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2話 なんじゃそりゃ?

えーりんもっと出したい

早く幻想入りたいなぁ




仕事の中俺はずっと彼女のことを考えていた。

枕元にたっていた幽霊に恋している。

白銀の髪に透き通った黒瑪瑙のような瞳、体からあふれる気はとても幽霊の様には見えず、生気に包まれているようだった。


(もしや彼女は生霊ではないだろうか?)


落ち着いた今でこそそう思うがこればかりは本職でもない俺にはわからない。

しかしあそこまではっきりと幽霊を見たのは初めてだ。いつもは半透明な人影で、性別と年齢くらいしかわからなかったからな。

軽く背伸びをして腰を伸ばす。デスクワークは肩と腰に来る、後尻痛い。


(つまり彼女は覚醒中である人間の精神力に、進行出来るくらいの精神生命体であるということか)


ぼんやり考える、いかに生霊でも覚醒状態の人には干渉なんて出来ない。

そもそも生きた人間に干渉できるモノ、例えば有名な心霊スポットなんかは多くの精神エネルギーの集合体である。

その不特定多数の精神体が冷やかしにやってきた少数の馬鹿どもをいっせいに攻撃することにより、即効性の干渉が可能になる。

逆にこれが数多の馬鹿どもになると精神体も手がつけられない。地力から違うのだから数を揃われたらせいぜい意識の隙間をぬって嫌がらせのゲリラ戦法しか通用しない。


しかし彼女は単体で米粒ほどの霊力しか持たない俺に対してとはいえ、干渉を行うことが出来た。

となると彼女に強い思念があるか、彼女自身にすさまじい霊力が宿っており、他者に介入することが出来るか。


(ってどんな呪術師だよ、前時代過ぎる)


そんな霊力とか精神力とか意味不明な謎エネルギーを頼るくらいならもっと他にすることあるだろう。

コップを謎エネルギーで動かすのに50年修行して体現できたとしても、物理学的に鑑みると指先ひとつで体現できる。

阿呆臭い。幽霊なんてものに逐一気を配る労力を費やすのなら、人間関係に費やしたほうがよっぽど健全的である。

結局出た結論は、生きた人間のほうがよっぽど厄介だ、ということだろう。

アレは白昼夢と認定してさっさと忘れた方が得なのさ。


そう言い聞かせて体から競り上がる憧憬の炎を無理やり鎮火させる。

ちくせう、わかっている。俺はそんな幽霊に一目ぼれしてしまった。


頭を抱える。

俺、もしかして生気吸われてる?




そのとき俯いてウンウン唸っている俺の首元に衝撃が走った。

痛い!と思う前に俺の意識が電源コードを抜いたテレビのようにぷつりと途切れる。





「起きろ、食事の時間だ」



先輩そういって彼にグラップラーばりの手刀を一撃見舞わせ一人肩で風を切りながら食堂へ向かっていった。

もっとも意識が完全にブラックアウトしている俺の耳には届かぬ台詞ではあったが・・・












俺の働く会社には社員食堂なるものが存在する。

そこの日替わり定食は外で飯を食うより半額の値段で食べられるということでそこそこ人気だ。

何故そこそこでしか人気がないのかというと、



「うげぇ今日も揚げ物かよ」



そう、食堂調理の手抜きなのかしらないが圧倒的揚げ物の多さ。こってりとしたものが多い。

その結果女性社員には不評で、よく弁当持参で屋上にたむろするのを見かける。

今は冬なのでどっか適当に場所見つけて食べてるんだろうけど。



「とりあえずAセット」



と、から揚げをチョイス。



「俺はBで」



対する先輩はカツ丼。

そういって先輩は財布を取り出した、今日は先輩のおごりだ。

手刀で意識を刈り取られ白目を剥いた俺に対して昼飯を奢るだけ、というのはふてぇ野郎だが、仕方ない。俺は平和主義者なのさ。




トレイを片手に窓際の席は・・・残念埋まっている。

仕方ない、中央右よりの席を陣取りそこに座った。



「「いただきます」」



最初は味噌汁で口を湿らしから揚げに箸を伸ばす。

・・・うむ、うまい。

ただ揚げ物だけなのはいかがなものか?



「さっきは何を悩んでいたんだ?」



先輩が備え付けのお新香に手をつけながら聞いてきた。

どうやら頭を抱えて唸っている俺を不思議に思っているような感じだった。



「俺が深く悩みこんでたらだめですか?」



そう思われるのも癪なので少しジト目で講義の声を上げた。

といいつつも俺の眼力程度では先輩をうろたえさせる事など到底出来ない。

犬を相手ににらみ合いした方が成功率はよっぽど高いだろう・・・やらないが。



「ああ、お前結構即決タイプだったよな。お前がそんなに悩むのはよほどだろう?」



そんな事は・・・・あるな。

なるほど、だからよく悩みが少ないとか言われるのか。

一人納得したもののどう説明したらいいものか、少し考える時間をもらうためコップに入った水を一息で飲みほす。

再びコップをトレイの上に置いたとき、腹を括って全てを打ち明けようと思った。

というのも俺の体質を知っているのが先輩くらいなものだからである。


俺は今朝あったことを全て話した。



幽霊がまたもや現れたこと


その幽霊が銀髪の美女だったということ


そしてその彼女に一目ぼれをしてしまったということ



食堂で話す会話ではないなと思いながら、先輩に語った。

そして俺が忘れようとしても忘れられないということも。

それを先輩は訝しげな表情を浮かべることもなくまじめに聞いている。

なにこの人、かっこいい。



「呪われたんじゃないか?」



俺の話が終わった後、いつものように口を触れながら俺が現時点思っていたことを実に分かりやすくいった。

そりゃ誰だってそう思う、俺だってそう思うさ。

しかし・・・



「俺もそうは思っちゃいるんですがね、どうにも」



思って現実化するなら世の中どんなに幸せだろうか。

世界はハーレムで包まれるだろう。



「不毛なことだとは分かってはいるんですよ。幽霊に恋するなんて漫画の登場人物に恋するのとなんら変わりませんからね。いや、むしろバッドエンド用意されてる分だけ幽霊のほうがたちが悪いかもしれませんね」



それでも・・・と俺は続ける。

あの時出来た気持ち、その思いは間違いなく俺の心から生まれたものだと信じている。

それだけは否定されたくない。俺はこの思いを大切にしたい。この一世一代の憧憬にも似た恋心を。



「で?どうしたいんだ?」



先輩がそう聞いてきて俺は少しあわてた。しまった完全に自分の世界に入り込んでしまった。

さて「どうしたいか?」か・・・・・どうしたいんだろうな、俺

バッドエンドしか用意されてない道を行くか行かざるか、つまりはこういう質問だ。

本来なら見えてる地雷を自ら踏みにいく必要はない。



「わかりません。ただもう一度、会うだけでいい。会いたい」



そしてそれが出来れば苦労はしない。

その地雷は見えているものの、その向こうには俺が求めてやまないものが存在する。

俺はその姿を歯軋りしながら見るしかないのだ。

だから最後に一目、そう区切りをつけたいのかもしれない。


二人の中で短くない沈黙が続く。

本当、食堂で何を話してるんだろう。

俺はこっそりとため息を吐いた。






「お前シューティング好きだったっけ?」



と、先輩が突然話題を変えてきた。

なんだ?いったい何の話だ?



「いや、好きじゃないです」



残念ながら俺はシューティングが大の苦手だ。

小学校のときギャラガやツインビーなど、ファミコン特有の高難易度を最初にやったばっかりに俺の心をぽっきり折られた代物だ。

残念ながらいまでもそのトラウマが俺の中にはある。


そんな俺の返事を無視して先輩は執拗にシューティングゲームを勧めた。



「東方Projectって知ってるか?」



「はぁ、俺の中での東方はアジアだけですが」



若干引きながら俺は答える



「そうか、知らんのか」



だから何なんだよ。

とりあえず、先輩の話を聞いて三行で答えるなら。


・音楽がいい

・綺麗且つ優秀な弾幕ゲーム

・キャラもいい


の三点。とりあえずお前もやれ的な。

そうだった先輩はコアなシューティングゲーマーだったなぁ

なんかまえ生き生きと『蜂』倒したとか言っていた・・・・・蜂?



「シューティングゲームはいい。集中力がつくし、その瞬間だけだが何でも忘れられるぞ、色々な」



そこまで言われて俺はようやく気がついた。

先輩は彼女とは別に、より興味を持つようなもの作ったらどうだ?と言って来ているのだ。

まぁそうであったとしても



「シューティングだけは興味は持ちませんよ」



「前貸した神威どうした?」



「埃が友達」



「しね」



ま、先輩が俺を心配してくれてるとわかっただけでも御の字か。

とりあえずシューティングも前向きに検討しよう。ありがとうございますよ。


感謝の言葉を口に出すことなくかみ締めつつ、俺らはくだらない言い合いをしながら食堂を出て仕事場へと戻っていった。











その日の帰り、仕事が終わり今日は家で何食おうかなと思いを馳せていると


(ん?部屋の電気がついてる?)


アパートで一人暮らしをしている俺をいつも出迎えてくれるのは常に冷たい暗闇だった。

嫁がいればさぞかし楽だろうに、普段そう思いつつも一人の気楽さを満喫していた俺ではあったが今日に限って部屋の電気がついていた。


(友達でも勝手に入ってきたのかな?もしくは電気を消し忘れたか)


俺はそう思いながら部屋の扉を開け_____固まった。




・すでに部屋には先客が居た。


いや、それは選択肢のひとつにあった。



・その先客は女性だった。


俺の母親かもしれん、今は彼女いないしな。



・その先客は見ほれるような銀髪をしていた。


なんじゃそりゃ?






そう、まさになんじゃそりゃ。それ以外の感情が湧いて来なかった。



今朝に見た女性の幽霊。

その彼女が今実体を持って優雅にお茶なんぞ啜っているのである。


陸地に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせている俺に彼女が振り返る。

視線があう。


にこり




笑いかけられた。


どばぁぁん!!!



反射的に扉を閉めアパートの部屋の番号を確認する。

大丈夫だあっている。間違っているのは彼女のほうだ。

いや、それとも俺の頭がネジがなんか間違っていたとか?


状況を正しく認識できない。

意味不明な羅列記号が俺の頭を埋め尽くし過負荷をかけていく。

やめてくれ、俺の頭はそんなによくねーんだ!


傍から見たら気持ち悪いくらいに狼狽している俺の混乱をさらに一回りヒートアップさせたのは部屋の中に居る名も知らぬ美女だった。

先ほど蝶番が壊れてしまうほど激しく閉めた扉が開き、銀髪の美女が顔を覗かせた。

一歩後ずさる俺に彼女は声をかけた。



「入らないんですか?」



綺麗な声だった。聞いただけで背筋を伸ばしてしまうような。

『女教授』そんな言葉が俺の中に瞬いた。

もしかしなくても『痘痕も笑窪』状態。彼女の行う全てが好意的に感じる。

うおー静まれおれー


そしてその言葉に反応することが出来ずに呆然とする俺に彼女は言葉を続ける。



「立ち話もなんです。中で座ってお話しませんか?」



と、部屋に手招きする。

そこは俺の部屋・・・という突っ込みは脳内で完結し、俺は混乱の収まらぬまま自らの部屋に入っていった。




やべぇ

ばれるビジョンしか浮かばない

人知れずこっそりやろう

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