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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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95杯目「醸造への決意—失敗と再挑戦」

  兵士の悲鳴が、城の中庭に響き渡る。


「助けて……助けて……!」


 黒い霧に包まれた兵士が、苦しみながら暴れている。


 体が歪み、腕が伸び、牙が生える。


 人間が、怪物へと変わっていく。


「くそ……! どうすれば……!」


 マーカスが歯を食いしばる。


 その時——。


「皆さん、下がってください!」


 守護者の声が響いた。


 病床から起き上がったのか、守護者が杖を持ってこちらに駆けつけてきた。


「守護者様! 無理をしないでください!」


 ミアが叫ぶ。


「大丈夫です……これくらいなら……」


 守護者が、杖を掲げる。


 銀色の光が、兵士を包み込む。


 兵士の体から、黒い霧が少しずつ消えていく。


「うっ……!」


 守護者が膝をつく。


「守護者様!」


 俺が駆け寄る。


「大丈夫です……一時的に、抑えることができました……」


 守護者が、弱々しく微笑む。


 兵士は——人間の姿に戻っていた。


 しかし、意識を失って倒れている。


「マリア、この兵士を治療室へ!」


 魔王が指示を出す。


「はい!」


 マリアと何人かの兵士が、倒れた兵士を運んでいく。


 俺は、守護者を支えた。


「守護者さん……無理しないでください」


「すみません……でも、放っておけませんでした……」


 守護者が、俯く。


「このままでは……街中が、こうなってしまいます……」


 俺は、拳を握りしめた。


 このままじゃダメだ。


 守護者の力だけでは、限界がある。


 俺に、何かできることは——。


「アル」


 魔王が俺を見る。


「お前の酒が、効くかもしれないといったな?」


「……はい」


 俺は頷いた。


「グラン・ハンマーで作った日本酒は、魂を安定させる効果がありました」


「なら、それをもっと強力にした酒を作れば……」


 人族の王が続ける。


「頼む……」


 俺は、決意した。


「新しい酒を作ります」


「魂の病を完全に治すことができるような、究極の酒を」


 マーカスが、俺の肩を叩いた。


「頼んだぞ、アル」


「……ああ」


  *


 翌朝。


 俺は、城の地下にある醸造所に向かった。


 城にも、小規模な醸造設備があるらしい。


 扉を開けると——。


「おはようございます、アルさん」


 リリアが、既に醸造所で待っていた。


 作業用のエプロンを着けて、真剣な表情だ。


「リリア……もう来てたのか」


「はい。一刻も早く、酒を作らなければ」


 リリアの目は、決意に満ちていた。


「おはよう、アル!」


 今度はルーナが入ってきた。


 彼女も作業着姿で、髪を後ろで結んでいる。


「私も手伝うわ。こんな時だもの」


「ありがとう、ルーナ」


「おはようございます」


 最後に、ミアが入ってきた。


 ミアも作業着姿だが、いつもの冷静な表情だ。


「ミア、お前も手伝ってくれるのか」


「はい。守護者様のためにも、力になりたいです」


 ミアが真顔で頷く。


 こうして、俺たち四人での醸造作業が始まった。


「まずは、米を研ぐところからだ」


 俺が説明すると、リリアが手を挙げた。


「私がやります!」


「ああ、頼む。ただ、優しく研いでくれ。米が——」


 ガシャーン!!


 リリアが魔法で米を包み込み、激しく攪拌している。


「リリア! それ研ぐんじゃなくて粉砕してる!!」


「え……?あ、すみません!!」


 リリアが慌てて魔法を解く。


 真面目な顔で、とんでもないことをする。


「米は優しく、手で研ぐんだ! 魔法は使うな!ユリさんの所で教わっただろ」


「は、はい……」


 リリアが、しょんぼりする。


「じゃあ、私が研ぐわ!」


 ルーナが張り切る。


「ああ、頼む。ただ——」


 ジャバジャバジャバ!!


 ルーナが、ものすごい勢いで米を研いでいる。


 水が飛び散り、服が濡れる。


「ルーナ! もっと優しく!」


「え? 力を入れないとダメなんじゃないの!?」


「優しく! 赤ちゃんを扱うように!」


「そ、そう……?」


 ルーナが、恐る恐る米を触る。


「私も手伝います」


 ミアが、米の入ったボウルに手を伸ばす。


「ミア、頼むぞ」


 ミアは、静かに米を研ぎ始めた。


 手つきが丁寧で、リズムも安定している。


「……ミア、上手いな」


「あ、ありがとう……」


 ミアが、少し顔を赤らめながら淡々と答える。


 さすがだ。ミアは器用なんだな。


「ええ!? ミア、上手すぎない!?」


 ルーナが驚く。


「私もリリアも失敗してるのに……」


「努力の結果です」


 ミアが、真顔で答える。


 この冷静さと器用さが、ミアの強みだ。


 俺は、リリアとルーナに米の研ぎ方を丁寧に教えた。


「こうやって、優しく円を描くように……」


 二人とも、真剣に聞いている。


 少しずつ、コツを掴んでいく。


「そうそう、その調子だ」


 米を研ぎ終えた後、蒸す作業に移る。


「リリア、火加減を調整してくれ」


「了解しました!」


 リリアが、炎の魔法を放つ——。


 ゴォォォォ!!


 一瞬で米が真っ黒に焦げた。


「リリアああああ!! 火、強すぎ!!」


「す、すみません! つい戦闘の時のクセで……!」


 リリアが、涙目で謝る。


 その姿が可愛くて——いや、今は怒るべきだ。


「戦闘と醸造は違うんだ! もっと優しく!」


「は、はい……」


 リリアが、しょんぼりする。


 俺は、ため息をついた。


 これは……長い一日になりそうだ。


 その時だった。


 醸造所の扉が、勢いよく開いた。


「アル!」


 マーカスが駆け込んでくる。


 その顔は、青ざめていた。


「どうした!?」


「街で……また倒れる人が出始めてる!」


「何だって!?」


 俺は、立ち上がった。


 リリア、ルーナ、ミアも緊張した表情になる。


「井戸の水が、また黒く濁り始めてる。守護者の力だけじゃ……もう限界だ」


 マーカスが、拳を握りしめる。


 くそ……もう時間がない。


「アル、頼む。何とかしてくれ」


 マーカスが、俺の肩を掴む。


「ああ……任せてくれ」


 俺は頷いた。


 マーカスが去った後、俺は醸造所の壁にもたれかかった。


「うーん……」


「アル……?」


 リリアが、心配そうに近づいてくる。


「どうすればいいんだ……」


 俺は、呟いた。


「日本酒ならユリさんのおかげで作れるようになった。醸造のプロセスも分かる」


「でも……魂の病を治す酒って、一体何を作ればいいんだ?」


 グラン・ハンマーで作った酒は、確かに効いた。


 でも、あれは偶然だ。


 何が効いたのか、正確には分からない。


 米の種類?


 水?


 それとも、発酵の過程で何かが……?


「アル」


 ミアが、静かに言った。


「守護者様が、力を貸してくださると」


「え……?」


 振り返ると、守護者が醸造所の入口に立っていた。


 マリアに支えられながら。


「守護者様! 無理しないでください!」


 俺が駆け寄る。


「大丈夫です……これくらいなら……」


 守護者が、弱々しく微笑む。


 でも、その顔は青白く、額に汗が浮かんでいる。


「川の力を……少し、分けます」


 守護者が、杖を掲げた。


 銀色の光が、水槽の水に注がれる。


 水が、淡い光を放ち始めた。


「この水を使えば……魂を癒す力が、宿るはずです」


「守護者様……」


「急いでください……」


 守護者が、膝をつく。


「もう……長くは、持ちません……」


 マリアが、守護者を支える。


「すぐに部屋に戻りましょう」


 守護者は、マリアに連れられて去っていった。


 俺は、光る水を見つめた。


 これが……鍵か。


 でも、これだけで本当に足りるのか?


 時間がない。


 街の人たちが、苦しんでいる。


 守護者も、限界だ。


「みんな」


 俺は、三人を見た。


「時間がない。急ごう」


「はい!」


 三人が、力強く頷いた。


 俺たちは、再び醸造を開始した。


 守護者の力を宿した水。


 ユリから貰った、黄金の米。


 そして——。


 俺の、すべての技術と経験。


 必ず、完成させる。


 この酒を。


 みんなを救う、酒を——。


 醸造所の外では、遠くで悲鳴が聞こえる。


 街が、また苦しみ始めている。


 時間がない。


 急がなければ——。


 俺の手が、震えた。


 焦りと恐怖。


 でも——。


「アルさん、大丈夫です。”なんとかなる”でしょ?」


 リリアが、俺の手を握った。


「そうよ。一人じゃないんだから」


 ルーナが、俺の背中を叩く。


「みんなで、完成させましょう」


 ミアが、静かに頷く。


 ああ……そうだ。


 俺は、一人じゃない。


 俺は、深く息を吸った。


 そして——。


 醸造を、再開した。


 夜が明けるまでに。


 必ず、完成させる——。

もし面白い、続きが見てみたいと少しでも思っていただけたら☆☆☆☆☆をポチポチして貰えたら嬉しいですm(_ _)m

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