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15話 う、美しい・・・ッハ!

虹ファン最後の更新

歌が聞こえる。

蓬莱山輝夜は杜松の双幹に出来た余分な枝を選定し整えていく、そのぷくりとうれた小さな赤い唇を動かし凛とした鈴の音を響かせながら。



「長からむ むくなうき世に 生きらえば  花ぞ香りも 憂きものはなし」



季節の移り変わりは速い。草花も同じくその季節一つ一つをを謳歌するように短くも七色の輝きをもって見るもの全てを魅了する。

春は桜が暖かに咲き乱れ、夏は向日葵が鮮烈に咲き誇り、秋にはコスモスが麗しく微笑みかけ、冬は椿が気高く和ませる。

四季折々の輝きと変化は見るものを安心させる。それが毎年変わらぬ変化だとしても、微細な変化にまた新たな新鮮さを感じる。

美しく、華やかに、しかししっとりと慎み深く。


彼女もその地上の四季の変化に無垢な驚きを向けていた。

最初の100年は新鮮だった、地上の草花に心躍らされ、歌の一つでも歌ったものだ。

次の100年は楽しかった、多くの花をどう工夫すれば虹のように栄えさせるか知的欲求を刺激させられた。

次の100年は億劫だった、自らの手の平で動く代わり映えのしない草花の変化に能動的に動かしているだけだった。

次の100年は無関心だった、単調な変化に移ろう心は停止し、その草花は竹林の波に呑まれて消えた。


無限を生きる人間にはあまりに富んだ変化だったのだ。

最初は物珍しさで興味を掻きたてたが調べつくしてみると、なんと詰まらない変化なのだろうか。

300余年費やし彼女に残ったものは膨大な知識と技術、そして虚無感だった。


そんな彼女が再び剪定鋏を握った切っ掛けはあの異変以降外から入った新たな種と技術。


それが盆栽。

無論それの存在は輝夜も知っている。しかし当時は何て地味な作品かと眉を顰めたものだ。それよりも変化に富んだ花を愛でる方が楽しかった。

しかし出会ってみると長い手間と暇がなければ味のあるものは出来ないソレは無限を生きる彼女にとって相性の良い存在だったのである。

草花で作品を表現するのならば1年で可能な技術を盆栽は全く通用しない。

盆栽とは根気と手間が第一、一つの作品を仕上げようとするのならば10年経とうが完成は見えてこない。寿命の長さが作品の長さ、生き続ける限り盆栽はいつまで経っても未完のままだ。

そんな手間暇かけるほど良い作品に仕上がるスルメのように味わい深いに、彼女は眠っていた好奇心を痛く刺激された。


燻った燃えカスのような心の残留に新たな火種の元を注ぎ込む。

火は燻る燃えカスを基にして新たに、そしてなおいっそう大きく燃え上がる。

そう蓬莱山輝夜は静かな高揚感に胸躍らせていた。

新たな発見を模索するように吹流しに挑戦すべく竹細工の止め具に手を伸ばす。


その時ふと、自らの従者に思いをめぐらせた。




八意永琳は私が生まれた時、既に賢者であり医の頂点に立つ存在だった。

医学の限界を突き放し、数多の学者の知識を過去の産物に仕立て上げ、もはや信仰といえるほどにまで絶大な信頼を得た。

その終着点はどこだろうか、医を極めただけでは足りないのか、そこまで突き動かす意思はなんなのだろうか

どこまでも、どこまでも駆け抜け、月の英知全てを飲み込んだ彼女が、今だに燃え尽きることなく駆け続ける鋼の探究心。

その頂に立ち、永琳はいったい何を思ったのか。


それを見極めるいい機会なのかもしれない。



彼女は竹細工から手を離すと自室へと向かった。

相手を迎える以上永遠亭の主として相応の準備が必要だ。

その焦点、見際ねばなるまい。











襖が開かれ一目見た瞬間、体に落雷が直撃したかのような衝撃が走った。


上座に気だるげに座るは三大美女すら霞んで見える美貌。

絹のような黒髪を畳の上に遊ばせ、珠のように大きな瞳と、小さいながらもふっくらと瑞々しいりんごを連想させるような口元。

服は胸元の大きなリボンが特徴的なピンクのワンピーステイストなもの、下は赤いドレスに金の刺繍を贅沢に使った日本情景を連想させるものが模られている。


思わず喉を鳴らし奮いつくきたくなる美の黄金比率、まさに現代のジョコンダ・・・いや、ヴィーナスといっても過言ではない。



崩れ落ちるように平伏し、額を畳にこすり付ける。

額がヒリヒリと痛むが全く気にならない。というかこれ以上頭を下げることが出来ないのが俺にとっては苦痛だ。

後光さえ幻視出来てしまう美貌である、それは致し方ないが俺如きがこの人物の前にいること自体がナニカオカシイ。



「少し硬いわね、面を上げなさい」


「いえっ、それは・・・!」




永遠亭の主は俺に死ねとでも言っているのであろうか?

魔性の美、人を惹きつけることに対して一種の呪いのようなものさえ感じる。

ごくりと喉が鳴った。肌寒いはずであるのにじっとりと背中に汗を滲ませる。

いかに文章で絢爛華麗されても確かにこれは実際見なければわかるまい。


うおー静まれー俺!

そうだ、落ち着け。冷や汗なんて掻いてる場合か!

先ほども八意さんの一番弟子に挨拶一つも出来なかったことを思い出せ!

確かに俺の常識をはるかに超えることばかり起きている。

幻想郷の管理人が瞬間移動で現れたり、八意さんの本気モードで昇天したり、無限回廊があったり。

それに驚き、戸惑い、混乱した。

だが今は大切な謁見の場、八意さんが主と仰ぐこの場で無様な姿はあってはならない!


大きく深呼吸してぺろりと上唇を湿らせる。

何も心配はない。なぜなら俺の中には心の伝道師八意永琳がいるのだから。

意を決し「失礼します」と断り面を上げ、



「?」



目前の姫を一目みて再び額に畳目の跡をつける作業に戻る。


なんだありゃ、正直俺は八意さん以上に心奪われた存在はないと思っていた。

事実あれほどの美人は世界中探したってないにちがいない、一度見たら忘れられない整った美貌に、出るところは出て絞まるところはきっちりしている抜群のスタイル。

微笑めば独特の愛嬌があり、炊事裁縫儀礼医術すべてがそつなくこなし、さらにさらに霊力とかいうのを鼻歌交じりに扱う頼れるお姉さん。

まさに死角なし、360度完全無欠、突っ込みどころが見当たらなさ過ぎて逆に引くレベル、それが俺の知る八意永琳である。

これ以上もなく、これ以下もなく、まさしく彼女こそ最高だと胸を張っていえる。

しかしほんの数メートル先に座る人物はその俺の固定概念を枯れ木をへし折るように容易く崩してくる。


ただ、美しかった。

一言でその全てを表現しろと言われれば、そう答える以外道はない。

チープでチンケな表現だが、それを体現できる彼女はまさしく人を狂わせる魔性の美の持ち主だった。



「まだ傷が癒えていないのかしら。それとも永遠亭の主であるこの私の好意を無碍にする気? もう一度言うわ、面を上げなさい」



そんな俺に目前に座る空前絶後の美姫は追い討ちをかける。

だんまりは、不味い。俺の今後を左右する大事な瞬間だというのに、ここに入ってきてからまだ「いえっ、それは・・・!」しか言えてない。

なら、どう答える?


『初めて君を見た瞬間、美の神は本当に存在するんだと信じたんだ、これからは君のために生きていきたい!』

なんて発想が中学生にでも考え付きそうなテンプレ貼っ付けて、ブラット・ピットばりの爽やかなスマイルをしてみるとか?

自分の心情伝えるならそのくらい分かりやすいのが良いからな、上手くいけばイチロー並の神の一打が生まれるかもしれないな。


はは、傑作だな。

そんなことほざいて見ろ、俺は何の為にここまでやってきたか問わなきゃならんことになるぞ。

自分自身を偽らなきゃならないなら原油をガロン単位で飲んだほうがまだマシだ、ならこれしかない。



「それは無理な相談ですね。私は共に歩きたい人が居るのです。姫を直視していると心を奪われていきそうだ」



ド真ん中のストレート。際どい位置や変化球を狙わず、今思っていること全てをここで吐き出す。

人生は常に不可測の連続だ。それをいかに素早く選択できるかが成功の秘訣だろ。間違っていても構わない、無駄に時間を浪費しなければいくらでも挽回できる。

ああ、そうだったな。本当、らしくなかった。俺の持ち味は即決とした決断力だよな?


もしそれで目前の姫様が癇癪を起こしたら、まぁ・・・・仕方ない。

今の俺はただの客人ではあるが、だからこそ相手も無下には出来ないだろう。

八意さんには迷惑が掛かるかもしれないが、あちらで散々迷惑かけられたんだ。そう悪いほうに転がらないはずだ。


仮に俺がこの永遠亭なる所から追い出されたとして、仮に二度とこの屋敷に入れなくなったとして。

だからどうした?


永遠亭には入れなくなるだろう、しかし幻想郷から追い出されるわけでもない。生きている限り次がある。

天地流転して陰陽を成すってところか。結局本当に縁があるのなら、なる様になるさ。


そんな開き直りモードに入った俺を察したのか、八意さんはここで初めて口を開いた。



「姫様、ただの人間なのでそう力を誇示されては・・・」


「ああ、そうね。月の魔力だもの、狂ってしまうかしら」



結果、俺の体に掛かっていた引力が潮が引いたように消えて無くなったのである。

なるほど一目見たとき後光が入るほどの眩さを感じたのは魔力のせいなのか・・・・・謎エネルギー便利すぎだろ。

空を飛べて、結界張って、攻撃出来て、その上さらに人を魅了する。ミノフスキーやGN粒子かのような利便性の高さだ。最後は実は地球を作ったのも・・・魔力!とか言い出しそうだな。


そこまで考えて今の自分の状況を把握して、無性に恥ずかしくなった。

土下座体勢で版画を刷るように額を畳にゴリゴリ擦り付けているのである。傍目から見てさぞかし滑稽だったろう。

情けない、何が覚悟完了だ。俺は視線をどこに向けていいか迷いながら頭を上げ、ゆっくりと目の前に座る姫を観察した。



「落ち着いて?」


「・・・はい、おかげさまで」




一瞬目が合うと、蓬莱山の姫はクスリと笑う。


う、美しい・・・ッハ!

危ない危ない堕ちかけた。しかし改めてみてもなんとも美しい人だ。大和撫子という題材で絵を描いたら彼女になった、といわれても思わず納得してしまいそうな女性だ。

あの後光がなくともこれほど人を魅了できるとは頭が下がる。歩くだけで花が咲き、泉を渡れば水が裂け、望まぬ形で富を得る。

そんな御伽噺に出てくる美でひとつの財産を築けてしまいそうな存在感だった。



「まずはようこそ永遠亭へ。外は随分と凍えたことでしょう、わが屋敷でゆるりとご寛ぎなさいませ」


「お招きいただき感謝の言葉もございません。またご丁寧な心配り、身に染みて感じております。お蔭様で今まで以上の高調子になったと勘違いしてしまいそうになりそうです」


「それは結構。わが従者であり、かつ師でもあった彼女のご友人とあらば無碍には出来ません。快調と歓迎を兼ねた宴でも・・・・・と、言いたいけども。聞いておかなければならないことがあるのです。主として、個人として、そちらを先に済ませてもいいかしら?」



獲物を定めた狼のように、彼女の目蓋がうすく細まり笑みを深くする。

全身が粟立つのを感じた。そして理解した。

いまこそが正念場だと。




「まずあなた、今自分が置かれている状況を正しく認識しているの?」


「と、申しますと?」


「幻想郷にとって、永遠亭にとって、あなたはどのような存在か分かっているかと聞いているの」


今更取り繕ったってしょうがない。

だからなんの戸惑いも躊躇もせず、


「まぁ厄介者でしょうね」


そういいきった。



ほうっと小さく嘆息をつく音が聞こえる。

口の端を僅かに吊り上げ目前の姫は先を促すのだった。


さぁて・・・・・どうしよう


正直言って答えが今だ出ていません

移すとしても、ここで消えるとしても、私はどっちでもいいと思っています


移すとしたら、やはりモチベ上昇してからこっそり上げてそうですね

個人的にはアルカディア様がいいんですが、色々お世話になっていますし


消えるとしたら、それでもいいか

一つの時代に多くの物語が消え、その藻屑の一片に私の名前が刻まれるだけですからね



ふー







あ、ちなみに移転するならどこが良いですかね?

いや、仮に!仮の話ですよ!

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