表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/72

64杯目「黄金の稲穂への道」

 翌朝、俺たちは早々に出発の準備を整えた。


「アル、本当に大丈夫? 荷物、重くない?」


 ルーナが心配そうに俺の荷物を覗き込む。


「大丈夫だって。これくらい平気だよ」


「でも、アルって意外と体力ないじゃない? この前だって、階段で息切れしてたし」


「それは……あの時は二日酔いだっただけだ!」


 俺が言い訳すると、ルーナはくすくすと笑った。


「アル、荷物は馬車に積んであるから大丈夫ですよ」


 リリアが落ち着いた声で言う。彼女はいつも冷静で、俺の世話を焼いてくれる。


「ありがとう、リリア。助かるよ」


「ううん、当然のことだから」


 リリアは少し照れたように視線を逸らした。その仕草に、俺はまたドキリとする。最近、リリアの仕草1つ1つが妙に気になる。


「あの……皆さん、そろそろ出発の時間です」


 リーサが控えめに声をかけてくれた。彼女は今回の旅で初めてユリさんに会えることを、とても楽しみにしているようだ。


「ユリさんって、どんな方なんですか?」


 リーサが目を輝かせて尋ねる。


「すごく綺麗な人だよ。何百年も生きてるドラゴンなんだけど、人間の姿でいることが多くて」


 俺が答えると、リリアが続けた。


「ユリさんは、黄金の稲穂を守っている。昔、誰かと約束したって言ってたね」


「そうそう。それに、日本酒を造れるんだ。俺がこの世界に来てから飲んだ中で、一番美味しい酒だった」


 俺の言葉に、ルーナが少し頬を膨らませた。


「もう、アルったら。お酒の話になると本当に目が輝くんだから」


「いや、でも本当に美味しかったんだって!」


「ふふっ、分かってるわよ。だからこそ、私も一緒に行くんだもの」


 ルーナがそう言って笑顔を見せる。その笑顔に、俺は胸が少しざわついた。


「リーサさんは、お父様からユリさんのお話を聞いたことはありますか?」


 リリアが優しく尋ねると、リーサは少し考えてから答えた。


「はい、少しだけ。父が……リヒトが、昔お世話になったって。でも、詳しいことは聞けませんでした」


 リーサの表情が少し曇る。リヒトとの思い出は、彼女にとって複雑なものだ。


「大丈夫。ユリさんに会えば、きっと色々分かるよ」


 俺がそう言うと、リーサは笑顔を取り戻した。


「はい! 楽しみです!」


 俺たちは馬車に乗り込んだ。御者台には、マリアが手配してくれた腕利きの馬車使いが座っている。


「では、ドワーフの国近くの山脈まで、よろしくお願いします」


 リリアが丁寧に頭を下げると、馬車使いは頷いた。


「お任せください。三日もあれば着きますよ」


 馬車がゆっくりと動き出す。王都の景色が徐々に遠ざかっていく。


 窓の外を眺めながら、俺は少し考え事をしていた。ユリの手紙にあった「川の謎」のこと。俺がこの世界に来た理由。そして、リヒトやスーが関わっていた、この世界の秘密。


「アル、何考えてるの?」


 ルーナが不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。


「ああ、ちょっとね。ユリさんが何を教えてくれるのかなって」


「そっか。私も気になる。あの手紙、意味深だったもんね」


 ルーナがそう言って、隣に座るリリアを見た。


「リリアさんは、何か知ってるんですか?」


 リーサが尋ねると、リリアは少し考えてから答えた。


「ユリさんは、この世界について、多分誰よりも詳しい。何百年も生きてるから、色々なことを見てきたはずだよ」


「成り立ち……か」


 俺が呟くと、リリアが優しく微笑んだ。


「でも、今は旅を楽しもう。アル、せっかくの旅なんだから」


「そうだな」


 馬車は王都を抜け、田園地帯へと入っていく。麦畑が広がり、遠くには山々が見える。その先に、山脈がある。


「ねえねえ、アル。お腹空かない?」


 ルーナが急に言い出した。


「え? もう?」


「だって、朝ごはん食べてから結構経ったし!」


 ルーナが籠を取り出すと、中にはサンドイッチが詰まっていた。


「はい、アル。あーん」


「え、自分で食べられるけど……」


「いいから! はい、あーん!」


 ルーナが強引にサンドイッチを俺の口元に持ってくる。仕方なく、俺は口を開けた。


「……美味しい」


「でしょ? 私が作ったのよ!」


 ルーナが得意げに胸を張る。


「アル、こっちも食べてみてください」


 今度はリリアが別のサンドイッチを差し出してきた。


「これ、私が作ったやつ。ルーナのとは違う具を使ってるんです」


「あ、ああ……」


 俺が食べると、こちらも美味しい。でも、なんだこの状況。二人に交互に食べさせられてる……。


「あの……私も作ってきました」


 リーサが小さな包みを取り出した。


「エルフの里で教わった、保存食なんですけど……」


「ありがとう、リーサ。いただくよ」


 俺がそう言うと、リーサは嬉しそうに微笑んだ。


 三人が俺のために作ってくれた食べ物を食べながら、俺は少し幸せな気持ちになった。こういう何気ない時間が、俺にとっては一番大切なのかもしれない。

 

 馬車は順調に進んでいく。夕方になると、街道沿いの宿場町に到着した。


「今日はここで一泊します」


 馬車使いが言うと、俺たちは宿に入った。


 宿の部屋は3つ取ってある。男女別で、俺は一人部屋だ。


「じゃあ、晩ごはんは一階の食堂でね」


 ルーナがそう言って、自分の部屋に入っていく。リリアとリーサも同じ部屋だ。


 俺は一人、部屋のベッドに座った。窓の外を見ると、2つの月が昇り始めている。


 明日は山脈に向けて、さらに進む。そして、ユリさんに会える。


 あの川の謎。この世界のこと。そして、俺がここにいる理由。


 全てが明らかになるかもしれない。


 でも、今は……。


「アル、晩ごはんだよ!」


 ドアをノックするルーナの声が聞こえた。


「ああ、今行く!」


 俺は立ち上がり、部屋を出た。


 今夜は、みんなで美味しいものを食べて、ゆっくり休もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ