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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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18/60

18杯目 新たな仲間と新たな問題



翌日、俺たちは人族の王城にいた。


「それでは、正式に和平会議を開催いたします」


回復した王が、玉座から宣言する。


広間には、人族と魔族の代表者が集まっていた。


人族側:王、ルンブラン王子、ルーナ姫、マーカス、そして各地の貴族たち。


魔族側:リリア、マリア、そして改心したゲルド。


「まずは、魔界の使節団の皆様に感謝を」


王が立ち上がった。


「我が命を救ってくださった恩、一生忘れません」


「恐れ入ります」


リリアが頭を下げた。


「これは、アルさんがいたからこそ成し遂げられたことです」


だが、広間の空気は重かった。


人族の貴族たちは、魔族の三人を恐れと警戒の目で見つめている。


「陛下……本当に、魔族と和平を結ぶのですか……?」


一人の老貴族が震える声で言った。


「彼らは……我々の敵では……」


「そうです!何百年も戦ってきた相手を、簡単に信じられるはずが……」


別の貴族も立ち上がった。


「それに、王を呪ったのも魔族では……!」


ざわざわと、広間が騒然となる。


人族の貴族たちの顔には、明らかな恐怖と不信感が浮かんでいた。


リリアは悲しそうに俯き、ゲルドは拳を握りしめている。


その時——


「待ってください」


マリアが一歩前に出た。


「王を呪った犯人については、まだ完全には特定できていません」


「何?」


貴族たちがざわめいた。


「ですが」


マリアは毅然とした声で続けた。


「呪いの痕跡を調査した結果、当初は魔族の魔法かと思われましたが……実際には違う可能性が高いのです」


「どういうことだ?」


一人の貴族が尋ねる。


「呪いの構造が、既知の魔族の呪術とは異なっていました。まるで……魔族の呪術に見せかけた、別の何かのような……」


マリアの表情が曇る。


「つまり、真犯人はまだ逃げている可能性があるということか」


マーカスが険しい顔で言った。


「はい。ですが、安心してください」


マリアは頷いた。


「私たちは、その真実を明らかにするため、命がけで調査を続けています」


「で、でも……」


老貴族が反論しようとする。


「それに」


マリアは懐から小さな袋を取り出した。


「王の呪いを解くため、私が自ら聖なる薬草『マナエーテル』を調合しました。この薬草がなければ、王は助からなかったでしょう」


「マナエーテルを……?」


王が驚いた顔をした。


「それは、魔族にとっても非常に貴重な薬草のはず……」


「はい」


マリアは頷いた。


「ですが、無実の罪を着せられた魔族の汚名を晴らすため、そして何より——人族と魔族の和平を実現するため、私は全力を尽くしました」


広間が静まり返った。


「王が倒れた時、マリアさんは誰よりも心を痛めていました」


リリアが涙声で言った。


「『真実を明らかにしなければ、和平は実現しない』と、昼夜問わず調査を続けていたんです」


「それは……」


貴族たちの表情が揺らぐ。


「実際、マリア様がいなければ、王は助からなかったでしょう」


マーカスが前に出た。


「犯人の特定には至っていませんが、マリア様は王を救うため、マナエーテルを使った治療法を見つけ出してくれました」


「そして、呪いが魔族だけの仕業ではないことも突き止めてくれた」


ルンブラン王子が頷く。


「つまり……何者かが、人族と魔族を争わせようとしている可能性があるということだ」


「マーカス……」


「私も最初は、魔族を信じられない時期がありました」


マーカスは広間を見回した。


「しかし、この数週間、彼らと共に過ごして確信に変わりました。魔族も人族も、同じように苦しみ、同じように笑い、同じように誰かを大切に思う——何も変わらないのだと」


貴族たちは黙って聞いていた。


「恐怖は理解から生まれません。無知から生まれるのです」


マーカスは力強く言った。


「我々が魔族を恐れるのは、彼らを知らないからです。だからこそ、今こそ——互いを知る時なのです」


しばらくの沈黙の後——


「……そうか」


老貴族が深いため息をついた。


「我々は、何も知らずに恐れていただけなのかもしれん……」


「マリア殿」


別の貴族が立ち上がった。


「王を救ってくださり、ありがとうございます」


その貴族は、深々と頭を下げた。


「私も……魔族の方々を誤解していました。申し訳ありません」


一人、また一人と、貴族たちが頭を下げ始めた。


マリアの目から、涙がこぼれた。


「皆さん……」


王が俺を見た。


「お前のような人族がいるとは、驚きだ」


「いや、俺は別に大したことしてないですよ」


俺は頭を掻いた。


「本当に頑張ったのはマリアさんですから」


「そうだな」


王は立ち上がり、マリアに近づいた。


「マリア殿。あなたの献身に、心から感謝します」


王はマリアの手を取った。


「あなたのような方がいる限り、人族と魔族の和平は必ず実現する」


「陛下……ありがとうございます……」


マリアは涙を拭った。


広間に、温かい拍手が響き渡った。


恐怖と警戒に満ちていた空気が、少しずつ和らいでいく。


「ただし」


王は表情を引き締めた。


「真犯人の捜索は続けなければならない。人族と魔族を争わせようとする者が、まだどこかに潜んでいる可能性がある」


「はい」


マーカスが頷いた。


「両国で協力して、調査を進めましょう」


「よし、話はここまでだ!今夜は盛大に祝宴を開こう!」


王が号令をかける


「酒飲めますか!?」


俺の目が輝いた。


「もちろんだ!この王国最高の酒を用意させよう!人族に伝わる『エルフの涙』『ドワーフのエール』も出そうではないか!」


「やった!」


リリアが呆れた顔をしている。


「アル……結局、酒ですか……」


「だって、酒は大事だろ?」


「まあ、そうですけど……」


---


その夜、盛大な祝宴が開かれた。


「おお!これが『エルフの涙』か!」


俺は透明な液体をグラスに注いだ。


「アル殿、それは非常に強い酒ですぞ」


マーカスが注意してくれた。


「一滴で酔えると言われるほどで……」


グビッ


俺は一気に飲み干した。


「うん!美味い!」


「え!?」


マーカスが驚いている。


「なんともないのか!?」


「まあ、ちょっと強いけど」


俺はケロッとしていた。


「もう一杯いけるな」


「信じられん……」


マーカスは完全に呆れていた。


「お前、どれだけ酒が強いんだ」


「まあ、酒飲みですから」


---


「アル!こっちに来て!」


突然、ルーナが俺の腕を引っ張った。


「え、ちょっと」


「この料理、食べてみて!すごく美味しいのよ!」


ルーナは満面の笑みで、俺に料理を差し出す。


「お、おう……ありがとう」


俺が料理を口に運ぶと、ルーナは嬉しそうに笑った。


「どう?美味しい?」


「うん、美味しいよ」


「そうでしょ!私が特別に選んだのよ!」


ルーナは誇らしげだ。


その様子を、少し離れた場所からリリアが見ていた。


「……」


リリアの角が、わずかに赤く染まっている。


「リリア、大丈夫?」


マリアが心配そうに尋ねる。


「……別に、なんともありません」


リリアはそっぽを向いた。


「そう?でも、顔が赤いわよ」


「気のせいです!」


リリアは少しムッとした顔で、アルの方を見た。


「アル!次はこのワインを!」


ルーナが別のグラスを差し出す。


「これは王家秘蔵の……」


「あ、アル!」


リリアが慌てて駆け寄ってきた。


「こ、こっちの魔界ワインの方が美味しいですよ!」


リリアも別のグラスを差し出す。


「え、えっと……」


俺は二人に挟まれて、完全に固まった。


「アル、どっちを飲む?」


ルーナが笑顔で尋ねる。


「アル、当然こっちですよね?」


リリアも笑顔だが、目が笑っていない。


「え、えーと……」


俺は冷や汗をかいた。


「両方飲めばいいんじゃないかな……?」


「「それもそうね/ですね」」


二人は同時に答えた。


そして、お互いを見て、バチバチと火花を散らす。


「……ルーナ姫、アルを独占しすぎではないですか?」


「あら、リリアさんこそ。私、ただアルと仲良くしてるだけよ?」


「仲良く……って、あからさまに……」


「あからさま?何がかしら?」


ルーナはニコニコしている。


「む……」


リリアは言葉に詰まった。


「ほら、アル。一緒に踊りましょう?」


ルーナが手を差し出す。


「え、踊る?」


「アル!私とも踊ってください!」


リリアも手を差し出す。


俺は完全に板挟みだ。


「……助けて」


俺は小声でマーカスに助けを求めた。


「はっはっは!若いっていいなぁ!」


マーカスは笑ってるだけだった。


役に立たねぇ……


「じゃあ、二人とも順番に踊ればいいじゃん」


「「順番!?」」


二人は不満そうだ。


「まあまあ、喧嘩すんなって」


俺は二人をなだめた。


「今日はめでたい日なんだし、楽しくやろうぜ」


「……そうね」


「……わかりました」


二人は渋々納得した。


でも、お互いを見る目は相変わらずバチバチしていた。


(なんか、面倒なことになってきたな……)


俺は心の中でため息をついた。


---


宴もたけなわとなった頃、マリアが俺に近づいてきた。


「アル、少しいいかしら」


「ん?どうしたの?」


「実は……気になることがあって」


マリアは真剣な顔をしていた。


「王を呪った犯人のことよ」


「ああ、まだ捕まってないんだよな」


「ええ。それに、呪いの痕跡がどうも引っかかるの」


マリアは腕を組んだ。


「魔族の魔法のようで、でも違う。まるで、誰かが意図的に魔族の仕業に見せかけたような……」


マリアは暗い表情をした。


「今は和平が結ばれたけど……油断はできないわ」


「そっか……」


俺は考え込んだ。


「まあ、なんとかなるでしょ」


「……あなた、本当に楽観的ね」


マリアは苦笑した。


「でも、そういうところ……嫌いじゃないわ」


「おっ、褒められた」


「調子に乗らないの」


マリアは笑った。


その時——


広間の扉が開き、一人の兵士が駆け込んできた。


「報告します!魔界の国境付近で、魔獣の群れが確認されました!」


「魔獣?」


王が眉をひそめた。


「はい。数は多くありませんが、通常より強化されているようで……」


「……また、こんな時に」


マーカスが呟いた。


「とりあえず、警戒を強化しておいてくれ」


王が指示を出す。


「はっ!」


兵士は退室した。


「……嫌な予感がするわね」


マリアが呟いた。


俺も同じことを思っていた。


この平和が、いつまで続くのか——


---


宴会はそのまま深夜まで続いた。


俺はエルフの涙とドワーフのエールを心ゆくまで堪能し、すっかり酔っ払っていた。


「アル、もう飲みすぎです……」


リリアが心配そうに俺を見ている。


「だいじょーぶだいじょーぶ」


俺はヘラヘラと笑った。


「明日からまた頑張ればいいんだしー」


「もう……」


リリアは呆れている。


その隣で、ルーナもクスクスと笑っていた。


「本当、アルって面白いわね」


「あ、ありがと……?」


俺は適当に返事をした。


「それじゃあ、私はそろそろ休みますね」


マリアが立ち上がった。


「明日、魔界への報告書を書かなければならないので」


「お疲れ様です、マリア様」


リリアが頭を下げた。


「ゲルドも、早く休みなさい」


「はい……」


ゲルドも立ち上がり、部屋に戻っていった。


こうして、長い一日が終わった。


人族と魔族の和平——それは小さな一歩だったが、確かな一歩だった。


だが、まだ見えない影が、この平和を脅かそうとしている。


俺は酔った頭でぼんやりと考えていた。


(まぁ明日の俺がなんとかするさ)


そう思いながら、俺は眠りについた。


---


次回予告:「酔っぱらいの本気」


※毎日更新予定です。お楽しみに!

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