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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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24/61

24杯目 倒れていた騎士



長老との話が終わり、俺たちはエルフの戦士に案内されて、里の外れにある小屋へ向かった。


「ここに、倒れていた騎士が保護されているのか?」


俺は聞いた。


「ああ。まだ意識は戻っていないがな」


戦士が冷たく答える。


(相変わらず警戒されてるな……)


---


小屋の扉を開けると、簡素なベッドに一人の男が横たわっていた。


人族の騎士だ。


鎧は脱がされており、顔色は悪い。


「この人が……」


リーサが不安そうに見つめる。


「ええ。襲撃者の一人よ」


マリアが近づいて、男の額に手を当てた。


「どう?」


「……妙ね」


マリアが眉をひそめる。


「妙って?」


「魔力の痕跡はあるけど、すごく微弱なの。まるで……」


「まるで?」


「まるで、何かが抜けた後みたい」


マリアが呟いた。


---


俺たちが小屋の中で話していると――


「う……」


突然、男が呻き声を上げた。


「あっ、目を覚ましそう」


リーサが気づく。


「本当だ」


俺たちは男のそばに近づいた。


「う……ここは……」


男がゆっくりと目を開ける。


「気がついたか」


俺は声をかけた。


---


「お前は……?」


男は混乱している。


「俺はアル。お前を助けた……まあ、エルフの人たちが助けたんだけどな」


「エルフ……?」


男が周りを見渡す。


部屋の隅には、エルフの戦士が警戒しながら立っている。


「そ、そうか……俺は助けられたのか……」


「ああ。とりあえず、落ち着いてくれ」


俺は言った。


「聞きたいことがあるんだ」


---


「聞きたいこと……?」


「ああ。お前、エルフの里を襲撃したんだろ?」


俺はストレートに聞いた。


「!」


男の顔が青ざめる。


「襲撃……俺が……?」


「そうだ。お前は人族の騎士だろ?エルフの里を襲ったんだ」


「そんな……」


男が頭を抱える。


「覚えてないのか?」


「覚えて……ない……」


男が苦しそうに呟く。


---


「覚えてないって、どういうことだ?」


俺は聞いた。


「わからない……本当に、わからないんだ……」


男が震える声で答える。


「俺は……確か……」


「確か?」


「川……川の風景を見ていた気がする……」


「川?」


「ああ……綺麗な川だった……水が透き通っていて……」


男が遠い目をする。


「それで?」


「それから先は……何も覚えていない……」


「何も?」


「ああ……気づいたら、ここにいた……」


男が呆然と答えた。


---


(川の風景だけ……?)


俺は困惑した。


「他には?何か覚えていることはないか?」


「ない……本当に、何も……」


男が頭を振る。


「名前は?お前の名前は覚えてるか?」


「名前は……ロベルト。俺はロベルトだ」


「ロベルト……他には?」


「他……?いや、それくらいしか……」


男が困惑する。


「職業とか、どこの出身とか……」


「……わからない。ロベルト、という名前だけは確かなんだが……」


「なるほど……」


俺は頷いた。


(名前だけは覚えてる……でも、他は何も……)


---


「ロベルト、最後に覚えているのは、いつのことだ?」


マリアが聞いた。


「最後に……?」


「ええ。川を見ていた時、それはいつのこと?」


「……わからない。日にちも、時間も……全部曖昧なんだ」


ロベルトが苦しそうに言う。


「でも、確かに川を見ていた……それだけは覚えている」


「川か……」


マリアが考え込む。


---


「ねえ、その川ってどこにあったの?」


リーサが聞いた。


「……わからない」


ロベルトが首を振る。


「ただ……すごく静かな場所だった気がする」


「静かな場所……」


「ああ。鳥の声も聞こえなかった……ただ、川の音だけが……」


ロベルトの声が震える。


---


「アル、これ以上は無理みたいね」


リリアが小声で言う。


「ああ……」


俺は頷いた。


(川の風景しか覚えてない……手がかりとしては弱すぎる)


「ロベルト、ゆっくり休んでくれ」


「す、すまない……役に立てなくて……」


ロベルトが申し訳なさそうに言う。


「いや、気にするな」


---


俺たちは小屋の外に出た。


「どう思う?」


俺はマリアに聞いた。


「記憶がほとんど失われている……これは間違いなく、何かの魔法の影響ね」


マリアが真剣な顔で答える。


「魔法……やっぱり操られてたのか?」


「可能性は高いわ。でも……」


「でも?」


「魔力の痕跡が微弱すぎるの。普通、こんなに記憶を奪うような強力な魔法なら、もっと魔力が残っているはずなのに」


「どういうことだ?」


「わからない……まるで、魔力が意図的に消されているような……」


マリアが首を傾げる。


---


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


俺は聞いた。


「もう少し詳しく調べさせてもらえるなら、何か分かるかもしれない」


「詳しく調べる……ってことは?」


「魔力の痕跡を丁寧に追っていくの。時間はかかるけど」


マリアが答える。


「じゃあ、頼めるか?」


「ええ。ロベルトさんに許可をもらえれば」


「よし、じゃあ俺たちは長老のところに戻ろう」


リリアが言った。


「襲撃の時のことを、もっと詳しく聞いてみましょう」


「ああ」


---


こうして、俺たちは二手に分かれることにした。


マリアはロベルトの魔力を調査。


俺とリリアとリーサは、長老のもとへ。


「じゃあ、また後でな」


「ええ。何か分かったら伝えるわ」


マリアが小屋に戻っていく。


俺たちは、長老の家へ向かった。


---


長老の家は、里の中心にあった。


大きな木の下に建てられた、古びた家だ。


「長老様、入ってもよろしいでしょうか」


リーサが扉をノックする。


「おお、入りなさい」


中から、長老の声が聞こえた。


---


部屋の中は、薬草の香りが漂っていた。


長老は、椅子に座ってお茶を飲んでいる。


「どうじゃった?騎士から話は聞けたかの?」


「それが……あまり芳しくなくて」


俺は苦笑いした。


「ほう?」


「ロベルト……あの騎士は、襲撃のことを全く覚えていませんでした」


「全く……か」


長老が眉をひそめる。


「ええ。覚えているのは、川の風景だけだと」


「川……」


「それ以外は、名前と職業くらいで……」


俺は説明した。


---


「やはり……魔法で操られていたか」


長老が呟く。


「長老様も、そう思われますか?」


リーサが聞く。


「ああ。あの時の襲撃者たちの動きは、明らかに異常じゃった」


長老が語り始める。


「異常……ですか?」


「ああ。まるで人形のように、機械的に動いていた」


---


「襲撃の時のこと、詳しく教えていただけますか?」


俺は聞いた。


「うむ……」


長老が遠い目をする。


「あれは、三日前の夜じゃった」


---


「夜……ですか」


「ああ。月も出ていない、真っ暗な夜じゃった」


長老が続ける。


「突然、里の入り口で爆発音がしてのう」


「爆発音……」


「ああ。それと同時に、人族の兵士たちが押し寄せてきた」


「どのくらいの人数でした?」


リリアが聞く。


「30人……いや、40人ほどおったかのう」


「40人……」


「ああ。全員、人族の鎧を着ておった」


---


「それで、どうなったんですか?」


「わしは急いで結界を展開した。じゃが、間に合わず……」


長老が悔しそうに言う。


「里の入り口付近の建物が、焼かれてしもうた」


「……」


「幸い、住民は避難できたがのう」


長老がため息をつく。


「結界を展開した後、奴らは攻撃を止めた」


「止めた……?」


「ああ。まるで、結界に阻まれて諦めたかのように……」


---


「それで、襲撃者たちはどうなったんですか?」


俺は聞いた。


「そのまま森の奥へ消えていった」


「追いかけなかったんですか?」


「追いかけようとしたが……」


長老が首を振る。


「森の中で、奴らの姿は消えた。まるで煙のように」


「煙のように……」


「ああ。不思議じゃった」


長老が呟く。


「そして、翌朝……森の近くで、ロベルトが倒れているのが見つかった」


---


「なるほど……」


俺は考え込んだ。


(襲撃者が消えた……煙のように……)


「アル、どう思う?」


リリアが聞く。


「正直、わからん」


俺は首を振った。


「でも、間違いなく普通の襲撃じゃないな」


「ええ……」


---


「長老様、襲撃者の中に、特徴的な人物はいましたか?」


リーサが聞いた。


「特徴的……か」


長老が考え込む。


「そういえば……一人だけ、違う格好をしていた者がおった」


「違う格好……?」


「ああ。黒いローブを着ていた」


「!」


俺たちは顔を見合わせる。


---


「黒いローブ……やっぱり、黒ローブの連中か」


俺は拳を握った。


「その人物は、何をしていたんですか?」


「襲撃者たちの後ろに立って……ただ、見ているだけじゃった」


「見ているだけ……」


「ああ。まるで、指揮しているかのようじゃった」


長老が答える。


「指揮……」


---


(黒ローブが指揮をしていた……やっぱり、奴らが人族を操っていたのか)


俺は考えた。


「長老様、その黒ローブの人物の特徴は覚えていますか?」


リリアが聞く。


「いや……遠くてよく見えなかった。ただ……」


「ただ?」


「声が聞こえた」


「声……?」


「ああ。低く、冷たい声じゃった」


長老が震える。


「『次は王都だ』と……」


「!」


---


「次は王都……!」


リリアが驚く。


「まさか……」


「奴ら、王都を襲うつもりなのか?」


俺は焦った。


「可能性は高い……」


リーサが不安そうに呟く。


「くそっ……」


俺は頭を抱えた。


---


「とりあえず、情報を整理しよう」


リリアが冷静に言う。


「ああ……そうだな」


俺は深呼吸した。


「まず、襲撃者は人族の騎士たちで、おそらく操られていた」


「ええ」


「黒ローブが指揮していて、次の標的は王都」


「それに、襲撃者たちは森で消えた」


リーサが付け加える。


「消えた……か」


---


「これ、どうすればいいんだ?」


俺は頭を抱えた。


(王都が襲われるかもしれない……でも、いつ襲われるかもわからない……)


「まずは、マリアが何か見つけるのを待ちましょう」


リリアが言う。


「ああ……そうだな」


「それと、王都に連絡を入れた方がいいわ」


「連絡……」


「ええ。マーカスさんとルーナ姫に、状況を伝えないと」


「そうだな……」


俺は頷いた。


---


「長老様、エルフの里から王都へ、連絡手段はありますか?」


リリアが聞いた。


「伝令の鳥がおる」


「伝令の鳥……?」


「ああ。魔法で訓練された鳥じゃ。メッセージを届けてくれる」


長老が答える。


「それ、使わせてもらえますか?」


「もちろんじゃ」


---


こうして、俺たちは王都への警告メッセージを書くことにした。


「えーと……『王都が襲われるかもしれない。警戒してくれ』……で、いいか?」


俺は紙に書きながら言った。


「もうちょっと詳しく書きなさいよ」


リリアがため息をつく。


「じゃあ、お前が書けよ」


「わかったわよ……」


リリアが紙とペンを受け取る。


---


リリアが丁寧に状況を説明した手紙を書き終えると、長老が伝令の鳥を呼んだ。


小さな青い鳥だ。


「この子が、メッセージを届けてくれる」


「頼むぞ」


俺は鳥に手紙を渡した。


鳥は手紙をくわえると、窓から飛び立っていった。


---


「これで、とりあえず王都には伝わるな」


「ええ」


「あとは……マリアが何か見つけてくれることを祈るしかないか」


俺は呟いた。


「そうね……」


---


その時、扉がノックされた。


「入れ」


長老が言う。


扉が開き、マリアが入ってきた。


「マリア!どうだった?」


俺は駆け寄る。


「……ごめんなさい」


マリアが申し訳なさそうに言う。


「魔力の痕跡は見つけたけど……あまりにも微弱で、追跡できなかったわ」


「そうか……」


俺はがっくりと肩を落とした。


---


「でも、一つだけわかったことがあるの」


マリアが続ける。


「何だ?」


「この魔法……使われたのは、かなり高度な術よ」


「高度……?」


「ええ。普通の魔法使いには、絶対に使えないレベル」


マリアが真剣な顔で言う。


「つまり……」


「黒ローブの中に、相当な実力者がいるということ」


---


(相当な実力者……か)


俺は拳を握った。


「なあ、みんな」


俺は仲間たちを見た。


「今後、どうする?」


「今後……?」


「ああ。このままエルフの里にいても、手がかりは見つからない」


「それは……そうね」


リリアが頷く。


「王都に戻った方がいいと思うんだ」


「王都に……」


「ああ。次の襲撃が王都なら、そこで待ち構えた方がいい」


俺は言った。


---


「でも、いつ襲撃があるかわからないわよ?」


マリアが言う。


「それでも、ここにいるよりはマシだろ」


「……そうね」


「長老様、俺たちは王都に戻ります」


俺は長老に向かって言った。


「そうか……すまぬのう」


「いえ、できる限りのことはやります」


俺は答えた。


(本当にできるかわからんけど……)


---


「それじゃあ、準備して出発しよう」


「ええ」


「リーサ、どうする?」


俺はリーサに聞いた。


「私も行きます!」


リーサが即答する。


「……わかった」


---


こうして、俺たちはエルフの里を出発することになった。


黒ローブの次なる標的は、王都――


そこで、必ず奴らを止める。


---


次回予告:「王都への帰還」



※毎日更新予定です。お楽しみに!


アルたちが王都に戻ると、そこには予想外の事態が待っていた!

黒ローブの影が、すでに王都に忍び寄っている……?

緊迫の展開!?次回もお楽しみに!

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