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【幻想掌編】たまご|観覧車は、また崩れ落ちる

作者: 霧子ノア
掲載日:2026/06/21

淡いブルーの中、光と音が鳴り響く。

男は階段から、逃れるように降りて来る。


目の前には、先程の自分が歩いている。


またか……

男は小さく肩で息を吐いた。


左の通路から、先程の老夫婦が歩いてくる。

彼らは足を止め、先程の自分をじっと見つめた。


そして、男へ顔を寄せ、耳元で囁いた。


「あそこを曲がれ。

そして、この"たまご"を置け」


何度目だ……

受け取った"たまご"は小さく、冷やりとしていた。


男は観覧車へと、足を速める。


今度は間に合った――


揺れて崩れそうな観覧車に乗り、シートへ深く背を預けた。

たまごは、手の中で亀裂が入ってゆく。

男はシート脇の灰皿にそっと乗せた。


それと同時に観覧車は崩れ落ちてゆく。


これで……いい……


男の目の端に映るたまごの亀裂からは、小さな光が漏れていた。

視線を前に戻し、ゆっくり目を閉じる。


これは、ループだ。


何度も、タイミングを計りながら、

男は階段を降り、何度も自分の背を探す。



男は、小さなたまごを何度も運び続ける。



本文:霧子ノア本人作


※本作は、noteにも掲載しています。


主掲載先はアルファポリスです。

『静かな悪戯』本編は、2026年8月1日よりアルファポリスにて掲載開始予定です。


アルファポリス作者ページ:

https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/753708856


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