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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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30/61

30杯目 種族間交流祭


式典から一週間後。


俺とリーサは、エルフの国へ向かう馬車の中にいた。


「アル、本当にエルフの国に行く必要があるの?」


リーサが心配そうに聞いてくる。


「ああ。種族間交流祭を成功させるには、エルフ族の協力が不可欠だ。それに……」


俺は窓の外を見ながら続けた。


「リヒトみたいな奴を、二度と生み出さないためにも、ちゃんと話をしておきたいんだ」


リーサは静かに頷いた。


「私も、昔は辛かった。ハーフだから、どこにも居場所がなくて……」


「リーサ……」


「でも、アルが私を受け入れてくれた。だから今度は、私がアルの理想を実現する手伝いをしたいの」


リーサの瞳には、強い決意が宿っていた。


「ありがとう、リーサ。お前がいてくれて、本当に良かった」


俺は、リーサの頭を優しく撫でた。


* * *


エルフの国は、深い森の中にあった。木々の間から差し込む光が幻想的で、空気もどこか澄んでいる。


「人族の方が、エルフの国を訪れるとは珍しいですね」


エルフの長老が、俺たちを迎えてくれた。長い銀髪に、深い緑色の瞳。いかにも長老という風格だ。


「はい。実は、お願いがあって来ました」


俺は、種族間交流祭のことを説明した。そして、リヒトのこと。彼がなぜあのような行動に出たのか。種族間の格差が、彼を追い詰めたことを。


「……なるほど。確かに、我々エルフは他の種族を見下しているところがあった」


長老は深く頷いた。


「俺が作りたいのは、種族関係なく、みんなで笑い合える世界なんです。酒を飲んで、料理を食べて、ただ楽しく過ごせる。そんな世界です」


長老は、しばらく沈黙した後、静かに微笑んだ。


「わかりました。我々エルフも、その祭りに協力しましょう。ただし……」


「ただし?」


「あなたが言う『笑い合える世界』、本当に実現できたら、の話ですがね」


長老はそう言って笑った。挑戦的な笑みだ。


「必ず実現してみせます。酒の力を、舐めないでください」


俺は自信満々に答えた。


* * *


そして、種族間交流祭の当日。


王都の街全体が、日本の縁日のような雰囲気に包まれていた。赤い提灯が街路に並び、あちこちに屋台が立ち並ぶ。


人族の焼き鳥屋台、魔族の辛口カレーの店、エルフ族の野菜串焼き……各種族が自慢の料理を出している。


人族の屋台では「いらっしゃい!焼きたての焼き鳥だよ!」と威勢のいい声が響き、魔族の店では「この辛さ、人族には耐えられるかな?」と挑発的な笑顔で客を呼び込む。エルフ族は優雅に「森の恵みをご堪能ください」と微笑んでいる。


金魚すくいならぬ「魔法魚すくい」、射的ならぬ「魔法的当て」、輪投げならぬ「魔法輪投げ」……。


日本の縁日の要素を、この異世界風にアレンジした屋台が並んでいる。


「すごい人だ……」


俺は人混みを見渡した。人族、魔族、エルフ族が入り混じって、笑顔で屋台を回っている。


「アル!」


振り向くと、リリアとルーナ姫が駆け寄ってきた。二人とも浴衣姿だ。


「アル、一緒に屋台を回りましょう!」


「いや、私こそアルと一緒に!」


二人は俺の両腕を取り合う。


「おお!あの屋台、魔族の辛口カレーだ!行ってみよう!」


俺は完全に料理と酒に夢中で、二人のアピールにまったく気づいていない。


「アル……全然こっちを見てくれない……」


「本当に鈍感ね……」


リリアとルーナ姫は、小さくため息をついた。


* * *


祭りも中盤に差し掛かった頃、リーサがふらふらと俺のところにやってきた。


「あるぅ~、このお酒美味しいよ~」


「リーサ!?お前、酒飲んだのか!?」


「うん!屋台のおじさんが、ジュースだよって~」


完全に騙されている。天然すぎる……。


「ねえアル!マーカス!お酒勝負しよう!」


「は?酒勝負?」


マーカスが戸惑う。


「うん!誰が一番飲めるか勝負!」


そして一時間後——。


「……ぐはっ」


「もう……無理だ……」


俺とマーカスは、テーブルに突っ伏していた。


「えー?もう終わり?まだまだ飲めるよ~!」


リーサはケロッとして、また酒を注いでいる。


「リーサ……お前、酒豪だったのか……」


俺は驚愕した。まさかこの天然娘が、俺とマーカスを飲み潰すとは……。


* * *


祭りの片隅で、マリアとゲルドが二人で酒を飲んでいた。


「久しぶりに、こんなに飲むわね……」


マリアは少し頬を赤らめながら、グラスを傾けた。


「マリア様、お酒が進んでいますね」


ゲルドが心配そうに声をかける。


「ねえ、ゲルド……昔、私が好きだった人がいたの」


「……え?」


「人族の、優しい人だった。いつも笑顔で……私に、たくさんのことを教えてくれて……」


マリアの目から、涙が一筋流れた。


「でも……もう、その人はいないの……」


「マリア様……」


ゲルドは、複雑な表情でマリアを見つめた。自分の想いを伝えたいが、今は彼女の悲しみに寄り添うべきだと。


「大丈夫ですよ、マリア様。ゆっくり、一緒に飲みましょう」


ゲルドは優しく、マリアの肩に手を置いた。


俺は、その様子を遠くから見ていた。


(頑張れ、ゲルド……)


俺は心の中で、ゲルドにエールを送った。


* * *


祭りも終盤に差し掛かった頃、俺は中央の舞台に立っていた。


「さあ、みんな!今から特別なカクテルを作るぞ!」


俺は、三つの酒瓶を手に取った。エルフの涙のお酒、魔族の甘いお酒、人族のリキュール。


【チートスキル発動:完璧な調合】


俺は、華麗にシェイカーを振った。三種類の酒が混ざり合い、新しい味が生まれる。


それぞれ違う色、違う味、違う文化。でも、混ぜ合わせれば、一つの美味しい酒になる。


「さあ、飲んでみてくれ!」


俺は、作ったカクテルを人族、魔族、エルフ族の代表たちに配った。


「……美味い!」


「本当だ!こんな味、初めてだ!」


「素晴らしい……まるで、三つの種族が一つになったような味だ」


エルフの長老が、感動したように呟いた。


みんなが笑顔になる。そう、種族が違っても、同じ酒を飲めば、同じように美味いと感じる。


その差なんて、大したことない。


* * *


「さあ、俺のチートの宴会芸とくとご覧あれ!」


俺は、ジャグリングを始めた。炎の玉、氷の玉、風の玉……魔法を使った派手な演出。


「おおお!」


観客から歓声が上がる。人族も、魔族も、エルフ族も、みんな同じように驚き、笑っている。


俺は、宴会芸を続けながら思った。


ああ、これだ。これが、俺が作りたかった世界だ。


みんなで笑い合える世界。


種族間交流祭は、大成功のうちに幕を閉じた。

そして俺の活動限界も迎えたみたいだった、


次回予告 31杯目『貴族の酒宴』

※毎日更新予定です。お楽しみに!

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