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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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17/62

17杯目 捕らわれの酔っぱらい



「うー……頭痛い……」


俺は目を覚ました。


見慣れない石造りの天井。


「ここは……?」


体を動かそうとすると、両手が鎖で縛られている。


「あー、捕まったんだっけ」


俺は状況を思い出した。ゲルドの配下に殴られて、気絶して——


「目が覚めたか、人族」


暗闇の中から、声が聞こえた。


ゲルドだ。


「よう。ここどこ?」


「王都の地下下水道だ」


ゲルドが松明を持って近づいてくる。湿った空気と、どこか腐臭が漂っている。


「リリアは逃げたぞ。お前の作戦通りにな」


「そりゃ良かった」


俺は安堵のため息をついた。


「で、俺をどうするつもり?」


「さあな。まだ決めていない」


ゲルドは俺の前に座り込んだ。


「お前、面白い奴だな」


「は?」


「捕まってるのに、全然怖がっていない」


「だって、怖がったところで状況変わらないし」


俺は肩をすくめた。


「それに、お前が俺を殺すつもりなら、とっくに殺してるでしょ」


ゲルドは黙り込んだ。


「図星か」


「……フン」


ゲルドは顔をそむけた。


「別に、お前に同情しているわけではない」


「じゃあ、なんで生かしてるの?」


「それは……」


ゲルドが口ごもる。


「人質にするため、だ」


「嘘つけ。人質なら、もっとちゃんと拘束するだろ」


俺は鎖を軽く揺らした。


「この鎖、結構ゆるいぞ」


「う、うるさい!」


ゲルドが慌てて立ち上がった。


「お前は黙って座ってろ!」


「はいはい」


俺は苦笑した。


なんか、こいつ可愛いな。


---


数時間後。


ゲルドが食事を持ってきた。


「ほら、食え」


「おお、ありがとう」


俺はパンとスープを受け取った。


「意外と優しいんだな」


「別に優しくなんか……」


ゲルドはまた顔をそむけた。


「餓死されたら困るだけだ」


「ふーん」


俺はスープを飲みながら、ゲルドを観察した。


黒いローブに身を包み、鋭い目つき。いかにも悪役っぽい見た目だが——


「なあ、ゲルド、男のツンデレは気持ち悪いぞ」


「ツ、ツンデレじゃない!」


ゲルドが顔を真っ赤にして叫んだ。


「俺はただ……その……戦略的に……」


「戦略的に飯を食わせる?」


「そ、そうだ!栄養失調で死なれたら困る!」


「ふーん。じゃあ、この鎖がゆるゆるなのも戦略?」


「それは……!ええい、うるさい!」


ゲルドは慌てて顔をそむけた。


「だ、大体お前が勝手に決めつけてるだけだ!俺は別に優しくなんか——」


「はいはい、わかったわかった」


俺は笑いながらスープを飲んだ。


「でもさ、素直になった方が楽だぞ?」


「素直って何がだ!」


「だって、お前本当は悪い奴じゃないだろ?」


「……は?」


ゲルドが驚いた顔をした。


「だって、捕虜に飯食わせるし、鎖もゆるいし、リリアのことも本気で追わなかった」


「それは……」


ゲルドは言葉に詰まった。


「つーか、さっきから言い訳ばっかりしてるし。素直に『気になってた』って言えばいいのに」


「き、気になってなんか——!」


「ほら、また顔真っ赤」


「う、うるさい!」


ゲルドは完全に狼狽えていた。


その様子があまりにも面白くて、俺は思わず吹き出した。


「あはは!お前、意外と可愛いな!」


「か、可愛いとか言うな!俺は恐ろしい魔族だぞ!」


「全然怖くないけど」


「ぐっ……」


ゲルドは完全に打ちのめされた様子で、その場にしゃがみ込んだ。


「……お前、何なんだ……」


「ん?」


「俺を……笑わせようとしてるのか?」


「別に。でも、暗い顔してるより笑ってた方がいいだろ?」


俺は真面目な顔で言った。


「お前、本当は悪い奴じゃないんだから、そんなに自分を責めなくていいんだよ」


「それは……」


「お前、本当は何がしたいんだ?」


俺は真剣な顔で尋ねた。


ゲルドは黙り込んだ。


しばらく沈黙が続いた後——


「……復讐だ」


ゲルドが小さく呟いた。


「復讐?」


「ああ。人族への、復讐だ」


ゲルドは拳を握りしめた。


「俺の家族は、人族との戦争で殺された」


「……そうか」


「だから、俺は人族を憎んでいる。全員、苦しめばいいと思っている」


ゲルドの声が震えている。


「でも……」


「でも?」


「お前を見ていると……よくわからなくなる」


ゲルドは俺を見た。


「お前は人族なのに、リリアを守るために自分が犠牲になった」


「まあ、そうなるかな」


「人族は魔族を憎んでいるはずだ。なのに、お前は……」


ゲルドは言葉に詰まった。


俺は少し考えてから、口を開いた。


「なあ、ゲルド。俺も家族を亡くしたことがある」


「何?」


「まあ、事故だったんだけどさ。親父とお袋、一緒に死んじゃってさ」


俺は天井を見上げた。


「最初はすごく辛かった。誰かを恨みたかった。でも、恨んだところで、二人は帰ってこない」


「……」


「だから、俺は決めたんだ。過去を引きずるより、今を楽しもうって」


俺はゲルドを見た。


「お前の家族を殺した人族は、確かに許せないかもしれない。でも、全ての人族が敵ってわけじゃないだろ?」


「それは……」


「お前だって、本当は気づいてるんじゃないのか?復讐しても、何も変わらないって」


ゲルドは黙り込んだ。


その表情は、苦しそうで——どこか寂しそうだった。


「……お前は、変わった奴だな」


ゲルドがぽつりと呟いた。


「よく言われる」


「なぜ、そんなに楽観的でいられる?」


「だって、暗い顔してても仕方ないじゃん」


俺は笑った。


「それに、酒があれば大抵のことは楽しくなる」


「酒?」


「そう。酒飲んで、美味いもん食って、笑って過ごす。それが俺の人生訓」


「くだらない……」


ゲルドは呆れたように言った。


「でも……」


「でも?」


「少し、羨ましい」


ゲルドは小さく笑った。


「俺も、そんな風に生きられたら良かった」


「今からでも遅くないよ」


「……そうかもな」


ゲルドは立ち上がった。


「少し、考えさせてくれ」


「おう」


ゲルドが部屋を出ていく。


俺は一人、牢屋に残された。


「まあ、なんとかなるだろ」


俺はいつもの口癖を呟いた。


---


その頃、王都では——


リリアが王城に到着していた。


「マナエーテルを……持ってきました……!」


息を切らしながら、リリアが袋を差し出す。


「リリア!無事だったのか!」


マリアが駆け寄ってくる。


「はい……でも、アルが……」


リリアの目から涙がこぼれる。


「アルは、私を逃がすために……」


「落ち着け、リリア」


マーカスが肩に手を置いた。


「詳しく聞かせてくれ」


リリアは、山での出来事を全て話した。


マナエーテルを手に入れたこと。


ゲルドに襲われたこと。


そして、アルが捕まったこと。


「……そうか」


マーカスは拳を握りしめた。


「必ず、アル殿を救出する」


「私も行きます!」


リリアが立ち上がった。


「待て、リリア」


マリアが止めた。


「まずは、王様にマナエーテルを届けなければ」


「でも……」


「それがアルの望みだ」


マリアは優しく言った。


「彼は、お前を信じて逃がしたんだ。その想いを無駄にするな」


「……はい」


リリアは涙を拭った。


---


王の寝室。


衰弱した王が横たわっている。


「王様、マナエーテルを持ってきました」


リリアが袋を開けた。


淡く青白い光を放つ薬草。


「これは……」


王の目が見開かれた。


「本物のマナエーテルか……」


マリアが薬草を調合し、王に飲ませる。


すると——


王の顔色がみるみる良くなっていく。


「おお……体が、軽くなる……」


王はゆっくりと起き上がった。


「信じられん……こんなに早く効くとは……」


「王様!」


ルンブラン王子とルーナ姫が駆けつけてきた。


「父上!」


「ルーナ、ルンブラン……」


王は二人を抱きしめた。


「すまなかった。お前たちに、辛い思いをさせて……」


「いえ、父上が無事で……」


王子と姫の目から涙がこぼれた。


リリアたちは静かに部屋を出た。


---


廊下で、マーカスがリリアに尋ねた。


「ゲルドたちの居場所は、わかるか?」


「いえ……でも、魔力の痕跡を辿れば……」


「ならば、すぐに準備を」


マーカスが言いかけた時——


「待ってください!」


ルンブラン王子が駆けてきた。


「私も、行きます」


「王子!?」


「アル殿は、私たちの恩人です。その方が囚われているのに、何もしないわけにはいきません」


王子は決意を固めていた。


「私も行くわ」


ルーナ姫も現れた。


「あなたたちでは、人手が足りないでしょ?」


「しかし、姫様方が危険な場所に……」


マーカスが反対しようとする。


「大丈夫よ。私、結構強いんだから」


ルーナがニヤリと笑った。


「それに、アルを助けるためなら、危険も覚悟の上よ」


「……わかりました」


マーカスは頷いた。


「では、全員で救出に向かいます」


---


一方、牢屋の中——


「暇だなー」


俺は天井を見つめていた。


「酒でも飲みたいな」


その時、ゲルドが戻ってきた。


「よう」


「……お前に、聞きたいことがある」


ゲルドは真剣な顔をしていた。


「何?」


「もし、お前が俺の立場だったら、どうする?」


「俺の立場?」


「ああ。家族を殺され、復讐しか考えられなくなったら……」


ゲルドは俯いた。


「お前なら、どうする?」


俺は少し考えてから、答えた。


「多分……酒を飲む」


「は?」


「で、美味い飯を食って、ぐっすり寝る」


「……それだけか?」


「そうだな。あとは、新しい仲間を作る」


俺は笑った。


「一人で抱え込むより、誰かと一緒にいた方が楽だし」


「仲間……」


ゲルドは呟いた。


「お前、仲間いないのか?」


「配下はいるが……仲間、ではないな」


「だったら、作ればいいじゃん」


「簡単に言うな」


ゲルドは苦笑した。


「でも……少し、気が楽になった」


「そりゃ良かった」


その時——


ドカーン!


下水道の壁が爆発した。


「な、何だ!?」


ゲルドが驚いて立ち上がる。


「アル!」


リリアの声が聞こえた。


「リリア!?」


俺も驚いた。


もう戻ってきたのか!?


「救出に来たぞ、アル殿!」


マーカスの声。


「アル!大丈夫!?」


ルーナの声。


「待っててください!今助けます!」


ルンブラン王子の声。


「うわ、マジで来たのか……」


俺は呆然とした。


ゲルドは慌てて剣を抜いた。


「くっ……こんなに早く見つかるとは……」


「ゲルド」


俺は彼を呼び止めた。


「どうする?戦うのか?」


「それは……」


ゲルドは迷っていた。


「お前、本当は戦いたくないんだろ?」


「……ああ」


ゲルドは剣を下ろした。


「もう、疲れた」


「だったら——」


俺は鎖を引きちぎった。


「え?」


「酒飲んだ時の力、まだ少し残ってたみたい」


俺はゲルドの肩を叩いた。


「一緒に出ようぜ。みんなに謝ればいい」


「でも、俺は……」


「大丈夫。なんとかなるって」


俺は笑った。


ゲルドは少し考えてから、小さく頷いた。


「……わかった」


---


牢屋の扉を開けると、そこにはリリアたちがいた。


「アル!」


リリアが駆け寄ってくる。


「無事でしたか!?」


「おう、平気平気」


俺はリリアの頭を撫でた。


「ゲルド!」


マーカスが剣を構える。


「待って!」


俺は二人の間に割って入った。


「こいつ、もう戦う気はないから」


「何?」


みんなが驚いた顔をする。


「待ってください、マーカス殿」


ルンブラン王子が前に出た。


「実は……王都で起きた呪いの事件について、調査が進みました」


「何?」


マーカスが驚いた顔をする。


「犯人は、ゲルドではありませんでした」


「本当ですか!?」


リリアが声を上げた。


「はい。呪いの魔力を詳しく分析した結果、別の魔族の仕業だと判明しました。ゲルドの配下だと思われていた者たちは、実は彼の名を騙った別組織だったようです」


「そんな……」


マリアが呟いた。


「つまり、ゲルドは濡れ衣を着せられていた……?」


「そういうことになります」


ゲルドは深々と頭を下げた。


「……すまなかった」


「ゲルド……」


マリアが複雑な表情をする。


「お前、本気で反省しているのか?」


「ああ」


ゲルドは顔を上げた。


「俺は、マリア様の保守派を裏切り、過激な行動に走った。それは事実だ。呪いの件は濡れ衣だったが……人族との和平を妨害しようとしたことは間違っていた。復讐では何も生まれない」


「……そうか」


マリアは剣を収めた。


「ならば、罪を償え」


「はい」


ゲルドは素直に頷いた。


「ちょっと待って」


ルーナが前に出た。


「あなた、本当に改心したの?」


「ああ」


「なら、証明しなさい」


ルーナは挑戦的な目でゲルドを見た。


「これから、私たちと一緒に働きなさい。民衆のために」


「え?」


ゲルドが驚いた。


「罪を償うって、そういうことでしょ?」


ルーナは笑った。


「牢屋に入れても意味ないわ。それより、良いことをして償いなさい」


「姫様……」


ゲルドは目を潤ませた。


「……ありがとうございます」


「よし、決まりだな」


俺は満足そうに頷いた。


「じゃあ、帰ろうぜ。酒飲みたい……」


「アル、あなたって本当に……」


ルーナが呆れたように笑った。


「でも、それがあなたらしいわね」


---


帰り道。


リリアが俺の隣を歩きながら、小声で尋ねた。


「アル……怖くなかったんですか?」


「ん?何が?」


「捕まってた時です」


「ああ。まあ、ちょっとは怖かったかな」


俺は笑った。


「でも、お前が無事に逃げられたって聞いて、安心した」


「アル……」


リリアの角が真っ赤に染まった。


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


俺はリリアの頭を軽く撫でた。


「それより、王様は大丈夫だったのか?」


「はい!マナエーテルのおかげで、完全に回復しました!」


「マジ?良かった」


「これも、アルのおかげです」


リリアは嬉しそうに笑った。


後ろでは、ゲルドがマリアと何か話している。


マーカスとルンブラン王子も、和やかに会話していた。


ルーナは俺の背中を見つめながら、小さく微笑んでいた。


俺は心の中で呟いた。


なんとかなるもんだ、本当に。


---


次回予告:「新たな仲間と新たな問題」

最後までお読みいただきありがとうございます

読んでくださる皆様のアクセスが増えてきており、すごく励みになってます!

ゲルドが仲間になってしまいました最初の構想ではこうなる予定ではなかったのですが。。。(笑)

引き続きゆっくり楽しんでいってください!

感想やリアクションなどもお待ちしております!

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