表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/101

91杯目「守護者の記憶—始まりと終わりの物語」

 煙が消えた後、静寂が洞窟を支配する。


 裂け目は、まだ微かに揺らいでいる。


 赤い光が、洞窟の壁に不気味な影を落としている。


「守護者様……!」


 リリアが、倒れた守護者に駆け寄る。


 守護者は、床に倒れたまま動かない。


 銀色の髪が、床に広がっている。


「大丈夫ですか!」


 ルーナも膝をつく。


 守護者の顔色は、透き通るように白い。


「……すみません」


 守護者が、小さな声で言う。


「私の力では……もう、これ以上は……」


「無理をしないでください!」


 リリアが守護者の手を握る。


「いえ……」


 守護者が首を振る。


「私は……守護者として……」


 守護者が、目を閉じる。


「……失格です」


「そんなことない!」


 ルーナが叫ぶ。


 しかし、守護者の意識は遠のいていく。


 その時だった。


 守護者の体が、淡く光り始めた。


「これは……」


 ミアが息を呑む。


「記憶の光……守護者が、自分の記憶を見せようとしている」


「記憶……?」


 俺が問う。


 光が、洞窟全体を包み込む。


 そして——。


 景色が、変わった。


  *


 俺たちは、草原に立っていた。


 いや、正確には——。


 守護者の記憶の中に、いる。


「ここは……」


 リリアが周囲を見回す。


 青い空。


 緑の草原。


 そして、目の前には——。


 巨大な川が流れている。


 しかし、それは普通の川ではない。


 川の中を、無数の光が流れている。


「これが……魂の川」



 ミアが呟く。


「まだ、乱れていない頃の……」


 川は、穏やかに流れている。


 光たちは、川の中を静かに漂い、やがて遠くへと消えていく。


「美しい……」


 ルーナが感嘆する。


 その時、声が聞こえた。


『これが、魂の川です』


 俺たちは振り返る。


 そこには——。


 一人の少女が立っていた。


 銀色の髪。


 透き通るような肌。


 守護者だ。


 でも、今よりもずっと若い。


 いや——。


 これは、もっと昔の記憶だ。


『私は、初代守護者の末裔です』


 少女が、川を見つめながら言う。


『私の一族は、代々この源流を守ってきました』


 少女の隣に、別の人影が現れる。


 角を持つ、美しい女性。


 その姿は——。


「ミア……?」


 ルーナが驚く。


 しかし、ミアは首を振る。


「違うわ。あれは、私の一族の……先祖よ」


『あなたが、源流の守護者なのですね』


 ミアの先祖が言う。


『私は、魂の川全体を守る一族の者です』


『はい』


 少女——若き守護者が頷く。


『私たちは、同じ使命を持つ者同士』


『ええ』


 ミアの先祖が微笑む。


『でも、役割が違う』


『……はい』


 守護者が、少し寂しそうに言う。


『あなたたちは、世界中を旅することができる』


『私は……ここから、離れることができない』


 ミアの先祖が、守護者の肩に手を置く。


『あなたの役割は、とても重要です』


『源流を守ることは、川全体を守ることと同じ』


『だから——』


 ミアの先祖が、優しく微笑む。


『決して、孤独ではありません』


『私たちは、いつでもあなたと共にいます』


「……」


 守護者が、涙を流す。


『ありがとう、ございます』


 景色が、揺らぐ。


  *


 次の記憶に、移る。


 同じ草原。


 しかし、空の色が違う。


 雲が厚く垂れ込め、不穏な風が吹いている。


 守護者は、もう少し年を取っている。


 川の前に立ち、何かを待っているようだ。


 そこに——。


 ミアの先祖が、駆けてきた。


 その顔は、焦りに満ちている。


『大変なことが起きました!』


『どうしたのですか?』


 守護者が問う。


『魂の川が……あちこちで乱れ始めています!』


『なんですって!?』


 守護者が驚く。


『原因は……分かりません』


 ミアの先祖が、息を切らしながら言う。


『でも、このままでは……世界が……』


 その時だった。


 大地が、激しく揺れた。


「地震……!?」


 リリアが叫ぶ。


 記憶の中の景色が、歪む。


 空が裂け——。


 何かが、落ちてきた。


 巨大な、黒い塊。


『あれは……!』


 守護者とミアの先祖が、空を見上げる。


 黒い塊が、地面に激突する。


 轟音。


 閃光。


 そして——。


 すべてが、真っ白になった。


  *


 次に景色が見えた時——。


 草原は、焼け野原になっていた。


 川は、激しく荒れ狂っている。


 魂たちが、悲鳴を上げながら流されていく。


『これは……』


 守護者が、呆然と立ち尽くす。


 その周りには——。


 無数の遺体が、横たわっていた。


『みんな……』


 守護者が、膝をつく。


 それは、守護者一族の者たちだった。


『父上……母上……兄上……』


 守護者が、一人一人の名を呼ぶ。


 しかし、誰も答えない。


『なぜ……なぜ、私だけ……』


 守護者が、涙を流す。


『なぜ、私だけが生き残ったのですか……!』


 その時、ミアの先祖が現れた。


 彼女も、傷だらけだった。


『守護者……!』


『あなたも……無事だったのですね』


 守護者が、震える声で言う。


『でも……私の一族は……』


『私の一族も、ほとんどが……』


 ミアの先祖が、悲しそうに言う。


『これは、災厄です』


『別の世界から、何かが落ちてきた……』


『それが、川を乱した』


『……』


 二人は、しばらく黙っていた。


 やがて、ミアの先祖が言う。


『私たちは、生き残った』


『だから……使命を果たさなければなりません』


『はい……』


 守護者が立ち上がる。


『私は、ここで源流を守ります』


『あなたは?』


『私は、世界中の川を巡り、乱れを鎮めます』


 ミアの先祖が、守護者の手を握る。


『また、会いましょう』


『必ず……』


 二人は、別れた。


 それが——。


 最後の別れだった。


  *


 景色が、また変わる。


 時が流れている。


 守護者は、一人で川を守り続けている。


 季節が巡る。


 春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。


 それが、何度も何度も繰り返される。


 守護者は、ずっと一人だ。


『もう……何年経ったのでしょう』


 守護者が、呟く。


 その髪は、白くなり始めている。


『十年? 百年? それとも……』


 守護者が、川を見つめる。


 川は、少しずつ安定してきている。


 魂たちも、穏やかに流れている。


『ああ……よかった』


 守護者が微笑む。


『川は、また穏やかになった』


 しかし——。


 守護者の周りには、誰もいない。


『ミアの先祖は……どうしているのでしょう』


『また、会えると言っていたのに……』


 守護者が、空を見上げる。


『もう……誰も来ない』


『私は……』


 守護者が、膝をつく。


『ずっと……一人です』


 風が、吹く。


 草が、揺れる。


 川が、流れる。


 それだけだ。


 守護者は、ただ一人で——。


 何百年も、この場所を守り続けた。


  *


 景色が、また変わる。


 守護者は、老いていた。


 いや——老いているように見えるが、実際には不死に近い存在なのだろう。


 しかし、その顔には深い疲労が刻まれている。


『もう……限界です』


 守護者が、川の前に座り込む。


『私の力では……もう、守りきれない』


 川が、また少しずつ乱れ始めている。


 裂け目が、源流に現れ始めた。


『どうすれば……』


 守護者が、涙を流す。


『誰か……誰か、来てください……』


 その時だった。


 裂け目の奥から——。


 何かが、こちらを見ている気がした。


『……誰?』


 守護者が、裂け目を見つめる。


 そして、感じた。


 別の世界の、誰かの魂。


 それは——。


『あなたは……』


 守護者が、微笑む。


『来てくれるのですね』


 裂け目が、光る。


 そして——。


 景色が、消えた。


  *


 俺たちは、現実に戻っていた。


 洞窟の中。


 守護者は、まだ倒れている。


 しかし、その顔には——。


 穏やかな微笑みが浮かんでいた。


「……守護者様」


 リリアが、涙を流す。


「ずっと……一人だったんですね」


「何百年も……」


 ルーナも泣いている。


 俺は、守護者を見つめる。


 この人は——。


 ずっと一人で、この場所を守り続けた。


 家族を失い。


 仲間を失い。


 孤独の中で。


 それでも、使命を果たし続けた。


「……すごい人だ」


 俺は、呟く。


「俺なんか……とても真似できない」


「いいえ」


 守護者が、目を開ける。


「あなたは……来てくれました」


「私が……呼んだのです」


「……え?」


「裂け目の向こうから……あなたの魂を感じた時」


 守護者が、俺を見つめる。


「私は、祈りました」


「どうか、来てください」


「どうか、この世界を……救ってください」


「……」


 俺は、言葉が出ない。


「そして、あなたは来てくれた」


 守護者が微笑む。


「ありがとう……ございます」


「待ってください」


 俺が言う。


「俺は、何もしていない」


「まだ、川は安定していない」


「俺は……」


「いいえ」


 守護者が首を振る。


「あなたは、すでに多くのことをしてくれました」


「人々を救い、仲間を作り……」


「そして、ここまで来てくれた」


 守護者が、ゆっくりと立ち上がる。


「もう、私は一人ではありません」


「あなたたちが……いてくれる」


 守護者が、俺たちを見渡す。


「これから、何が起きるか分かりません」


「でも……」


 守護者が、裂け目を見つめる。


「あなたたちとなら……きっと、乗り越えられる」


 守護者が、俺の手を握る。


 その手は、冷たかった。


 でも——。


 温かいものが、伝わってくる。


「お願いします、アル」


「この世界を……守ってください」


「……はい」


 俺は、頷いた。


「必ず」


 守護者が、微笑む。


 その時——。


 裂け目が、また激しく揺らぎ始めた。


「!」


 ミアが叫ぶ。


「また、何か来る!」


 裂け目の奥から、赤い光が溢れ出す。


 そして——。


 何かの気配が、近づいてくる。


「これは……」


 守護者が、顔色を変える。


「まさか……」


「どうしたんですか!」


 リリアが問う。


「これは……災厄の気配です」


 守護者が震える。


「あの時、私の一族を滅ぼした……」


「あの、災厄と同じ……!」


 その瞬間——。


 裂け目が、完全に開いた。


 赤い光が、洞窟を満たす。


 そして——。


 巨大な影が、裂け目から現れ始めた。


「みんな、構えろ!」


 俺が叫ぶ。


 リリア、ルーナ、ミアが武器を構える。


 守護者も、震える手で杖を握る。


 影が——。


 こちらに向かってくる。

もし面白い、続きが見てみたいと少しでも思っていただけたら☆☆☆☆☆をポチポチして貰えたら嬉しいですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ