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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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90杯目「暴走する源流と醸造の奇跡」

 巨大な黒い影が、俺たちに迫る。


 その姿は、定まらない。


 時には人の形を取り、時には獣のように這いずり、時には巨大な波のように襲いかかる。


「くっ……!」


 俺は剣を振るう。


 しかし、刃は影を通り抜けるだけだ。


「物理攻撃が効かない!」


 ルーナが叫ぶ。


 ルーナが光を纏った剣で斬りかかるが、やはり影は揺らぐだけで実体を捉えられない。


「氷結!」


 リリアが氷の魔法を放つ。


 影の一部が凍りつく——が、すぐに砕け散り、また元の形に戻る。


「魔法も効かないなんて……!」


 リリアが悔しそうに呟く。


「ノクト!」


 ミアが黒竜を呼ぶ。


 ノクトが黒炎を吐き出す。


 影が、一瞬怯む。


「今だ!」


 俺が飛び込む。


 しかし——。


 影が突然膨れ上がり、俺を飲み込もうとする。


「アル!」


 リリアとルーナが叫ぶ。


 間一髪、ミアが俺を引っ張って避難させた。


「ありがとう、ミア」


「油断しないで。あれは源流の力が暴走して実体化したもの……普通の攻撃では倒せないわ」


 ミアが険しい表情で言う。


「じゃあ、どうすればいいんだ!」


「分からない……でも、このままじゃ……」


 その時だった。


 守護者が、震える声で言った。


「あれを止めるには……強大な力が必要です」


「強大な力……」


 俺は拳を握る。


 俺には、ランダムスキルというチート能力がある。


 でも、それは運任せだ。


 今、必要な力が手に入るかどうかも分からない——。


 その時、腰の袋に手が触れた。


 瓶が、入っている。


「……これは」


 グラン・ハンマーで造った日本酒だ。


 王都で配った残りを、念のため持ってきていた。


 俺はその瓶を見つめる。


 そして——思い出す。


 あの時、グラン・ハンマーで初めてこの酒を飲んだ時。


 ランダムスキルが発動して、【風魔法 Lv???】が出現した。


 あの時は使わなかった。


 でも——。


「もしかすると……」


 俺は瓶を取り出す。


 この酒を飲めば、またあのスキルが発動するかもしれない。


 いや、発動するとは限らない。


 ランダムスキルは、文字通り運任せだ。


 でも——。


 今は、賭けるしかない。


「みんな、少し時間をくれ」


 俺が言う。


「アル……?」


 リリアが不安そうに見る。


「大丈夫だ。俺に、考えがある」


 俺は瓶の栓を開ける。


 仲間たちと造った酒。


 ドワーフたちと、天泣さんとの約束を果たした酒。


 そして、街の人々を救った酒。


 この酒が——。


 もう一度、奇跡を起こしてくれるかもしれない。


「頼む……!」


 俺は、酒を一気に飲み干す。


 喉を通る、やはりおいしい。


 そして——。


【日本酒の効果により、ランダムスキルが発動しました】


 頭の中に、声が響く。


【風魔法 Lv???:持続時間不明】


「——来た!」


 俺の体から、風が吹き出す。


「アル……?」


 リリアが驚く。


「これは……風?」


 ルーナも目を見開く。


 風が、俺の周りを螺旋を描いて渦巻く。


 そして——。


 俺は、手をかざした。


「行け!」


 瞬間、凄まじい風が発生した。


 それは、ただの風ではない。


 無数の小さな竜巻が、影に向かって襲いかかる。


「うわあああ!」


 影が、初めて苦しそうな声を上げた。


「効いてる……!」


 ミアが驚く。


 風は、影を包み込み、削り取り、そして——。


 影を、空中に吹き飛ばした。


「すごい……」


 リリアが呟く。


 しかし、俺には分かっていた。


 これだけじゃ、足りない。


 影は、また戻ってくる。


「みんな、手を貸してくれ!」


 俺が叫ぶ。


「リリア、氷の魔法で影を固定して!」


「分かった!」


 リリアが両手を掲げる。


「氷結、連鎖!」


 氷の柱が、影の周りに次々と立ち上がる。


 影が、動きを封じられる。


「ルーナ、光で影を照らせ!」


「任せて!」


 ルーナが剣を天に掲げる。


「光よ、降り注げ!」


 剣から放たれた光が、影を照らす。


 影が、さらに弱々しくなる。


「ミア、ノクトで最後の一撃を!」


「了解!」


 ミアがノクトに指示する。


 ノクトが大きく息を吸い込み——。


 黒炎が、影に向かって放たれる。


 そして、俺は——。


「風よ、すべてを吹き飛ばせ!」


 風魔法の全力を解放する。


 竜巻が、影を、氷を、光を、炎を、すべてを包み込む。


 そして——。


 轟音と共に、影が消滅した。


  *


 静寂が、洞窟を支配する。


 影は、完全に消えていた。


「やった……のか?」


 俺は膝をつく。


 風魔法の反動で、体中の力が抜けていく。


「アル!」


 リリアが駆け寄る。


「大丈夫?」


「ああ……なんとか」


 俺は立ち上がろうとする。


 しかし、その時——。


 裂け目から、再び光が溢れ出した。


「まだ……終わってない!?」


 ルーナが叫ぶ。


「いえ」


 守護者が言う。


「影は消えました。ですが……」


 守護者が、裂け目を見つめる。


「根本的な原因は、まだ解決していません」


「根本的な原因……?」


 俺が問う。


 守護者が、力なく膝をつく。


「守護者様!」


 リリアが駆け寄る。


「大丈夫ですか!」


「すみません……私の力では、これ以上は……」


 守護者が、苦しそうに言う。


「裂け目は……一時的に閉じましたが……」


「また、開くでしょう……」


「そんな……」


 ルーナが絶望する。


「じゃあ、どうすれば……!」


 その時だった。


 裂け目の奥から、紫色の煙が漂ってきた。


「また……煙!」


 俺が警戒する。


 煙が、人の形を取る。


「ハッハー、やっと、ここまで来たね」


 煙が、タバコを吹かしながら笑う。


「目が笑っていない……」


 ミアが呟く。


「煙……お前、何が目的なんだ」


 俺が問う。


「目的?」


 煙が首を傾げる。


「そんなものは、ないよ」


「ただ——」


 煙が、俺たちを見渡す。


「君たちの選択を、見守っているだけさ」


「選択……?」


「そう。選択」


 煙が、裂け目を指差す。


「これから、君たちは選ばなきゃいけない」


「何を……?」


「それは——」


 煙が、意味深に笑う。


「次に会った時に、教えてあげるよ」


 煙が、消えかける。


「待て!」


 俺が叫ぶ。


 しかし、煙は完全に消えてしまった。


「……一体、何だったんだ」


 俺は、裂け目を見つめる。


 裂け目は、まだ微かに揺らいでいる。


 これは、まだ終わっていない。

もし面白い、続きが見てみたいと少しでも思っていただけたら☆☆☆☆☆をポチポチして貰えたら嬉しいですm(_ _)m

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