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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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36/61

35杯目 黄金の稲穂を守るドラゴン

数日後——


俺たちは、ついに山脈の頂上付近に到達した。


「はぁ……はぁ……やっと着いた……」


俺は息を切らしながら、岩陰に腰を下ろした。


「アル、大丈夫ですか?」


リリアが心配そうに声をかけてきた。


「だ、大丈夫……ちょっと疲れただけ」


「情けないのう」


ドラが笑った。


「ドワーフなら、この程度の登山、朝飯前じゃ」


「お前ら、昨日散々息切らしてただろ……」


俺はツッコんだ。


「し、知らん!」


ドラが顔を背けた。


「それより、見ろ!あれじゃ!」


グラが指差した。


俺たちは、その光景に息を呑んだ。


頂上の平地には——


一面の、黄金の稲穂が広がっていた。


「これは……」


俺は目を疑った。


「米……だ!」


「こめ?」


リリアが首を傾げた。


「日本の主食だ!なんでこんなところに……!?」


俺は興奮して、稲穂に駆け寄った。


「うおおおお!本物の米じゃないか!!こんな異世界で米が見られるなんて!!」


「アル、落ち着いてください……」


リリアが困惑している。


だが、俺の興奮は止まらない。


「なんでこんなところに米が!?うぉぉぉ食べてー!」


「お前さん、落ち着け……」


ダグが俺の肩を掴んだ。


「あそこを見ろ」


「ん?」


俺はダグが指差す方を見た。


そこには——


巨大な、金色のドラゴンが眠っていた。


「……マジか」


俺は硬直した。


ドラゴンは、稲穂の中央で丸くなって眠っている。


その体は、優に十メートルはあるだろう。


金色の鱗が、陽光を反射して輝いている。


「あれが……伝説のドラゴンじゃ……」


ドラが小声で言った。


「この山脈を守る、守護竜と言われておる」


「どうする?帰るか?」


グラが提案した。


「そ、そうだな……あんなの相手にできるわけ……」


俺がそう言いかけた時——


「アル!危ない!」


リリアが叫んだ。


俺は振り返った。


新たなモンスターが、俺に襲いかかってきた!


「うわっ!」


襲い掛かってきたモンスターはリリア達が倒してくれたが——


ドシャッ!


俺は咄嗟に避けたが、足を滑らせ派手に転んだ。


「いってぇ……」


その時、俺の懐から小瓶が転がり出た。


『混成酒』だ。


小瓶は転がり、稲穂の中へと消えた——


そして、ドラゴンの鼻先に当たった。


カツン。


「……あ」


俺は青ざめた。


ゴゴゴゴゴ……


ドラゴンの目が、ゆっくりと開いた。


金色の瞳が、俺たちを見つめる。


「グルルルル……」


低い唸り声が響いた。


「に、逃げるぞ!」


ドラが叫んだ。


だが——


「待て」


ドラゴンが、人の言葉を発した。


「……喋った!?」


俺は驚愕した。


「そなたたち……何用だ」


ドラゴンがゆっくりと立ち上がった。


その威圧感に、俺たちは身動きが取れない。


「わ、ワシらは……伝説の酒を求めて……」


ドラが震える声で言った。


「酒……?」


ドラゴンは首を傾げた。


「そうじゃ……この黄金の稲穂から作られる、伝説の酒を……」


「なるほど。だが、それは許可できぬ」


ドラゴンは威圧的に言った。


「この稲穂は、わたしが守るべきもの。何人たりとも、触れさせぬ」


「そんな……」


ドラが落胆した。


その時——


「待ってくれ!」


俺は叫んだ。


「これは米……日本の米だろ!?なんでこんなところにあるんだ!?」


「……米?」


ドラゴンが俺を見た。


「そなた……まさか」


ドラゴンの瞳が、驚きに見開かれた。


「そなたは……日本人か?」


「え……あ、ああ。そうだけど……」


「なんと……」


ドラゴンは、明らかに動揺していた。


「まさか、ここで日本人に会えるとは……」


「お前……日本人なのか?」


俺は驚いて聞いた。


「ああ。わたしも、かつては日本人だった」


ドラゴンがそう言うと——


眩い光が、ドラゴンを包んだ。


光が消えると、そこには——


「え……」


俺は言葉を失った。


そこには、絶世の美女が立っていた。


黒髪のロングヘア。


整った顔立ち。


和服を思わせる、華やかな衣装。


「わたしの名は、ユリ。日本から転生した、元ドラゴン……いや、今もドラゴンだが」


ユリが微笑んだ。


「よろしく、アル」


「え、えっと……よ、よろしく……」


俺は顔を赤らめた。


(美人すぎる……!)


「……アル」


背後から、リリアの冷たい声が聞こえた。


「な、何?」


「デレデレしないでください」


「し、してないぞ!?」


「してます」


ルーナ姫も冷たい声で言った。


「顔、真っ赤ですよ」


「え、マジで!?」


俺は慌てて頬を触った。


バシッ!


リリアとルーナ姫が、同時に俺の頭を叩いた。


「いってぇ!!」


「ふふふ……仲が良いのね」


ユリが微笑んだ。


「それで、アル。そなたは、なぜこの山に?」


「あ、ああ……伝説の酒を探しに」


「伝説の酒……ああ、日本酒のことか」


「え、日本酒!?」


俺は驚いた。


「そうだ。わたしは、この米を使って日本酒を造っている」


「マジで!?」


「ああ。日本から転生してきて、何百年も経つが……やはり、日本酒が恋しくてな」


ユリが懐かしそうに言った。


「それで、この山に米を育て、日本酒を造り続けてきた」


「すごい……」


俺は感動した。


「なあ、その日本酒……分けてもらえないか?」


「もちろんだ。久しぶりに、日本人と酒を酌み交わしたい」


ユリが笑顔で言った。


***


こうして、俺たちはユリの家——山頂の洞窟で、宴会を開くことになった。


「かんぱーい!」


「乾杯じゃ!」


全員でグラスを掲げた。


「うおおおお!美味い!!」


俺は日本酒を一口飲んで、感動した。


「これ、本物の日本酒だ!!」


「ふふ、喜んでもらえて嬉しい」


ユリが微笑んだ。


「うむ!これは美味いのう!」


ドワーフ三人組も、日本酒を堪能している。


「リリア、お前も飲めよ」


「はい……でも、お酒はあまり得意じゃ……うっ」


リリアが一口飲んで、顔を真っ赤にした。


「あら、可愛い」


ユリが笑った。


「ルーナ姫も、どうぞ」


「ありがとう……って、強い!」


ルーナ姫も顔を赤らめた。


「ふぉっふぉっふぉ!若いのう!」


ダグが笑っている。


その時、ルーナ姫がユリをじっと見つめていた。


「ユリさん……」


「なんだ?」


「失礼ですが……その美貌、どうやって保っているんですか!?」


ルーナ姫が身を乗り出した。


「え?」


ユリが困惑する。


「だって、何百年も生きているのに、そんなに美しいなんて!肌もツヤツヤだし、髪も綺麗だし!秘訣を教えてください!!」


「ル、ルーナ姫……」


リリアが呆れた顔をした。


「あ、あの……それは……」


ユリが戸惑っている。


「やっぱり、ドラゴンだから特別なんですか!?それとも、何か特殊なケアを!?化粧水とか!?美容液とか!?」


「ちょ、ちょっと待って……」


「教えてください!私も綺麗になりたいんです!!」


ルーナ姫がユリの手を握った。


「ルーナ姫、落ち着け!!」


俺は慌てて止めに入った。


「ユリさんが困ってるだろ!!」


「だって気になるんです!こんなに美しい人に会ったの初めてで!!」


「それはわかるけど……」


「アル、あなたもそう思うでしょ!?ユリさん、すごく美人ですよね!?」


「え、えっと……まあ、その……」


俺は言葉に詰まった。


バシッ!


リリアが俺の頭を叩いた。


「痛っ!?」


「答えなくていいです」


リリアが冷たく言った。


「ふふふ……」


ユリが笑い出した。


「そなたたち、本当に仲が良いのだな」


「仲良くなんか……」


「良くないです……」


リリアとルーナ姫が同時に呟いた。


「まあ、質問に答えるなら……特に何もしていない。ドラゴンは、元々老いが遅いからな」


ユリが優しく言った。


「そうなんですか……」


ルーナ姫が残念そうにした。


「だが、一つだけ言えることがある」


「なんですか!?」


「笑顔でいること。そして、大切な人を想い続けること。それが、一番の美容法だ」


ユリが微笑んだ。


「……素敵です」


ルーナ姫が目を輝かせた。


「私も、そんな風になりたいです」


「そなたは、もう十分美しいぞ」


「本当ですか!?」


「ああ。内面の輝きが、外見にも現れている」


ユリの言葉に、ルーナ姫は嬉しそうに頬を染めた。


「……ユリさん、ルーナ姫を甘やかさないでください」


リリアがため息をついた。


「ふぉっふぉっふぉ!女子会じゃのう!」


ドラが大笑いした。


「女子会って言葉をお前らから聞くとなんか変な感じだな」


しばらく酒を酌み交わしていると、ふとリリアが質問した。


「ユリさん……一つ聞いてもいいですか?」


「なんだ?」


「なぜ、こんな山の頂上で、一人で暮らしているんですか?この稲穂を守るために……」


ユリは、グラスを見つめながら静かに答えた。


「……昔の約束を、守っているからだ」


「昔の約束?」


俺は首を傾げた。


「ああ。わたしがまだ若い頃……ある人と、約束をした。『この稲穂を、永遠に守り続ける』と」


ユリの表情が、少し寂しげになる。


「その人は、もういない。だが、約束は約束だ。わたしは、これからもここで稲穂を守り続ける」


「……そうなんだ」


俺は、それ以上聞けなかった。


きっと、大切な人との約束なんだろう。


「でも、寂しくないんですか?一人で……」


ルーナ姫が心配そうに聞いた。


「寂しくないと言えば嘘になる。だが……こうして、たまに訪れる人と酒を酌み交わせる。それで十分だ」


ユリが微笑んだ。


「それに、最近は良い話も聞く」


「良い話?」


「ああ。そなたたちの話だ。魔族と人族、そしてエルフやドワーフ……かつては対立していた種族が、少しずつ共存に向かっていると」


ユリが俺たちを見渡した。


「実際、そなたたちを見ていると、それがよくわかる。人族のアルと魔族のリリア、人族のルーナ姫、そしてドワーフのドラたち……みな、種族を超えて仲良く旅をしている」


「ああ、まあ……色々あったけどな」


俺は苦笑した。


「だが、それが素晴らしい」


ユリの目が、優しく輝いた。


「わたしが地上にいた頃は……」


ユリの表情が、急に曇った。


「争いが絶えなかった。人族は魔族を憎み、魔族は人族を恨み、エルフはどちらにも距離を置き、ドワーフは孤立していた」


「……そうだったんですか」


「ああ。種族間の戦争が、何度も起きた。わたしは、それを見るのが……耐えられなかった」


ユリの声に、怒りが混じった。


その瞬間——


ゴゴゴゴゴ……!


洞窟全体が、激しく揺れ始めた。


「うわっ!?」


「地震!?」


俺たちは慌てて立ち上がった。


ユリの怒りに呼応するように、大地が震えている。


「ちょ、ちょっと待った!ユリさん、落ち着いて!!」


俺は慌ててユリに駆け寄った。


「このままじゃ、洞窟が崩れる!!」


「あ……すまない」


ユリがハッと我に返り、深呼吸をした。


すると、揺れが徐々に収まっていく。


「……つい、感情的になってしまった」


「いや、気持ちはわかるよ……でも、俺たち生き埋めになるところだったから……」


俺は冷や汗を拭った。


「ふぉっふぉっふぉ!ドラゴンの怒りは、大地をも揺るがすのう!」


ドラが笑っている。


「笑い事じゃないですよ……」


リリアがため息をついた。


「だが……そなたたちのおかげで、わたしも希望を持てた」


ユリが再び微笑んだ。


「種族を超えた絆。それが、この世界を変えていく。わたしは、そう信じている」


「……ありがとう、ユリさん」


俺は、ユリさんの言葉に胸が熱くなった。


「ユリさん、ありがとう。この日本酒、持って帰ってもいいか?」


「もちろんだ。好きなだけ持って行ってくれ」


「マジで!?ありがとう!」


俺は感激した。


こうして、俺たちは山頂で楽しい宴会を過ごした。


翌日、俺たちは日本酒を樽ごと譲り受け、山を下りることにした。


「ユリさん、本当にありがとう!」


「いや、こちらこそ楽しかった。また来てくれ」


ユリが手を振った。


「必ず!」


俺たちは、意気揚々と黄金の稲穂を後にし、山を下りた。

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