34杯目 一合目からの試練!ドタバタ登山!
山脈に入ってすぐ、俺たちは奇妙なものを発見した。
「……看板?」
道の脇に、木製の看板が立っていた。
そこには、文字が刻まれている。
「一合目……って、これ……」
俺は目を疑った。
「日本語だ!!」
「にほんご?」
リリアが首を傾げた。
「アル、にほんごって何ですか?」
「俺の元居た世界の言葉だ!なんでここに……!?」
俺は看板をまじまじと見つめた。
確かに、『一合目』と日本語で書かれている。
「お前さん、これが読めるのか?」
ドラが驚いた顔で聞いてきた。
「ああ、読める。これ、日本語って言って……」
「なんじゃと!?」
三人のドワーフが驚愕した。
「ワシらは、この文字を何十年も解読しようとしたんじゃ!」
「だが、誰一人として読めなかった!」
「お前さん、天才か!?」
「いや、天才とかじゃなくて……俺の母国語だから……」
俺は困惑した。
(なんで、ここに日本語が……?)
「とにかく、進みましょう」
ルーナ姫が言った。
「頂上を目指すんでしょ?」
「そうだな。とりあえず、行こう」
***
山道を進んでいくと——
「グルルルル……」
茂みから、低い唸り声が聞こえた。
「……モンスターか?」
俺は警戒した。
次の瞬間——
ガサガサッ!
巨大な狼のようなモンスターが飛び出してきた!
「うわっ!」
「きゃあ!」
リリアとルーナ姫が悲鳴を上げた。
「任せろ!」
ドラが斧を構えた。
「ドワーフの力、見せてやる!」
ドラは斧を振りかざし、モンスターに突進した。
「とりゃああああ!」
ドゴォン!
……だが、斧はモンスターの毛皮に弾かれた。
「な、なんじゃと!?硬い!」
「ドラ、退け!」
グラとダグも斧で攻撃するが、やはり弾かれる。
「ちっ、このモンスター、防御力が高いぞ!」
「任せてください!」
リリアが前に出た。
「炎の魔法で焼き払います!」
リリアが手を掲げる。
「《ファイアボール》!」
巨大な火球がモンスターに直撃した!
「グォォォォ!」
モンスターが悲鳴を上げて倒れた。
「やった!」
「さすがリリア!」
「ふん、これぐらい当然よ」
リリアが得意げに言った。
だが——
ガサガサッ!ガサガサッ!
茂みから、さらに三匹のモンスターが飛び出してきた!
「うそだろ!?まだいるのか!」
「囲まれた!」
「アル、後ろに!」
リリアが俺を庇おうとする。
その時——
「《シャイニングブレード》!」
ルーナ姫が剣を振るった。
剣身が眩い光を放ち、モンスター一匹を一閃した!
「えっ……」
俺は目を丸くした。
ルーナ姫の動きは、信じられないほど速かった。
「《ホーリーランス》!」
さらに光の槍を放ち、もう一匹を貫いた。
「すげえ……」
「ルーナ姫、そんなに強かったのか……」
ドラとグラも驚いている。
「当然よ。伊達に王女やってないわ」
ルーナ姫が笑顔で言った。
「でも、まだ一匹……」
最後のモンスターが、俺に飛びかかってきた!
「アル!!」
リリアが叫んだ。
(やばい!)
俺は咄嗟に、懐から小瓶を取り出した。
これは、『混成酒』——複数の種族の酒を混ぜ合わせた特殊な酒だ。
「えいっ!」
俺は小瓶を一気に飲み干した。
瞬間——
ビリビリッ!
体中に、不思議な感覚が走った。
(これは……!)
俺の視界が一瞬、金色に染まる。
そして、脳裏に情報が流れ込んできた。
リリアの炎魔法の構造。
ルーナ姫の光魔法の流れ。
「なんだ、これ……トレース、できる……!?」
俺は無意識に、右手を掲げていた。
「《ファイア》!」
俺の手から、リリアと同じ炎が生まれる。
「え……?」
リリアが驚いた顔で俺を見た。
「そして——《シャイニング》!」
左手には、ルーナ姫の光魔法が宿る。
「まさか……アル、あなた……!」
ルーナ姫も目を見開いた。
「わかんねえけど——行けるっ!」
俺は両手の魔法を、一つに融合させた。
炎と光が混ざり合い、眩い閃光を放つ!
融合した魔法がモンスターに直撃した!
ドゴォォォォォォン!!
モンスターが光と炎に包まれ、一瞬で消滅した。
「……え?」
俺は自分の手を見つめた。
「今の……俺がやったの?」
「アル……すごいです……」
リリアが呆然としている。
「ちょっと待って……私の炎魔法と、私の光魔法を……組み合わせた!?」
ルーナ姫も驚愕している。
「ま、まあ……たまにはな」
俺は誤魔化すように笑った。
(『混成酒』……他者の技やステータスをトレースできるのか……!)
だが、すぐに体が重くなる。
(うっ……代償は、ありそうだな……)
「ふぉっふぉっふぉ!やるのう、アル殿!」
ダグが大笑いした。
「ワシらも負けておられんな!」
「そうじゃそうじゃ!」
ドワーフ三人組も、やる気を出したようだ。
だが——
「プライドだけは高いのね……」
ルーナ姫がぼそっと呟いた。
「聞こえとるぞ!」
ドラが怒鳴った。
***
その夜、俺たちは野営をすることにした。
「ふぅ……疲れた」
俺はテントの前で、焚き火を見つめていた。
「アル、お疲れ様です」
リリアがお茶を淹れてくれた。
「ありがとう」
「今日は……大変でしたね」
「ああ、まさかあんなにモンスターが出るとは思わなかった」
「でも、ルーナ姫……意外と強かったですね」
リリアが少し悔しそうに言った。
「ああ、びっくりした。まさかあんなに剣が使えるとは」
「……私も、もっと頑張らないと」
リリアが小声で呟いた。
「ん?何か言った?」
「いえ、何でもないです」
リリアは頬を染めて俯いた。
(……なんか、可愛いな)
俺はそう思ったが、口には出さなかった。
「あの……アル」
リリアが、意を決したように顔を上げた。
「なんだ?」
「私……その……」
リリアが何か言おうとした、その時——
「アル、まだ起きてたの?」
ルーナ姫が、テントから出てきた。
「あ、ああ……」
「私も眠れなくて。一緒にお茶、飲んでもいい?」
「ど、どうぞ……」
俺は答えた。
リリアは、明らかに不満そうな顔をしていた。
「……ルーナ姫、空気読んでください」
「あら、何のこと?」
ルーナ姫がニッコリ笑った。
「……なんでもないです」
リリアがため息をついた。
「ふぉっふぉっふぉ……青春だのう」
少し離れたところで、ドワーフ三人組が笑っていた。
「若いっていいのう」
「ワシらも、昔はああだったのう」
「お前ら、笑ってないで寝ろよ……」
俺はため息をついた。
こうして、長い一日が終わった。




