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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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33/60

32杯目 ドワーフ来襲!酒飲み三人衆と伝説の酒

『和解のカクテル』騒動から一週間。


ようやく街中での追跡劇も落ち着き、俺は平穏な日々を取り戻していた。


俺は今、リリアと共に小さな酒場を経営している。日銭を自分で稼ぐためだ。王城から支援を受けることもできたが、俺は自分の力で生きていきたかった。それに、酒場の仕事は性に合っている。


酒場のカウンターで、いつものように酒瓶を磨きながら、のんびりとした午後を過ごしている。


「はぁ……平和だ。これこれ、これが俺の求めていた生活だ」


「アル、油断しすぎですよ」


リリアが呆れた顔で言う。


「大丈夫大丈夫、もう誰も追いかけてこないって。あれだけ逃げ回ったんだから、みんなも諦めただろ」


そう言った瞬間——


ドォォォン!!


酒場のドアが勢いよく開いた。


いや、開いたというより、吹き飛んだ。


「おおおおおおい!!誰か噂のバーテンダーはおらんかァァァ!!」


「酒造りの達人がここにおると聞いたぞォォォ!!」


「ワシらに美味い酒を飲ませんかァァァ!!」


三人の屈強な……いや、ずんぐりむっくりとした体格の男たちが、酒場に乱入してきた。


背丈は俺の胸ぐらいまでしかないが、横幅が俺の倍はある。


筋骨隆々とした腕には、びっしりと体毛が生えている。


顎には立派な髭を蓄え、頭には角のような飾りのついた兜を被っている。


「……ドワーフ?」


「おお!よくわかったのう!ワシらはドワーフじゃ!」


真ん中にいる、一際髭の長い男が豪快に笑った。


「ワシはドラ!」


「ワシはグラ!」


「ワシはダグ!」


三人が順番に名乗った。


「……名前、適当すぎないか?」


「うるさい!ドワーフの名前はシンプルが一番なんじゃ!」


ドラが怒鳴った。


「で、何の用だ?っていうか、ドア弁償してくれよ……」


俺は壊れたドアを見て頭を抱えた。


「細かいことは気にするな!それより、噂を聞いたぞ!お前さんが、種族の垣根を越えた『和解のカクテル』とやらを作ったそうじゃないか!」


グラが興奮気味に言った。


「ああ、まあ……そうだけど」


「ならば!ワシらにもその酒を飲ませてくれ!」


ダグが勢いよくテーブルを叩いた。


「って、ちょっと待て。お前ら、亜人族だろ?わざわざ人族の国まで来たのか?」


「当たり前じゃ!美味い酒のためなら、どこへでも行くのがドワーフの流儀よ!」


ドラが胸を張って言った。


「ドワーフってのは、種族間の争いとかには興味ないんだ」


リリアが俺に耳打ちした。


「ただし……」


「ただし?」


「ドワーフ族こそが、この世界で最も優れた種族だと信じてるの。プライドだけは、異様に高いのよ」


「……めんどくさいタイプじゃん」


俺は小声で呟いた。


「聞こえとるぞ!」


ドラが怒鳴った。


「ドワーフは耳がいいんじゃ!その代わり、目は悪い!」


「自慢にならねえよ!」


俺は思わずツッコんだ。


「まあまあ、とにかく酒を飲んでくれ。ワシらは、お前さんの人間性を見たいんじゃ」


グラが落ち着いた口調で言った。


「人間性……?」


「そうじゃ。ドワーフは、酒造りはできん。だが、酒を飲むのは得意じゃ。酒を飲めば、その人間の本性がわかる」


ダグが真面目な顔で言った。


「ワシらと一緒に酒を飲んで、気に入ったら……頼みごとがあるんじゃ」


「頼みごと……?」


俺は怪訝な顔をした。


「まあまあ、まずは飲め!話はそれからじゃ!」


***


こうして、俺とドワーフ三人組の酒盛りが始まった。


「うおおおお!これは美味い!!」


「人間の酒とは思えん旨さじゃ!!」


「おかわり!おかわりをくれ!!」


三人は、俺が出した酒を次々と飲み干していく。


「おいおい、ペース速すぎだろ……」


「心配するな!ドワーフは酒に強いんじゃ!こんなもん、水みたいなもんよ!」


ドラが豪快に笑った。


だが、三十分後——


「うぅ……酔ったぁ……」


「ワ、ワシは……まだ飲めるぞぉ……」


「お、おかわり……くだしゃい……」


三人とも、真っ赤な顔でテーブルに突っ伏していた。


「……水みたいなもん、じゃなかったのかよ」


俺は呆れた。


「す、すまん……お前さんの酒が、強すぎたんじゃ……」


ドラがぐったりとしながら言った。


「でも……わかったぞ。お前さんは、面白い男じゃ」


「面白い……?」


「ああ。酒を飲んでも、態度が変わらん。誰に対しても、同じように接する。偏見もない」


グラが笑顔で言った。


「それに、何も考えてない感じがよい」


「馬鹿にしてます?」


 アルがすかさずつっこむ。


ダグも頷いた。


「ワシらは、お前さんを気に入った!」


三人が同時に立ち上がった。


……いや、立ち上がろうとして、よろけて倒れた。


「立てよ……」


俺はため息をついた。


「それで、頼みごとって何だ?」


「おお、そうじゃった!」


ドラが這いつくばりながら、俺を見上げた。


「実は……東の亜人族の国に、伝説の酒があるんじゃ」


「伝説の酒……?」


「ああ。アル山脈の頂上に、黄金の稲穂が実るという。そこには、神が造りし酒があると言われておる」


グラが真剣な顔で言った。


「ワシらドワーフは、酒造りができん。だが、その伝説の酒を飲むのが、長年の夢だったんじゃ」


ダグが涙ぐんでいた。


「だが、山脈には強力なモンスターがおる。ワシらだけでは、辿り着けん……」


「だから、お前さんに頼みたい!一緒に、伝説の酒を取りに行ってくれんか!」


三人が土下座した。


「……マジで?」


俺は困惑した。


「マジじゃ!頼む!!」


「伝説の酒かぁ……」


俺は少し考えた。


正直、面倒くさい。


だが——


(伝説の酒、か。ちょっと気になるな……)


俺も酒好きだ。伝説の酒と聞いて、興味が湧かないわけがない。


「……わかった。行ってやるよ」


「本当か!!ありがとう!!」


三人が抱きついてきた。


「うわっ、重い!離れろ!!」


***


その夜、酒場を閉めた後。


俺は、一人で後片付けをしていた。


「山脈、か……」


(まあ、なんとかなるだろ)


俺は楽観的に考えた。


その時——


コンコン。


ドアをノックする音がした。


「はい?」


「アル、いるか?」


聞き覚えのある声だ。


「ルンブラン王子……?こんな時間にどうしたんですか?」


ドアを開けると、フードを深く被ったルンブラン王子が立っていた。


「すまない、夜分に。少し……相談があるんだ」


「相談?」


「ああ。実は……教育政策について、悩んでいてな」


ルンブラン王子は、酒場に入ってきた。


「父上は、種族間交流を進めることに賛成してくれている。だが、実際に学校で種族を混ぜて教育するとなると……様々な問題が出てくる」


「問題……ですか」


「ああ。人間とエルフでは、寿命が違う。魔族と人間では、文化が違う。それぞれに合わせた教育をしようとすると、教師が足りない」


ルンブラン王子は頭を抱えた。


「それに、保護者からの反対の声も多い。『なぜ、うちの子が魔族と一緒に学ばねばならんのだ』と……」


「……なるほど」


俺は少し考えた。


「でも、だからこそ、一緒に学ぶ意味があるんじゃないですか?」


「どういうことだ?」


「違いがあるからこそ、学び合える。人間はエルフから長い歴史を学び、エルフは人間から新しい文化を学ぶ。魔族からは、魔法の知識を学べる」


「……なるほど」


ルンブラン王子は目を輝かせた。


「違いを『問題』じゃなくて、『強み』として捉えればいいんだ……!」


「そうそう。それに、子供の頃から一緒に過ごせば、偏見も生まれにくいでしょ」


「アル……お前は、いつもそうやって、物事を前向きに捉えるな」


ルンブラン王子は笑顔で言った。


「いや、俺はただの酒好きですよ。なんとかなるさ、って思ってるだけで」


「……その楽観性が、時に世界を変えるのかもしれないな」


ルンブラン王子は立ち上がった。


「ありがとう、アル。参考になった。明日、さっそく父上に提案してみる」


「頑張ってください」


「ああ。それと……」


ルンブラン王子は振り返った。


「お前が東の国に行くと聞いた。気をつけろよ」


「……情報早いですね」


「王城には、色々な情報が入ってくるんだ」


ルンブラン王子は笑って、酒場を出て行った。


「さて……」


俺は空を見上げた。


「伝説の酒、か。楽しみだな」


こうして、俺の新たな冒険が始まろうとしていた。




**次回予告**


アルは、ドワーフ三人組と共に、アル山脈へと向かう!


だが、同行するのは彼らだけではなかった……?


「私も行くわ!」


「わ、私だって!」


リリアとルーナ姫の、バチバチバトル再び!


次回、『33杯目「アル山脈へ!伝説の酒を求めて」』


冒険と酒と、ちょっとした三角関係!?


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