3話 いい脚本家になれるぞ俺
仕事の時間だからさっさと投稿、後主人公の名前決定
でもないほうがよかったような気がする
えーりんマジ高嶺
こっからすこしずつ攻略していきます
『(相手が)攻略される』の方が好きな人はちょっとつらいかも
少なくとも永琳はがんばって落とします、他はしらね
家に唯一のテーブルになんともたまらない玉露の香りが漂う。
かく言う俺の前に湯飲みがおいてあるのだが、俺は手をつけずに正座のままじっとその湯飲みを眺め続けていた。
家なのに何故正座?
とか
早く飲んでしまわないと香りが飛ぶ
とか
今はそんなことミジンコの生態系と同じくらいどうでもいい。
そんなことよりこの家の家主よりゆったりと寛いでいる女性のほうが問題だ。
いや、問題ではないんだよ。
むしろ俺が今日半日『こうなればいいなぁ』とか思っていたことが現実になった、実に喜ばしい。
だが考えて欲しい。
例えば一匹の犬が大空に思いを馳せていたとしよう。
その犬は鳥のように自由に飛びたかったのである。
しかしそんなことは犬には出来ないし、もっというと羽もないのにどうするの?と諦めていた。
そんなある日、いつものように縄張りを練り歩き、一定間隔で生えている細長い石の塔にマーキングを施してい時、突然その犬の体から羽が生えて大空へと羽ばたいたのだー
どうよ?その犬まともでいると思うか?
俺は思わん。
突然の出来事にあわくってキャンキャン吼えるか、飛び方も分からず自然落下するのが落ちだろう。
そして俺の状況はまさしくそれだ。
突然の出来事にあわくってキョロキョロと挙動不審に視線を動かし、対応の仕方が分からず沈黙するのが精一杯。
とある小説の登場人物でキョンという高校生が自ら宇宙人だと証する長門に対して「正直言おう。さっぱりわからない」と放った台詞は今の俺にぴったりと当てはまる。
そういえばシュチエーション的にあの状況とまったく一緒だな、実にめでたい。
こんな状況下に追い込まれた人間の最善策がすでに文章化していたなんて、心よりめでたい。
しかしリアルでやられるとこんなにテンパるとはな。キョンお前すごいよ。
いやいや、状況をとにかく好転させないと、とりあえず教科書通りお茶飲んで褒めよう。それが一番だ。
そう思い湯飲みに手伸ばし、動きを止めた。
自分の部屋に違和感を感じたのだ。俺の部屋、こんなにきれいだったか?
そう思ったとき彼女が声を上げた。
「ああ、ごめんなさいね。この部屋少し不衛生でしたから、掃除させていただきました。ものの配置は変えてないつもりですし、なんでしたら元の状態に戻すことも可能よ?」
あれ?俺まだ何もいってないよ?
「ふふ、不思議そうな顔ね。けどあなたの顔にかいてあるわよ?」
うん・・・ぅん?
あれ?これ俺が分かりやすいって話なの?
それとも彼女の洞察力が異常って話なの?
今度は俺の頭が幾何学模様で埋め尽くされる。若干『?』が多いのがご愛嬌。
そんな俺をくすくす笑いながらすっと体の姿勢を整えた。
その仕草に俺は少なからずときめいた。さて、俺今日でなんどくらいときめいただろう?
「では自己紹介からいきましょうか。私は永遠亭、蓬莱山輝夜に仕える月の民『八意 永琳』と名乗っているわ」
そういって柔らかい風が頬を撫でるようにふっと微笑んだ。
一瞬くらりときたが顔を引き締める。
「は、お・・・私は『槐 隆治』と申します」
そしてこれが彼女とのはじめての会話だと気づいたのは、もう少し時間を要することになる。
彼女が部屋を出て初めて俺は足を崩した。
今首を左右に曲げるといい音がなりそうな気がする。
「ふぅ」
緊張した。心臓がいつもの1.3倍のリズムで鼓動を刻んでいたんだろうと思う。
これは夢じゃないかと何度も自問自答したし、こっそり太ももの肉をつねったりして確かめたりもした。
今彼女は晩御飯の食材を買いに行っている。
どうしてこうなったと言われれば、俺が腹減ったからだ、というしかない。
いや、本当は外に晩飯を誘ったのだ。時間的にも彼女もそろそろ腹減る時間だし。
しかしそんな俺の提案を彼女は『のー』といった。
彼女いわく
「外の世界の食事に期待するべきところはない」
とのこと。俺らは某英国人か!
文句ひとつでも言ってやろうかと思ったら「だから自分で作る」と宣言した。
本来なら俺も付き添って荷物をもち、お金も無論俺がはらうべきだ。
そう、たとえ彼女が少々奇抜な外観センスを持っていたとしても。
しかしそんな情けない事に俺はとにかく時間が欲しかった。彼女『八意さん』からもらった情報を整理する時間が。
彼女との自己紹介したとき、正直彼女の話の内容はまったく分からなかった。
永遠亭?
定食屋さんか何か?
蓬莱山輝夜?
どっかで聞いたことあるなぁ
月の民?
意味不
分かったのは彼女が『八意 永琳』ということだけだった。
そんな俺に対して彼女は一つ一つ丁寧に教えていった。
いわく永遠亭とは蓬莱山輝夜と呼ばれる姫が居を構える場所で、普段は病院として一般に開放されている。
そして月の民とは遠い古の時代に地上の穢れを恐れて月に移民したものの事を指すという。
彼女が言っている事を全て鵜呑みにするのなら、月から降りてきた宇宙人という事になる。
やべぇ、さっきのシュミレーションは設定すらも合っていたということか。
事実は小説より奇なりだなぁ。
と、ここで自分の身に起こっていることがひどく他人事のように感じたのだ。
正直に言って醒めたといっても過言ではない。
だってそうだろう。あまりにも話がとっぴ過ぎる。
自分のことを月から来た宇宙人となのったなら、それなりの証拠とやらを提示してくれなければそうそう信じようとは思わない。
「八意さん、そこまで説明してくださってありがたいのですが、生憎・・・私は永遠亭や蓬莱山輝夜姫。ましてや月に人が住んでいたとは全く聞いたことも見たこともありませんが」
というわけで俺も少し探りを入れてみることにした。
こう言われれば彼女も何かしら情報を提示してくるだろう。
彼女はいったい何のために俺の前に現れたのか、それば今のところわからない。
最初の出会いがあんな形だし、堅気ではなさそうだし、なによりいきなり俺の部屋に入り込んで『種族:月の民』を真顔で言う人物である。
・・・正直ドッキリって言われたほうが安心する様な展開だ。
収まらない混乱をよそに彼女は少し疑問に思ったように言葉を繋いだ。
「『幻想郷』というのは知らないのかしら」
「『げんそうきょう』ですか。いや、お・・・私の辞書にはそんな言葉ありませんが」
「あら、そうなの?それなりに有名になってるって聞いたんだけど」
「はぁ?有名、なんですか?」
「いいえ、こっちの話よ。そうね・・・では続けて話をしましょうか」
そういって彼女は右手を豊満な胸の位置にまでもっていき、掌を上に向けると
「っ!?」
思わずのぞけると、同時に理解した。
何故生霊姿の彼女がこの俺にも目視することができたのかを。
彼女の掌には高純度の霊力が塊となって浮いていた。
俺が50年の歳月をかけても到達しきれないと思っていた物の完成形が目の前にあった。
「これはそちらにも多少馴染みがあるでしょう」
彼女はさも当たり前のようにこういった。
確かに俺には多少だが霊力が存在するが馴染みあるかと言われれば「そんなのある分けない!」といってやりたかった。
しかしそれ以上に、俺は今ある現実を受けとめるのに精一杯だった。
そんな俺の沈黙を彼女は肯定ととり、話を続ける。
「私の現状の居場所は『幻想郷』と呼ばれるところに存在する。そこは人々が忘却の彼方へ追いやった様々な物の終着点。時には妖が、時には神が、そして時には人すらも。幻想と化した全てのものを受け入れる郷。忘れ去られた存在や技術が支配する魔境よ」
彼女は手に平にある霊力の塊の消し再び言葉を紡ぐ。
「そして私はあなた、槐 隆治を幻想郷へ誘いに来た」
そういって、彼女は先ほど霊力を消した手をこちらに差し出した。
それは母親が小さな子を正しく教え導く手のように
それは嘆きの亡霊が黄泉へと引き摺る手のように
それはこちらを誘い込むように差し出した
「あなたの答えを聞きたいわ」
俺は反射的に彼女の手をとりたかった。
感情の赴くまま、先のことなど考えず、己の欲望に忠実に行動したかった。
しかし俺の理性がそれをとどめ、その疑問を口にした。
「・・・・・何故、俺なんですか?」
訳がわからない。
確かに俺は霊力を持っている時点で他の人よりは違うのだろう。
しかしそれでも俺が選ばれる理由ではない。
となると本職に霊媒師をやっている人なんかどうだって話にもなるし、徳の高そうな坊さんとかいの一番に呼ばれるべきだ。
俺の疑問に彼女は俺を覗き込むように見て、
「私の遠い昔の縁よ。そしてあなたはその血筋。あなたの魂、霊力、そして遺伝子構造にいたるまで、その類似点が多すぎるわ」
しかしそれは俺以外のものを見るように彼女は答えた。
「そして私はあなたの影を追ってここまできたの。納得できたかしら?」
ああ、納得したとも。
それと同時にひどく失望した。
そう彼女は目の前に居る『俺』には目を向けず、名も知れぬ奴の影を俺に合わせてみていただけだったのだ。
そりゃそうさ、そうじゃなきゃ彼女ほどの人が俺になんて手を差し伸べてくれるはずなんてないのさ。
なんだ、なんだ。かっこ悪いな俺。
勝手に一人で舞い上がって、勝手に一人で落ち込んで、情けない。
思わずため息が出た。
「どうかしら、そろそろ答えが出た『クー』で・・・・・・?」
と同時にお腹がなった。
そういえば緊張で色々忘れかけてたが、そうだ。俺は帰りながら晩飯の献立を考えるほどにお腹がすいてたのだ。
「「・・・・・・・」」
・・・ベタだ、気持ちがいいくらいベタ過ぎる。いい脚本家になれるぞ俺。
先ほどのブルーな気分がふっとび変わりにきたのがレッド。
ハイテンションな主人公のように俺の顔を真っ赤に染めた。
なんとも言われぬ沈黙が場を支配したが、それはふっくらとした笑い声が遮った。
上目遣いで彼女を覗くとクスクスと実に上品に笑っている。
うっ、かわいい。
なんだろう?ギャップ萌えというやつだろうか。
スラリとした性格をした彼女がコロコロ笑うとはそれだけで破壊力がすさまじい。
俺は気恥ずかしさと照れを誤魔化すために、破れかぶれに彼女を晩御飯に誘ったのだった。
そして冒頭に戻る。
さて、話をまとめようか。
彼女が言っていた幻想郷とは
・忘れ去られた人・神・妖が行き着く場所
・今はなき技術や存在がある場所
・なんか魔境
・・・・・あれ?これ黄泉の国じゃね?
俺?死んじゃうの?
忘れられたら逝っちゃうって・・・死ぬ以外のこと想像つかないんだけど。
とりあえずこれは保留だな。分からないことが多すぎる。
次に月の民。
月は確かアポロ11号だったかなんだかが月面に旗をさしたらしいのだが、その歴史的偉業は真実か虚言かで二つに分かれている。
月面着陸した映像は偽者だったとか、月面に到達した彼らを待ち受けていたのは月に潜む宇宙人だ、とか。
あながち嘘とは言い切れないものがある。
確かに人類は宇宙望遠鏡や人工衛星で広い宇宙を知ることが出来たが、それでももし宇宙人とやらが存在するのならその技術力はまだまだ拙いのだろう。
(それに、実際俺が見たわけでもないしな)
本質的に俺は自分の目で見たもの信用する。
他人の話した説明や映像はその人の主観が入るため、どうしても何からのフィルターを通してでしか見ることが出来ない。
(突飛であるのは否定できないが、突飛すぎて逆に信憑性があるよな)
どこの世界に自分は宇宙人だ真顔でいう人物がいるのであろうか。
すくなくともこの日本ではそんなこという馬鹿は鉄格子のついた病棟の一角で体育座りしてることだろう。
がちゃり
そう思ったとき彼女が帰ってきた。
「今戻ったわ、さぁ今日はお鍋にしましょうか」
なるほど、もし今嫁が出来たらこんな風な生活が可能ということか。
素晴らしい、実に素晴らしいぞ!
しかし、なんとも早かったな。
俺の家から一番近い場所にあるスーパーといえども結構時間かかるのに。
飛んででも来たのかというくらい早かった。
しかしそんな疑問は彼女の作る鍋料理の前にはあまりに矮小、俺は彼女の鍋に思いを馳せた。
ちなみに魚介鍋だった。
幻想郷では珍しいらしい、そんなもんか?
味は・・・京の祇園に出されても違和感がないどころか、板前が土下座して「弟子にしてください」といっても俺は全然不思議には思わない程うまかった。
なるほど、悔しいがこれならば「外の世界の食事に期待するべきところはない」と言われてもしかたないだろうね。
その間何度か答えは出たかとか言われたが話は保留にしておいた。
俺はまだ彼女の話を全て信用したのではない。
勿論別に鍋を食べるのに夢中だった訳ではない、あしからず。
お気に入りをしてくださった皆さんへありがとう!
1話投稿してお気に入り登録0ならすぐさま黒歴史へ葬り去るところでした
おかげさまで逃げ場を失いました、うぼぁ
でもお気に入り登録してくれるとすごくうれしいです
やる気あがりますよね!
みんなあとがきで「感想よろ!」とかいうのすごくよく分かります
私ももらったらさぞかしうれしいでしょうね
でも同時にptあがりますよね
うれしいと感じると同時に悲しみを背負うなんて役得ですよね!