァ・ダスト!

いいや限界だ!押すね!

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