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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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26/62

26杯目 黒ローブの襲撃

警戒を強めてから三日目の夜。


俺は城の見張り塔で、夜空を見上げていた。


「静かすぎるな……」


呟くと同時に、嫌な予感が背筋を走る。


「アル」


リリアが階段を上がってきた。


「交代の時間よ」


「ああ、ありがとう」


俺は立ち上がろうとした時――


---


ドォォォン!


王都の西門の方角で、巨大な爆発音が響いた。


「始まった……!」


俺は蒸留酒の小瓶を掴んだ。


「アル!」


リリアが魔法陣を展開する。


城の警鐘が鳴り響く中、俺たちは急いで西門へ向かった。


---


「うわっ……」


西門に到着すると、そこには地獄のような光景が広がっていた。


門は半壊し、人族の騎士たちが次々と侵入してくる。


だが、その騎士たちの目は虚ろで、まるで人形のように機械的に動いている。


「やっぱり呪いを受けた人たちか……」


「数は……20人くらいね」


マリアが到着して、すぐに炎の魔法を放つ。


「みんな、行くぞ!」


マーカスが巨剣を構えた。


---


俺は赤いラベルの蒸留酒を一気に飲み干した。


「うおおおお!」


体が光り始める。今回は当たりだ――筋力強化!


「よし!」


俺は呪いを受けた騎士に向かって突進した。


ドガァン!


拳が騎士の胸を貫く。騎士は壁まで吹っ飛んだ。


「効いてる!」


だが、倒れた騎士がゆっくりと立ち上がる。


「え、マジで?」


---


「アル!呪いを受けてる人たちよ!殺しちゃダメ!」


リリアが叫ぶ。


「わかってる!」


俺は困惑した。


呪いを受けた騎士たちは、容赦なく攻撃を仕掛けてくる。


だが、こちらは相手を殺さずに無力化しなければならない。


「めっちゃ難易度高くない!?」


「頑張って!」


「頑張ってじゃねえよ!」


---


リリアは拘束魔法で騎士たちの足を縛り、マリアは氷の魔法で動きを封じている。


マーカスは剣の腹で騎士たちを気絶させていく。


「くそっ、キリがない!」


俺は青いラベルの醸造酒を飲んだ。


体が軽くなる。速度強化だ!


「おっしゃ!」


俺は高速で動き回り、騎士たちの急所を狙って気絶させていく。


---


「いい調子だぞ、アル!」


マーカスが声をかけてくる。


「まあな!」


だが、その時――


ゴゴゴゴゴ……


空気が震えた。


「何だ……?」


---


城門の向こうから、黒い霧が湧き出してくる。


その霧の中から、一人の人影が現れた。


黒いローブを纏い、フードで顔を隠した男。


「ついに……本物が来たか」


俺は身構えた。


---


「よくぞここまで辿り着いた」


黒ローブの男が、低い声で語りかけてくる。


「だが、ここまでだ」


「何が目的だ!」


マーカスが叫ぶ。


「目的?」


男が嗤う。


「この腐った世界を、正すことだ」


---


「腐った世界……?」


マリアが眉をひそめる。


「そうだ。人族、魔族、亜人族……互いに争い、憎しみ合う世界」


「それがどうした!」


「その争いを終わらせる。俺が、全てを支配することで」


黒ローブの男が宣言した。


---


「支配だと……?」


俺は驚いた。


「そうだ。俺の支配下に置けば、無駄な争いは起こらない」


「それって、ただの独裁じゃねえか!」


「独裁で結構。それが最も効率的な統治方法だ」


男の声には、一切の迷いがない。


---


「あなた……何者?」


リリアが警戒しながら尋ねる。


「俺の名は――」


黒ローブの男が、フードを取った。


そこには、30代くらいの男の顔があった。


「タナカ・リヒト」


---


「タナカ……?」


俺は驚いた。


「お前、日本人か!?」


「そうだ。現代日本から来た人間だ。お前と同じな……」


リヒトが冷笑する。


「まさか……」


俺は言葉を失った。そりゃいないとは思ってなかったが目の前にすると驚きを隠せない。しかもそれが、黒幕とくればなおさらだ。


---


「200年前、俺はこの世界に召喚された」


リヒトが語り始める。


「魔王を倒すため、勇者として」


「勇者……?」


マリアが驚愕の表情を浮かべる。


「まさか、あなたが伝説の勇者……!?」


---


「そうだ。俺が魔王ゼクセルと戦った勇者だ」


リヒトが頷く。


「嘘だろ……」


俺は呆然とした。


200年前の勇者が、今も生きている……?


「若返りの禁術を使っている。だから、こうして生きている」


---


「お父さん……」


リーサが震える声で呟いた。


「リーサ?」


俺は驚いてリーサを見る。


「お父さん、なの……?」


リーサの目から涙が溢れる。


「リーサ……久しぶりだな」


リヒトが、少しだけ表情を和らげた。


---


「リーサの父親……って、どういうことだ?」


俺は混乱した。


「リーサは、俺とエルフの女性との間に生まれた子だ」


「ハーフ……」


「そうだ。俺がエルフの里に滞在していた時、彼女の母親と出会った」


リヒトが語る。


---


「お父さん……なんで……」


リーサが泣きながら問いかける。


「なんでこんなことをしてるの……?」


「リーサ、お前にはまだわからない」


「わからないって……」


「この世界は腐っている。だから、俺が正すんだ」


リヒトの目は、狂気を帯びていた。


---


「ちょっと待て」


俺は前に出た。


「お前、本当に勇者だったのか?」


「そうだ」


「じゃあ、なんで今こんなことしてんだよ!」


「200年間、この世界を見続けてきたからだ」


リヒトが冷たく答える。


---


「魔王ゼクセルと戦った」


「全力で戦ったが……倒せなかった」


「引き分けだった」


リヒトの声には、深い絶望が滲んでいた。


---


「引き分け……?」


俺は驚いた。


「そうだ。俺は魔王を倒せなかった」


「勇者として召喚されたのに、役目を果たせなかった」


---


「それで……どうなったんだ?」


「人族の連中は、俺を『役立たず』と罵った」


リヒトの目に、深い憎悪が浮かぶ。


「命懸けで戦ったのに、結果を出せなかったから捨てられた」


---


「捨てられた……」


「そうだ。英雄として称えられるどころか、居場所を失った」


「魔族は俺を恐れ、人族は俺を蔑み、エルフは俺を避けた」


「誰も、俺を必要としなかった」


リヒトの声には、200年分の孤独が詰まっていた。


---


「だから、俺は決めたんだ」


「力で支配する。それしかない」


「全ての種族を、俺の支配下に置く」


「そうすれば、争いは終わる」


リヒトが拳を握りしめる。


---


「それは違う!」


俺は叫んだ。


「支配じゃ、本当の平和は来ない!」


「では、どうする?話し合いか?」


リヒトが嘲笑する。


「そうだよ!話し合いで解決するんだ!」


「愚かだな」


---


「200年間、話し合いなど何度も行われた」


「だが、何も変わらなかった」


「人族と魔族は、つい最近まで戦争をしていたではないか」


リヒトの言葉に、俺は言い返せなかった。


確かに、人族と魔族の戦争は最近まで続いていた。


---


「でも」


俺は続けた。


「今は和平を結んでるじゃないか」


「それは、魔王の娘であるマリアと、人族の王が手を組んだからだ」


「そうだよ。だから、話し合いで解決できるんだ」


「一時的なものだ」


リヒトが断言する。


---


「いずれまた、戦争が始まる。そもそも現代も同じことだろう?お前にはよくわかるはずだ。だから、俺が全てを支配する。そうすれば、戦争は起こらない」


リヒトの論理は、ある意味正しかった。


だが――


---


「それでも、俺は反対だ」


俺は真っ直ぐにリヒトを見つめた。


「支配じゃなくて、共存を目指すべきだ」


「共存など、幻想だ」


「幻想じゃない!」


---


「お父さん!」


リーサが叫んだ。


「お父さんは、昔はもっと優しかった……」


「優しさなど、何の役にも立たない」


「そんなこと……」


「リーサ、お前は俺の娘だ。俺についてこい」


リヒトが手を差し出す。


---


「嫌だ」


リーサが首を振った。


「私は、お父さんのやり方には賛成できない」


「リーサ……」


「お父さんを止める。間違ったことをしてるお父さんを」


リーサの目には、強い意志が宿っていた。


---


「そうか……」


リヒトが悲しそうに呟いた。


「ならば、仕方ない」


リヒトが剣を抜く。


「お前たちを、ここで始末する」


「来るぞ!」


俺は身構えた。


---


リヒトが地面を蹴った。


その速さは、まるで瞬間移動のようだった。


「速っ!」


俺は咄嗟に蒸留酒を飲む。


ガキィン!


リヒトの剣を、俺の強化された腕で受け止める。


---


「ほう……強化系の能力か」


「酒の力だよ!」


「なるほど、それがお前が授かった能力か面白い、がくだらん」


リヒトが笑った。


だが、その笑みには温かみがない。


---



リリアが炎の魔法を放つ。


だが、リヒトは剣を一振りするだけでそれを消し去った。


「な、何!?」


「魔法など、俺には通用しない」


リヒトが言う。


「勇者の加護を受けているからな」


---


「勇者の加護……」


リリアがくやしい顔をする


「くそっ!」


マーカスが突進する。


だが、リヒトは軽々とそれをかわした。


「遅い」


ドゴォッ!


マーカスが50mの岩まで吹っ飛ばされる。


---


「マーカス!」


「大丈夫だ……」


マーカスが立ち上がる。


「だが、強い……」


「当然だ」


リヒトが余裕の表情を浮かべる。


---


「くそっ……」


俺は焦った。


(どうすればいいんだ……?)


黄色いラベルの混成酒を飲んでどうにかなるか?


だが、何が起こるかわからない。


---


「アル!」


リリアが叫ぶ。


リヒトが俺に向かって突進してくる。


「やばっ!」


俺は咄嗟に避ける。


ザシュッ!


服が裂ける。


---


「次は外さない」


リヒトが冷たく言う。


「ちょっ!ちょっと待て!」


俺は必死に声を上げた。


「話し合おうぜ!」


「話し合い?今更何を」


「お前の気持ちは、少しわかったよ」


---


「ほう……」


リヒトが剣を下ろした。


「200年間、世界が変わらないのを見続けてきたんだろ?」


「そうだ」


「それは辛かっただろうな」


俺は続けた。


---


「だが」


「だから、全てを支配するっていうのは、やっぱり違うと思う」


「では、どうすればいい?」


リヒトが問う。


「時間をかけて、少しずつ変えていくんだよ」


---


「時間をかけて……」


「そうだ。今すぐには無理だ。でも、少しずつ変わっていく」


「それに、今は人族と魔族が和平を結んでるじゃないか」


「それも、時間が解決したことだろ?」


俺の言葉に、リヒトが黙り込んだ。


---


「確かに……」


「お前の言う通り、和平は結ばれた」


「だが」


「それが続く保証はない」


「保証なんてないよ。でも、信じるんだ」


---


「信じる……か」


リヒトが呟いた。


「俺は、もう誰も信じられない」


リヒトの目に、深い悲しみが浮かぶ。


---


「魔王を倒せなかった俺は、『役立たず』として扱われた」


「人族は、俺を見捨てた」


「魔族は、俺を恐れ、一部は嘲笑った」


「エルフは、俺を哀れんだ」


「誰も、俺を必要としなかった」


---


「それから200年間、俺は孤独だった」


「居場所もなく、誰にも認められず、ただ生き続けた」


「その間、この世界を見続けてきた」


---


「それは……」


俺は言葉に詰まった。


「だから、俺は決めたんだ」


「もう、誰にも期待しない」


「俺が全てを支配する」


「それだけだ」


リヒトの目は、完全に諦めていた。


---


「お父さん……」


リーサが涙を流す。


「そんな悲しいこと、言わないで……」


「リーサ、お前は知らないんだ」


「この世界の残酷さを」


「知ってるよ!」


リーサが叫んだ。


---


「私だって、差別されてきた!」


「ハーフだからって、人族からもエルフからも避けられた!」


「でも、私は諦めない!」


リーサの言葉が、リヒトに届く。


---


「リーサ……」


リヒトの表情が、少しだけ揺らいだ。


「お前は……強いな」


「お父さんも、昔は強かったでしょ?」


「もう一度、信じてみてよ」


リーサが懇願する。


---


だが、リヒトは首を振った。


「無理だ」


「俺は、もう引き返せない」


「やり直せるって!」


「やり直せない」


リヒトが剣を構え直す。


---


「これ以上、話すことはない」


「今日は引くが、次は容赦しない」


「待て!」


だが、リヒトは黒い霧に包まれた。


「また会おう、アル、リーサ」


そう言い残して、リヒトは消えた。


---


「行っちゃった……」


俺は呆然と立ち尽くした。


呪いを受けた騎士たちも、霧と共に消えていく。


「一体、何だったんだ……」


---


「アル……」


リーサが俺にしがみついた。


「お父さん、あんなに変わっちゃって……」


「大丈夫だ」


俺はリーサの頭を撫でた。


「きっと、元に戻るさ」


---


「本当に……?」


「ああ。絶対に」


俺は力強く頷いた。


だが、内心では不安でいっぱいだった。


(あんな強い相手、どうやって倒せばいいんだ……)


---


「とりあえず、城に戻ろう」


マーカスが言う。


「王に報告しなければ」


「そうだな」


俺たちは、重い足取りで城へと戻った。


---


城では、ルーナ姫と王が待っていた。


「無事だったか!」


「はい。ですが……」


マーカスが報告する。


「黒ローブの正体が判明しました」


---


「何だと!?」


王が驚く。


「タナカ・リヒト。200年前の勇者です」


「勇者だと……!?」


「はい。そして、彼はこの世界を支配しようとしています」


マーカスの報告に、城内が騒然となった。


---


「まさか、あの伝説の勇者が……」


ルーナ姫が信じられない様子だ。


「はい。しかも、若返りの禁術を使っているようです」


「禁術……」


「そして、彼は呪いの魔法で騎士たちを操っています」


---


「なんということだ……」


王が頭を抱える。


「伝説の勇者が、敵になるとは」


「どうすればいいんですか?」


俺は尋ねた。


「わからん……」


王も困惑している。


---


「でも、放っておくわけにはいかないわ」


マリアが言う。


「彼を止めなければ、世界が支配されてしまう」


「そうだな」


リリアも頷く。


「私たちで、何とかしなければ」


---


「でも、どうやって……」


俺は頭を抱えた。


あの強さ。魔法も効かない。


どうすれば勝てるのか。


---


「まずは、情報を集めましょう」


マリアが提案する。


「勇者リヒトについて、もっと詳しく知る必要があるわ」


「そうだな」


マーカスも同意する。


「200年前の記録を調べよう」


---


「私も協力します」


ルーナ姫が言う。


「城の図書館には、古い記録が残っているはずです」


「ありがとうございます」


俺は頭を下げた。


---


「リーサ、大丈夫か?」


俺はリーサに声をかける。


「うん……」


リーサは泣きはらした目をしていた。


「お父さんを、止めなきゃ……」


「ああ。一緒に頑張ろう」


---


その夜、俺たちは遅くまで話し合った。


だが、具体的な策は出てこなかった。


「難しいな……」


「ええ」


みんな疲れ切っていた。


---


「今日はもう休もう」


マーカスが言う。


「また明日、考えよう」


「そうだな」


俺たちは、それぞれの部屋に戻った。


---


部屋に戻った俺は、ベッドに倒れ込んだ。


「はあ……」


ため息が出る。


(勇者が敵って、どういうことだよ……)


---


しかも、リーサの父親。


しかも、俺と同じ日本人。


しかも、200年前に召喚された人間。


「ややこしすぎる……」


---


だが。


俺たちは、リヒトを止めなければならない。


このままでは、世界が支配されてしまう。


「どうすれば……」


考えても、答えは出ない。


---


「とりあえず、寝よう」


俺は目を閉じた。寝なければいい考えも浮かばん。


明日、また考えればいい。


そう思って、眠りについた。


---


次回予告:「勇者の真実」



※毎日更新予定です。お楽しみに!

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