表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼の封印  作者: 鈴村弥生
闇の左手
23/33

2.

 松明の光点に幻惑される視界を、閉じて感覚を研ぎ澄ますことによって、魔導師の視界に切り替えていく。


 閉じられた目に、青白い光を放つガウディアと、それよりはるかに強い金色の光を発するセリフィスが見えた。

 

 魔導師の目で見た潜在魔力のオーラである。


 これほどまでの魔力を持ちながら、一切の魔法が遣えないセリフィス。クレイスが何時も不思議がっているが、真維にも謎だ。


 二人を確認し、そこからそろりと周囲を探っていく。


 何とか脱出口は無いか、もしくは、身を隠してこの場を凌げるくらいの、壁の窪みや亀裂などは無いか、意識を広げる。


 魔法トラップだらけで、しかも魔導師狩りの本拠地の足の下。こんな場所で魔力を使うことがどれほど危険なのかは判っている。それに、例の魔導的な波のこともある。


 今度あれがおきれば、自分は確実に意識を失うだろう。そうなったら、この二人の足手纏いだ。


 しかし、今はここを逃れなければ……


『魔法の基本は強い意志と、それを裏打ちする理論だ、お前は理論は滅茶苦茶だが、意思だけは保証してやる。恐がらずにやってみろ』


 元保護者クレイスの言葉に唇を噛む。


――やるっきゃないよね……


 思い切って意識と視界を広げる。二人の光からそのむこう、通路の壁を意識の手で撫ぜながら、迫る男達の赤黒く鈍い光を見る。


 奇妙な事に、人間はぼんやりとした赤黒いものなのに、その纏う鎧や帯びる武器は強い淡青色の光を放っている。ぴりぴりと感じる波動は、一年半前に北の中央砦での偵察の時、セリフィスと共に捕らえたグリフ兵が持っていた魔法兵器によく似ていた。


 多分あれもそうなのだろう。だとしたら、万が一逃げ場が無くなって、切り抜けて進まなければならなくなったら、かなり苦戦させられると言うことだ。


 其処まで考えて、真維は小さく息を呑んだ。


 前後の集団から同じ魔法兵器の気配がする。


 お化け屋敷からここまでは一本道。後からきた連中は、つまり前王派のアジトから来る以外はない。逃げた真維に向けられた追手の前王派達が、何故魔法兵器を持っているのだろう?

 

 好意的な解釈なら、グリフ兵から奪って武器調達をした、というのが順当だろう。


 武器庫の一つ、または、補給の部隊の一つくらい襲って、武器を奪う事も出来ただろうから。


 しかし、それならば、あの部屋に居た男達のどれからも、魔法兵器の気配はしなかったのは何故だろう? 


 同盟証文を怯えさせない為? 


 他国の者に手の内を明かさない為? 


 いいやもう、ぶっちゃけ単純に、奴らはグリフ軍とグル?

 

 アルムレイドを殺した裏切り者達に出くわした?

 

 ぐるぐるする頭の中に、ハテナマークが飛び回る。


 どっちにしろ、捕まれば自分達の自由と命どころか、カリストにも良い事は無さそうだ。


 真維は張り付いた背後の壁へ意識を広げる。


 蟲達の明滅する光が、無数に這う岩壁。岩面やその後ろの地中を這いまわる。幽かな命の光が隠された亀裂を教えてくれる。


 まるで岩の衝立に隠された秘密のように、右側の壁に隙間がある。その奥から青緑色の光が伸びて、真維の袖を引いた。


==こっち……きて==


 小さな囁き、いや、意識の閃きの様なものが、脳裏に伝わる。それに警戒するより先に、真維はガウディアとセリフィスのベルトを掴んだ。


「あたしについてきて」


 囁くなり、するすると亀裂に消える光を追って、壁へと進む。


 いきなり壁へと歩き出す真維をいぶかしみながら、二人はその後ろに続いた。とっさの時の真維の勘に、絶大な信頼を寄せていたからだ。


 その期待の通り、小柄な体が岩壁に滑り込む。


 狭い岩壁の間。細身の三人がやっと通れる亀裂を抜けると、多少ゆとりのある横穴らしき場所へ出た。

 これでどうにかやり過ごせるかも。


 そう思い息をついた時、今入ってきた亀裂の向こうで、光が動くのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ