33杯目 アル山脈へ!伝説の酒を求めて
出発の朝。
俺は酒場の前で、荷物を準備していた。
「よし、これで……」
「アル!私も行きます!」
背後から、リリアの声が聞こえた。
「リリア?お前も来るのか?」
「当たり前です!アルを一人で行かせるわけにはいきません!」
リリアが両手を腰に当てて言った。
「いや、一人じゃないぞ。ドワーフ三人組がいるし……」
「あの酔っ払いたちですか!?余計に心配です!」
「酔っ払いとは失礼な!」
ドラが怒鳴った。
「ワシらは、立派なドワーフ戦士じゃ!」
「昨日、酒場で潰れてたくせに……」
リリアが呆れた顔で言った。
「う、うるさい!あれはアル殿の酒が強すぎたせいじゃ!」
グラが言い訳した。
「とにかく!私も行きます!」
リリアが宣言した。
その時——
「私も行くわ!」
別の声が聞こえた。
「……ルーナ姫?」
俺は驚いて振り返った。
そこには、庶民の服装に着替えたルーナ姫が立っていた。
「ルーナ姫……なんでここに?」
「噂を聞いたわ。アルが東の国に行くって」
ルーナ姫はニッコリ笑った。
「せっかくだから、私も同行させてもらうわ!」
「ちょっと待ってください!」
リリアが割り込んできた。
「なんで姫様まで行くんですか!?」
「別にいいでしょ?私だって、たまには冒険がしたいのよ」
「アルの邪魔になるだけです!」
「邪魔?私、結構強いのよ?」
ルーナ姫が自信満々に言った。
「リリアこそ、足を引っ張らないでね?」
「なんですって!?」
リリアの額に青筋が浮かんだ。
「私の炎魔法は、一流です!姫様なんかより、よっぽど役に立ちますよ!」
「あら、私の光魔法も負けてないわよ?それに、剣だって使えるんだから」
「私だって、剣ぐらい……」
「使えないでしょ?」
「ぐっ……!」
リリアが言葉に詰まった。
「ちょ、ちょっと待て!お前ら、喧嘩するなって!」
俺は慌てて二人の間に入った。
「アル!私と姫様、どっちが必要ですか!?」
「え、俺に選ばせるの!?」
「当たり前です!」
「そうよ!」
二人が同時に詰め寄ってきた。
「うわぁ……これは詰んだ……」
俺は頭を抱えた。
「ふぉっふぉっふぉ!青春だのう!」
ドラが大笑いした。
「若いっていいのう!」
グラも笑っている。
「ワシらも昔は、こんな感じだったのう」
ダグがしみじみと言った。
「お前ら、笑ってないで助けてくれよ……」
「無理じゃ!女の戦いに男が口を出すもんじゃない!」
ドラが断言した。
「……結局、どうすんだよ」
俺はため息をついた。
「……まあ、二人とも来ればいいんじゃないか?」
「え?」
「人数が多い方が、安全だろ。モンスターも出るみたいだし」
「そ、そうですね……」
リリアが頷いた。
「まあ、仕方ないわね……」
ルーナ姫も渋々承諾した。
だが、二人は互いににらみ合っている。
(……これ、絶対途中で揉めるやつだ)
俺は不安を感じながらも、出発の準備を整えた。
***
こうして、俺たちは王都を出発した。
メンバーは——
俺、リリア、ルーナ姫、そしてドワーフ三人組。
合計六人のパーティーだ。
「それにしても……遠いな」
俺は空を見上げた。
「アル、山脈は、ここから三日ほどの距離じゃ」
ドラが説明した。
「途中、いくつかの村を経由していく。夜は、そこで宿を取ればいい」
「なるほど」
「だが、山脈に入ってからは、野営になる」
グラが真面目な顔で言った。
「モンスターも出るし、危険じゃぞ」
「まあ、なんとかなるでしょ」
俺は楽観的に答えた。
「アル……その楽観性、時々心配になります」
リリアがため息をついた。
「大丈夫大丈夫。俺には【完璧な調合】があるし」
「それ、酒のスキルですよね?戦闘には役立たないんじゃ……」
「そんなことないぞ。最近、狙って使えるようになってきたんだ」
「本当ですか?」
「ああ。『心を開く酒』とか、『和解のカクテル』とか、ちゃんと意図して作れるようになった」
「……それ、戦闘には関係ないですよね?」
リリアが冷静にツッコんだ。
「ま、まあ……そうだけど……」
「結局、私たちが守るんですね」
ルーナ姫が笑いながら言った。
「安心して、アル。私が守ってあげるわ」
「いえ、私が守ります!」
リリアが対抗した。
「また始まった……」
俺は頭を抱えた。
「ふぉっふぉっふぉ!賑やかで良いのう!」
ダグが笑っている。
こうして、俺たちの珍道中が始まった。
***
三日後。
俺たちは、ついにアル山脈の麓に到着した。
「おお!あれがアル山脈じゃ!」
ドラが指差した。
そこには、巨大な山々が連なっていた。
雪を被った頂は、雲の中に隠れている。
「でかいな……」
「ああ。この山脈を登りきれば、伝説の酒があるはずじゃ」
グラが地図を広げた。
「さあ、行くぞ!」
「おー!」
俺たちは、意気揚々と山脈へと足を踏み入れた。




