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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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69杯目「麹造りは慎重に!」

翌朝、俺は目を覚ますとすぐに窓を開けた。


「……ふくろう、いないな」


昨夜の出来事を思い出して、俺は少し恥ずかしくなった。動物と話せるスキル、まさかあんなタイミングで発動するとは。


「おはよう、アル」


ドアをノックする音と共に、リリアの声が聞こえた。


「おはよう」


「昨日の……あのスキル、もう使えないんでしょ?」


リリアが確認するように尋ねる。


「ああ。酒が抜けたら、能力も消えたみたいだ」


「そっか。まあ、アルの能力はいつもそうだもんね」


リリアがそう言って微笑む。


俺たちは居間へ向かった。既にユリが朝食の準備をしてくれている。


「おはよう、アル。昨夜は賑やかだったわね」


ユリがくすくすと笑う。


「あ、聞こえてました?」


「ええ。ふくろうと口論してるのが」


ユリの言葉に、俺は顔を赤くした。


「あれは……その……」


「アルの能力ね。酒を飲むと、ランダムでスキルが発動するって聞いてたわ」


「え、ユリさん、俺の能力のこと知ってたんですか?」


「ええ。噂で聞いていたわ。酒の種類やおいしさによって、色々な能力が出るんでしょう?」


ユリが興味深そうに言う。


「はい……昨日は、虫や動物と話せる能力が出たみたいです」


「面白い能力ね。でも、酒が抜けると消えるんでしょう?」


「そうなんです。酒を飲んでいる間だけなんです」


俺が呟いていると、ルーナとリーサもやってきた。


「おはよう、アル! 昨日はすごかったわね」


ルーナがにやにやしている。


「童貞って言われてたの、聞こえちゃった」


「や、やめろ……」


俺が顔を赤くすると、リーサもくすくすと笑った。


「でも、動物と話せるなんてすごいですね。酒を飲んでいる間だけとはいえ」


「まあ、役に立つかは分からないけど……」


朝食を食べ終えると、ユリが立ち上がった。


「さて、今日は麹の管理を始めるわよ」


「はい!」


俺たちは昨日準備した麹室へと向かった。


扉を開けると、ほのかに甘い香りが漂ってくる。


「この香りは……」


「麹が発酵し始めた証拠よ」


ユリが説明する。


「これから、温度と湿度を管理しながら、麹を育てていくの」


蒸した米を広げた台を見ると、うっすらと白いカビのようなものが生えている。


「これが麹菌……」


「そう。これが米のでんぷんを糖に変えてくれる。その糖が、酒の元になるのよ」


ユリの説明に、俺は真剣に耳を傾けた。


「温度は何度くらいがいいんですか?」


「30度から35度の間。高すぎると菌が死んでしまうし、低すぎると発酵が進まない」


「なるほど……」


俺がメモを取っていると、ドワーフたちもやってきた。


「おお、いい匂いじゃのう!」


ドラが鼻をひくひくさせる。


「これが麹の香りか」


グラも興味深そうに覗き込む。


「わしら、温度管理を担当するんじゃったな」


ダグが張り切っている。


「ええ、お願いするわ。火加減の調整は、ドワーフの得意分野でしょう?」


ユリが微笑む。


「任せるんじゃ!」


三人が胸を張った。


「さて、麹は数時間ごとにかき混ぜる必要があるの」


ユリが実演してくれる。


「こうやって、優しく……力を入れすぎないように」


「優しく……」


俺がユリの動きを見ながら、同じようにやってみる。


「そう、いい感じよ」


ユリが頷いた。


「麹造りは、繊細な作業。気を配らないと、すぐに失敗してしまうわ」


「気をつけます」


俺が真剣な顔で答えると、リリアが横から声をかけた。


「アル、私も手伝うよ」


「ありがとう、リリア」


「私も!」


ルーナも手を挙げる。


「じゃあ、みんなで交代でかき混ぜましょう」


ユリが提案してくれた。


午前中、俺たちは麹の管理に集中した。


数時間ごとにかき混ぜ、温度を確認し、湿度を調整する。


「結構大変だな……」


俺が汗を拭うと、ドラが豪快に笑った。


「酒造りは体力勝負じゃな!」


「でも、この手間が美味い酒を造るんだぞい」


グラが付け加える。


「そうだな。手を抜いちゃダメだ」


俺が頷くと、ユリが優しく微笑んだ。


「アル、いい心がけね」


昼食を挟んで、午後も麹の管理を続けた。


その時、麹室の窓の外から鳥の鳴き声が聞こえた。


「チュンチュン」


今は普通のさえずりにしか聞こえない。やはり、酒が抜けると能力も消えるようだ。


「……普通に鳴いてるだけだな」


俺が呟くと、リリアが不思議そうに俺を見た。


「アル、何か言った?」


「いや、昨日は鳥の声が言葉として聞こえたのに、今は普通に鳴き声だけだなって」


「やっぱり、酒の効果が切れたのね」


ルーナが納得したように頷く。


「そうだな。まあ、それが俺の能力の特徴だから」


俺が苦笑すると、ユリが微笑んだ。


「でも、必要な時に酒を飲めば使えるということよ。便利な能力じゃない」


「まあ、何が出るかは運次第なんですけどね」


俺が苦笑すると、ユリが微笑んだ。


「それもまた、面白いわね」


夕方、俺たちは一日の作業を終えた。


「今日の麹、順調に育ってるわ」


ユリが満足そうに頷く。


「明日も同じように管理を続けましょう」


「はい」


俺たちが麹室を出ると、すっかり外は夕焼け模様になっていた。時間がたつのははやいなぁと思っていると外から何かの気配を感じた。


「……ん?」


「どうしたの、アル?」


リリアが尋ねる。


「いや、何か……」


俺が空を見上げると、遠くに黒い影が見えた。


一瞬だけ、銀色の髪が夕日に照らされたように見えた。


「ミア……?」


「え、ミアって、あの……?」


ルーナが驚いた顔をする。


「まだ、この辺りにいるのかな」


俺が呟くと、ユリが穏やかな表情で空を見上げた。


「ええ。彼女は、まだ迷っているのよ」


「迷ってる……?」


「スーを失った悲しみ、あなたたちへの怒り、そしてその気持ちをどうしたらいいかで揺れているの」


ユリがそう言って、俺を見た。


「でも、いつか必ず。彼女も答えを見つけるわ」


「そうだといいんですけど……」


俺がそう答えると、空の黒い影は消えた。


その夜、俺たちは再びユリの小屋で夕食を囲んだ。


「今日も一日、お疲れ様」


ユリが温かい料理を出してくれる。


「明日は、麹が完成するはずよ」


「本当ですか!?」


俺が目を輝かせると、ユリは頷いた。


「ええ。そうしたら、いよいよ本格的な仕込みに入るわ」


「楽しみだな……」


俺がわくわくしていると、ドラが横から口を出した。


「アル、完成したら真っ先にわしらに飲ませるんじゃぞ」


「ああ、もちろん」


「約束じゃぞ!」


グラが念を押す。


「分かってるって」


俺が笑うと、みんなも笑顔になった。


食事を終えた後、俺は再び外に出た。


夜空には、いつものように二つの月が輝いている。


「……明日、麹が完成する」


俺が呟いていると、背後から足音が聞こえた。


今度はルーナだった。


「アル、また一人で考え事?」


「ああ、ちょっとね」


「何考えてるの?」


ルーナが俺の隣に座る。


「これから造る酒のことと……ミアのこと」


「ミア……」


ルーナの表情が少し曇る。


「あの人、まだ怒ってるのかな」


「分からない。でも、ユリさんは『いつか答えを見つける』って言ってた」


「そっか……」


ルーナが夜空を見上げる。


「アルは、優しいわね」


「え?」


「だって、敵だったミアのことも心配してるんだもの」


ルーナがそう言って微笑む。


「そんな……敵って言うか……」


「いいのよ。それがアルの良いところだから」


ルーナが俺の肩に頭を寄せてきた。


「ルーナ……?」


「ちょっとだけ、このままでいい?」


「あ、ああ……」


俺が頷くと、ルーナは目を閉じた。


「アルと一緒にいると、安心する」


「……そうか」


俺も夜空を見上げた。


二つの月が、優しく俺たちを照らしている。


「明日も、頑張ろうね」


「ああ」


遠くで、静かに風が吹く音が聞こえる。


山の夜は、穏やかで静かだ。


しばらく、二人で静かに夜空を見上げた。


明日、麹が完成する。


そして、本格的な酒造りが始まる。


この世界で、俺にできること。


酒を造り、人と人を繋ぐこと。


それが、俺の役割なのかもしれない。


「アル、何か考えてるの?」


ルーナが静かに尋ねる。


「ああ。これから造る酒のことを」


「ふふ、やっぱり」


ルーナが微笑む。


「それなら、よかった」


二人で夜空を見上げる。


次は発酵か楽しみだな

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