41杯目 暴走!古代遺跡の脅威
獣人の森を抜け、俺たちはドワーフの街へと急いだ。
手には、青く輝く獣人族の花。
だが——
「なんだ、あれ……」
グラの呟きで、俺は前を見た。
街全体が、禍々しい紫色の光に包まれていた。
ゴゴゴゴゴ……
「あれは……古代遺跡の魔力じゃ!」
ドラが叫んだ。
「わしの故郷の街が……!」
ダグが青ざめた。
「急ぐぞ!」
俺たちは街へと走り出した。
***
街に入ると、そこは混乱の極みだった。
家々が揺れ、石畳が割れている。
「ドラ!グラ!無事だったか!」
一人の老ドワーフが駆け寄ってきた。
「親方!」
ダグが叫んだ。
「避難は進めておるが……遺跡の暴走が止まらん!このままでは、街全体が崩壊する!」
「どれくらい持つ!?」
「長くて、あと一時間……いや、もっと短いかもしれん!」
親方の言葉に、俺の背筋が凍った。
「わかった。俺が遺跡へ向かう」
俺は花を握りしめた。
「その花は……まさか、獣人族の!?」
「ああ。これで、必ず止めてみせる」
「アル、私も——」
リリアが言いかけたが、俺は首を横に振った。
「みんなは街の避難を頼む。遺跡の奥は狭い。人数が多いと動きづらい」
「でも……」
「大丈夫だ」
俺は笑った。
(街を救って、魔力の酒……!)
「アル、今絶対に酒のこと考えてたでしょ」
リリアが呆れた顔で言った。
「……バレた?」
「相変わらずだな」
グラが笑った。
「急げ、アル!」
ドラが俺の背中を押した。
「ああ!」
俺は遺跡へと走り出した。
***
古代遺跡の前に立つと、その異様さが肌で感じられた。
ゴゴゴゴゴ……
紫色の魔力が、渦を巻くように遺跡から溢れ出している。
「行くしかない……!」
俺は花を握りしめ、遺跡の中へと足を踏み入れた。
遺跡の内部は、混沌としていた。
紫色の魔力が、まるで生き物のように蠢いている。
「くっ!」
俺は花を掲げた。
その瞬間——
花から青い光が放たれ、魔力の渦を押し返した。
「すごい……花が魔力を浄化してる……」
花の光を頼りに、俺は奥へと進んだ。
その時——
ゴゴゴゴゴ……
石の巨人——ゴーレムが、俺の前に現れた。
「またお前か……!」
以前、ここで戦ったゴーレムだ。
グオオオオ!
ゴーレムの拳が振り下ろされる。
「くそっ!」
俺は横に転がって回避した。
だが——
「一人じゃ、勝てないか……」
その時、脳裏にユリの姿が浮かんだ。
山脈で会った、あの日本人の女性——黄金のドラゴン。
彼女が見せてくれた、酒造りの技術。
そして、あの時ユリと一緒に飲んだ日本酒——
「あの時の感覚を……もう一度……!」
俺は腰に下げていた、ユリから貰った日本酒の小瓶を取り出した。
これは特別な時のために取っておいたものだ。
「ユリさん……力を貸してくれ!」
俺は一気に日本酒を飲み干した。
瞬間——
体中に、ユリの魔力が流れ込んでくる。
「トレース……発動!」
俺の視界が、一変した。
ゴーレムの体の構造が、まるで透けて見えるように理解できる。
魔力の流れ、弱点、そして——
「あそこだ……!核が見える!」
ゴーレムの胸の奥、紫色に光る核。
あれを破壊すれば——
グオオオオ!
ゴーレムが再び拳を振り下ろしてくる。
だが——
「遅い!」
俺の体は、まるでユリが乗り移ったかのように軽やかに動いた。
ゴーレムの拳を紙一重で避け、その腕を足場に跳躍。
「届けっ!」
俺は花を握りしめた拳を、ゴーレムの胸に叩き込んだ。
バキィィィン!
花の青い光が、ゴーレムの核を貫く。
「核、破壊!」
ガラガラガラ……
ゴーレムの体が崩れ落ち、ただの石の山になった。
「ユリさん……ありがとう」
俺は呟きながら、奥へと進んだ。
***
遺跡の最深部。
そこには、巨大な魔法陣が描かれていた。
その中心に、一本の水晶の柱。
「あれが、核か……」
俺は花を掲げた。
花は、魔法陣の中心を指している。
「頼む……街を救ってくれ」
俺は花を、柱に押し当てた。
その瞬間——
バァッ!
眩い青い光が、遺跡全体を包み込んだ。
紫色の魔力が、青い光に浄化されていく。
ゴゴゴゴ……という轟音が、徐々に静まっていく。
そして——
全てが、静かになった。
「……終わった」
俺は膝から力が抜けた。
「救えた……」
そして——
(魔力の酒……!)
俺は勢いよく立ち上がった。
***
遺跡の奥の部屋。
そこに、虹色に輝く液体が入った瓶があった。
「これが……魔力の酒……」
俺は瓶を手に取り、蓋を開けた。
甘い香りが広がる。
「いただきます……!」
俺は一口、飲んだ。
とろりとした液体が、舌の上を滑る。
甘い。でも、ただの甘さじゃない。
奥深い、複雑な甘さ。
そして——
全身に、魔力が駆け巡る。
「これは……!」
体中が、魔力で満たされていく。
力が湧いてくる。
感覚が研ぎ澄まされる。
視界が——
なぜか、やけにクリアだ。
音も、いつもより鮮明に聞こえる。
まるで、世界が違って見える——
「最高だ……」
俺は感動で震えた。
「アル!」
その時、リリアの声が聞こえた。
「来客が!」
「来客?」
俺は部屋を出た。
***
遺跡の入り口に戻ると——
「よう、アル」
そこには、金髪の美しい獣人が立っていた。
「フルン!?」
「約束しただろう。街を救った後、一緒に飲もうと」
フルンが微笑んだ。
「ああ……」
俺は頷いた。
「なら、飲もう。お前の、魔力の酒を」
「もちろん!」
***
その夜、ドワーフの街では盛大な宴が開かれた。
魔力の酒を、みんなで分け合った。
「これは……すごいな」
フルンが驚いた顔で言った。
「魔力が体中に広がる感じがするぞ!」
ダグが目を輝かせた。
「これを超える酒を作る。それが、俺の次の目標だ」
俺は得意げに笑った。
「さあ、乾杯だ!」
俺はグラスを掲げた。
「街の平和と、新たな仲間に!」
「「「乾杯!」」」
みんなの声が、夜空に響いた。
その瞬間——
俺の視界に、不思議な光景が映った。
まるで、空気の流れが見えるような——
魔力の流れが、色として見えるような——
だが、それは一瞬のことで、すぐに消えた。
(……気のせいか?)
俺は首を傾げたが、すぐに笑顔を取り戻した。
次は何飲もうかなそんなことを考えていた。




