37杯目 古代遺跡といえば……
地下遺跡への入り口は、街の中央広場の地下にあった。
「ここじゃ……」
親方が、重い鉄の扉を指差した。
「この先が、古代遺跡か……」
俺は扉を見つめた。
扉には、複雑な文様が刻まれている。
「この文様は……古代ドワーフ語じゃな」
グラが扉に近づいた。
「何て書いてあるんだ?」
「『力を求める者よ、この先に進むなかれ。さもなくば、滅びの炎に焼かれん』……じゃと」
「物騒だな……」
俺は冷や汗を拭った。
「じゃが、今はそんなことを言っておる場合ではない」
親方が扉に手をかけた。
ギギギギギ……
重い音を立てて、扉が開いた。
***
中は、暗く湿った空気が漂っていた。
「松明を持って行け」
親方が松明を手渡してくれた。
「ありがとうございます」
俺は松明を受け取った。
「気をつけてな……」
「はい」
俺たちは、地下遺跡へと足を踏み入れた。
階段を下りていくと——
目の前には、巨大な空間が広がっていた。
「うわ……すげえ……」
壁一面に、魔法陣が刻まれている。
そして、中央には巨大な装置が設置されていた。
「あれが……魔力を酒に変換する装置か……」
俺は装置を見つめた。
装置からは、青白い光が漏れている。
ゴゴゴゴゴ……
装置が、不気味な音を立てている。
「これは……暴走しておるな」
ドラが装置に近づいた。
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『この装置には、獣人族に伝わる花のエキスが必要』
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その時——
ピピピピピ!!
突然、装置から警告音が鳴り響いた。
「!?」
「何じゃ!?」
次の瞬間——
シュウウウウウ!!
装置から、魔力の塊が噴き出した。
そして、その魔力が——
「な、なんじゃあれは!?」
ドラが叫んだ。
魔力が、人型の姿を形成していく。
いや、人型というより——ゴーレム?
「防衛システムが作動したんだ!」
俺は叫んだ。
「くそっ!」
ゴーレムが、ゆっくりとこちらに向かってくる。
その体は、魔力で構成されているようだった。
「リリア、ルーナ、下がって!」
「でも!」
「いいから!」
俺は二人を後ろに下がらせた。
ゴーレムが、拳を振り上げた。
「うわっ!」
俺は咄嗟に転がって回避した。
ドゴォォォン!!
地面に、大きなクレーターができた。
「やべえ……直撃したら死ぬぞ……」
「ワシらも戦うぞ!」
ドラ、グラ、ダグが武器を構えた。
「頼む!」
***
ドワーフたちが、ゴーレムに斧を振り下ろした。
ガキィィィン!!
しかし、魔力で構成されたゴーレムには、物理攻撃が効かない。
「くそっ!効いておらん!」
「魔法攻撃じゃないと無理か!?」
俺は叫んだ。
「アル、私が!」
リリアが前に出た。
「ファイアボール!」
リリアが炎の魔法を放った。
ゴォォォォ!!
炎がゴーレムを包む。
しかし——
「!?」
ゴーレムは、炎を吸収してしまった。
「魔法も吸収するのか!?」
「なんて厄介な……」
ルーナ姫が剣を構えた。
「シャイニングブレード!」
光の剣がゴーレムを斬りつける。
しかし、それも吸収されてしまう。
「くそっ……どうすれば……」
その時——
俺は、冷静に考えた。
「待てよ……こういう魔力で構成された存在には、コアがあるはずだ」
「コア……?」
リリアが俺を見た。
「ああ。魔力を集約している中心部分。そこを破壊すれば、倒せるはずだ」
「じゃが、コアがどこにあるかわからんぞ!」
ドラが叫んだ。
「だったら……見つけるしかない」
俺は、懐の小瓶を取り出した。
「そうだ……混成酒!」
「アル、それは……」
「これしかない!」
俺は、混成酒を一気に飲み干した。
ゴクゴクゴク……
瞬間——
体中に力が満ちてくる。
「キタキタ!これだ!」
俺の視界が、一瞬だけ変わった。
リリアの炎魔法が、視える。
ルーナ姫の光魔法が、視える。
ドワーフたちの力も、視える。
そして——
「あのゴーレムの魔力も……トレースできる!」
俺は、ゴーレムに意識を集中させた。
ゴーレムの魔力の流れが、視えてくる。
魔力が、体中を巡っている。
そして——
「見えた!魔力が集中している場所……胸の中心部だ!」
俺は叫んだ。
「本当か!?」
「ああ!でも、俺一人じゃ無理だ。みんなの力を貸してくれ!」
「わかった!」
ドラ、グラ、ダグが頷いた。
「ワシらは、ゴーレムの動きを止める!」
「リリア、ルーナ姫、コアへの攻撃を頼む!」
「わかりました!」
「任せて!」
二人が構えた。
***
「行くぞ!」
ドラたちが、ゴーレムの足に斧を振り下ろした。
ガキィィィン!!
物理攻撃は効かないが——
「構わん!ワシらは足止めをするだけじゃ!」
ドラたちが、ゴーレムの周りを駆け回る。
ゴーレムの注意が、ドワーフたちに向く。
「今だ!」
俺は叫んだ。
リリアが前に出た。
「ファイアボール!」
炎の魔法が、ゴーレムの胸を狙う。
ゴォォォォ!!
しかし、ゴーレムは炎を吸収してしまう。
「くっ……吸収されちゃう……」
「大丈夫だ!もう一度!」
「わかったわ!」
ルーナ姫が剣を構えた。
「シャイニングブレード!」
光の剣が、ゴーレムの胸を斬りつける。
しかし、それも吸収される。
「やっぱり駄目……」
「いや、効いてる!魔力が乱れてきた!」
俺は、ゴーレムの魔力の流れを見つめた。
魔力が、少しずつ乱れている。
コアが露出し始めている。
「もう一回だ!二人同時に攻撃してくれ!」
「わかりました!」
「任せて!」
リリアとルーナ姫が、同時に魔法を放った。
「ファイアボール!」
「シャイニングブレード!」
炎と光が、ゴーレムの胸に集中する。
ゴォォォォォ!!
ゴーレムの胸が砕け——
中から、青白く光るコアが露出した。
「見えた!あれがコアだ!」
「もう一撃!」
リリアとルーナ姫が、再び魔法を放つ。
ゴォォォォォ!!
炎と光が、コアを直撃した。
パリィィィン!!
コアが砕け散る。
ドサァァァ……
ゴーレムが、崩れ落ちた。
「や、やった……」
俺は膝をついた。
体が、ずっしりと重い。
「アル!大丈夫ですか!?」
リリアが駆け寄ってきた。
「ああ……なんとか……みんなのおかげだよ」
「すごい……みんなで協力して倒したんですね……」
ルーナ姫が笑顔で言った。
「ふぉっふぉっふぉ!これが種族を超えた協力じゃ!」
ドラたちも笑っている。
「混成酒の能力のおかげで、魔力の流れが見えたんだ……」
俺は小瓶を見つめた。
その時——
ゴゴゴゴゴ……!!
再び、装置が不気味な音を立て始めた。
「!?」
「なんじゃ!?」
シュウウウウウ!!
装置から、また魔力の塊が噴き出した。
「嘘だろ……また!?」
倒したはずのゴーレムが、再び形成されていく。
「くそっ!装置の魔力が膨大すぎて、何度でも再生するのか!」
「このままじゃ、キリがない!」
リリアが叫んだ。
「ワシらの体力も限界じゃ!」
ドラが息を切らしている。
「逃げるぞ!今すぐ!」
俺は叫んだ。
「じゃが……」
「装置を止めるには獣族にしかない花が必要なんだろ!?だったら、今はここから出るしかない!」
「……わかった!」
俺たちは、一斉に出口へ向かって走り出した。
背後で、再生したゴーレムが動き出す音が聞こえる。
ドシン、ドシン、ドシン……
「追ってくる!?」
「いや、遺跡から出れば追ってこないはずじゃ!」
ドラが叫んだ。
俺たちは、必死で階段を駆け上がった。
「くそっ……体が重い……」
混成酒の代償で、体が思うように動かない。
「アル!」
リリアが俺の腕を支えてくれた。
「ありがとう……」
「わたしも!」
ルーナ姫が反対側の腕を支えた。
「助かる……」
三人で階段を駆け上がる。
ようやく、出口の扉が見えた。
「あそこだ!」
俺たちは、扉から飛び出した。
ドンッ!!
親方が、すぐに扉を閉めた。
ガシャン!!
重い音を立てて、扉が閉まる。
「はぁ……はぁ……助かった……」
俺は地面に座り込んだ。
「大丈夫か!?」
親方が心配そうに駆け寄ってきた。
「はい……なんとか……」
「ゴーレムは……?」
「倒しましたが……装置の魔力で何度も再生します」
「なんじゃと!?」
親方が驚愕の表情を浮かべた。
「装置を完全に止めないと、ゴーレムは無限に再生し続けます」
「そうか……やはり、獣族に伝わる花が必要なんじゃな……」
親方が悔しそうに拳を握った。
「だが……その花があれば、装置を止められる」
「獣族に伝わる花……?」
「ああ。古代文字に書いてあった。『この装置を止めるには、獣族に伝わる花のエキスが必要』とな」
グラが説明した。
「獣族に伝わる花は、獣人の森にしか生えない植物じゃ」
ドラが付け加えた。
「獣人の森……」
俺は考え込んだ。
このままでは、街が吹き飛んでしまう。
「行くしかないな……獣人の森へ」
「じゃが、獣人族は人族を信用しておらん。簡単には行けんぞ」
ドラが心配そうに言った。
「それでも、行くしかない。魔力で造られた酒は是が非でも飲みたいだろ!」
リリアとルーナはあきれていた。
「そうじゃな!もちろんワシらも協力するぞ!」
「ありがとう!」
「必ず、獣族に伝わる花を手に入れてくれ」
親方が深く頭を下げた。
「任せてください!」
俺は、親方に約束した。
こうして、俺たちは獣人の森へ向かうことを決めた。
***
その夜——
俺たちは、ドラたちの家で作戦会議を開いた。
「獣人の森は、ここから西へ三日ほどの距離じゃ」
ドラが地図を広げた。
「獣人族は、どんな種族なんだ?」
「主に、狼や虎の獣人じゃな。戦闘能力は高い」
「戦闘能力……」
「じゃが、昔は人族と友好的じゃった。何かがあったんじゃろうな」
ドラが悲しそうに言った。
「何かって……」
「わからん。じゃが、今は人族を信用しておらん」
「なるほど……」
俺は考え込んだ。
どうすれば、獣人族と話ができるのか……
「まあ、行ってみないとわからんな」
「そうじゃな」
ドラが頷いた。
「明日の朝、出発しよう」
「おう!」
こうして、俺たちは獣人の森へ向かう準備を整えた。
12月31日は3話一挙投稿いたします!
11時、15時、20時投稿予定です!是非スキマ時間に読んでいただけたら嬉しいです
リアクションなんかもくれたらうれしいなと思ってます……




