表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/62

16杯目 マナエーテルを求めて



「聖なる癒しの薬草、通称マナエーテルか……」


宿の部屋で、俺は古びた地図を広げていた。


マーカスが王城の書庫から持ってきてくれたものだ。


「この山の頂上付近の洞窟にあるらしい」


マーカスが地図の一点を指差す。


「王都から徒歩で五日。険しい道のりだ」


「五日……」


リリアが不安そうに呟く。


「大丈夫だ。なんとかなるでしょ」


俺は地図を畳んだ。マナエーテルの採取は問題ないと思うがそんなことより、大事な問題が発生している


「それより、街の呪いの件はどうなった?」


「マリア様が治療にあたっています」


マーカスが答えた。


「幸い、命に別状はありません。ただ……」


「ただ?」


「呪いの痕跡が複雑で、完全に解くには時間がかかるようです」


「犯人の手がかりは?」


「今のところ、何も」


マーカスは苦い顔をした。拳を握りしめる音が聞こえてくる


「しかし、これほどの呪いを使える者は限られています。おそらく……」


「魔族の誰かってことか」


俺は医者でも何でもないし、魔力にも精通しておらず力になれなさそうだ


「アル殿」


マーカスが真剣な表情で言った。


「薬草を取りに行く間、王都は無防備になります」


「そうだな……」


俺は考え込んだ。


「マーカス、お前とマリアは王都に残れるか?」


「私たちが、ですか?」


「ああ。呪いの犯人を突き止めてほしい。それに、ルンブラン王子とルーナ姫の警護も頼む」


マーカスとマリアが顔を見合わせた。


「しかし、アル殿たちの護衛は——」


「大丈夫だ」


俺は言い切った。


「リリアと二人で行く。俺にも少しは力があるし、なんとかなるだろ」


「アル……」


リリアが不安そうに俺を見る。


「でも、危険です」


マリアが反対した。


「山には強力な魔物がいます。二人だけでは——」


「だからこそ、マーカスとマリアは王都に残ってほしい」


俺は真剣な顔で続けた。


「呪いの犯人が動いている。王子と姫を守らなきゃいけない、それに呪いについては俺は力になれなさそうだしな」


「……わかりました」


マーカスが頷いた。


「マリア様、我々で呪いの犯人を必ず捕らえ、王子様と姫様をお守りしましょう」


「はい」


マリアも決意を固めた。


「アル殿、リリアを頼みます」


「任せとけ」


---


「では、行きましょうか」


俺はリリアに声をかけた。


「いってきます!」


リリアが元気よく手を振る。


「気をつけて!」


マーカスとマリアが見送ってくれた。


こうして、俺たちは王都を後にした。


---


旅は意外と順調だった。


「地図によると、あと二日で山の頂上です」


リリアが地図を確認する。


「マナエーテルは、頂上付近の洞窟にあるらしいですね」


「洞窟か……なんか出てきそうだな」


「魔物の気配もあります。気をつけましょう」


俺たちは警戒しながら山を登っていった。


途中、小型の魔物には何度か遭遇したが、リリアの魔法で簡単に倒せた。


「リリア、やっぱ強いな」


「これくらい当然です!」


リリアの角がほんのり赤く染まる。


---


そして、四日目の夜。


「明日の昼には頂上です」


リリアが焚き火を囲みながら言った。


「よし。じゃあ明日、一気にマナエーテルを手に入れて帰ろうぜ」


「はい!」


リリアは嬉しそうに笑った。


だが、その夜——


「……アル」


リリアが小さく呼びかけてきた。今までアルさんだったのにだいぶ仲良くなれたみたいだ


「ん?」


「もし、洞窟に強力な魔物がいたら……」


「その時は、俺の欠陥チートで何とかする」


「欠陥チート?」


「ああ。酒飲んだら強くなるやつ」


まぁランダムだけど何回か試せば当たりがでるだろう俺は笑った。


「でも、起きてる敵と戦うのは面倒だから、できれば寝てるうちに取って帰りたいな」


「寝てるうちに……」


リリアがクスクス笑った。


「アルらしいです」


---


翌日。


ついに、頂上付近の洞窟に到着した。


「ここです!」


リリアが洞窟の入口を指差す。


「入りましょう」


「おう」


洞窟の中は暗く、冷たい空気が流れている。


「何かいるな……」


俺は剣を抜いた。


「はい。強力な魔力を感じます」


リリアも杖を構える。


奥に進むと——


そこには、巨大なドラゴンが眠っていた。


全長十メートルはある、漆黒の体。


「アイスドラゴン……!」


リリアが小声で囁いた。


「あれが……番人なんですね」


「マジかよ……でかいな」


俺は冷や汗をかいた。


そして、ドラゴンのすぐそばに——淡く光る薬草が生えていた。


「あれがマナエーテルです!」


リリアが指差す。


「でも、あんなに近くに……」


「寝てるみたいだけど、近づいたら起きるよな」


「おそらく……」


リリアは困ったような顔をした。


「どうしましょう……」


俺は考え込んだ。


(酒を飲めば、戦えるかもしれない……でも、勝てる保証はないし、それより――)


「よし」


俺は腰に下げた小さな酒瓶を取り出した。


「これを飲んで、そっと取ってくる」


「え?」


「酒飲んだら、多分体が軽くなって、足音立てずに動けると思うんだよな」


「そんな使い方が……」


リリアが驚いた顔をする。


「まあ、やってみるよ」


俺は何回か酒をのんで当たりの能力がでるまで試す


ゴクリ。


「……おお」


体が軽くなる。


視界がクリアになり、体の感覚が研ぎ澄まされていく。


「これならいける」


俺はゆっくりと、音を立てないようにドラゴンに近づいていった。


一歩、また一歩。


ドラゴンの寝息が聞こえる。


「グゴォ……グゴォ……」


(頼む、起きないでくれ……)


俺はドラゴンのすぐそばまで近づき、マナエーテルの薬草に手を伸ばした。


そして——


「……取れた!」


小声で叫ぶ。


リリアが入口で固唾を飲んで見守っている。


俺はゆっくりと、慎重に後ずさった。


一歩、また一歩。


だが——


ガラッ!


足元の小石が転がった。


「しまった!」


ドラゴンの目が開いた。


「グルルル……」


「やべえ!」


俺は全速力で走った。


「リリア!逃げるぞ!」


「はい!」


リリアと一緒に洞窟を駆け出す。


「グオオオオオ!」


ドラゴンが咆哮し、炎を吐いてきた。炎!?


「うおっ!アイスドラゴンじゃないのかよぉぉぉ!」


俺たちは必死に逃げた。


だが、ドラゴンは追ってこない。


「あれ?」


振り返ると、ドラゴンは洞窟の入口で止まっていた。


まるで、結界でもあるかのように。


「洞窟の外には出られないみたいですね……」


リリアが息を切らしながら言った。


「そっか……ラッキーだったな」


俺はマナエーテルを確認した。


淡く青白い光を放つ美しい薬草。


「これがマナエーテル……」


リリアが息を切らしながら説明してくれた。


「マナエーテルは、どんな万病も治すと言われている伝説の薬草です。魔力に満ち溢れる場所でしか採取できません」


「だから、あんなドラゴンが守ってたのか」


「はい。強大な魔力を持つ魔物が棲む場所こそが、マナエーテルが生まれる条件なんです」


俺は薬草を大事に袋にしまった。


「よし!これで王様を救える!」


「はい!」


リリアが嬉しそうに笑った。


---


帰り道。


俺たちは急いで山を下っていた。


「このままいけば、三日で王都に戻れます」


リリアが地図を確認する。


「よし。早く届けないとな」


だが——


「……アル」


リリアが突然立ち止まった。


「どうした?」


「前方に……強い魔力を感じます」


リリアの顔が青ざめている。


「魔物か?」


「いえ……魔族です。しかも複数」


「え?」


その瞬間——


茂みから、複数の魔族が現れた。


全員、黒いローブを纏っている。


そして、先頭に立つのは——


「ゲルド……!」


リリアが叫んだ。


「フフフ……よく覚えていてくれたな」


ゲルドが不敵に笑う。


「マナエーテルを手に入れたようだな」


「お前……何の目的で!」


俺は剣を抜いた。


「目的?簡単なことだ」


ゲルドが指を鳴らすと、配下の魔族たちが一斉に襲いかかってきた。


「くそっ!」


俺は剣を構えたが、酒の効果はもう切れている。


「アル!」


リリアが魔法で援護してくれる。


だが、相手の数が多すぎる。


「リリア!」


俺は叫んだ。


「お前はマナエーテルを持って逃げろ!」


「え!?」


「王様にマナエーテルを届けるのが最優先だ!」


俺は必死に敵を食い止めようとした。


「でも……アルが……!」


「大丈夫!俺はなんとかする!」


「アル……」


リリアの瞳に涙が浮かぶ。


「……わかりました」


リリアは決意を固めた。


「必ず、助けに戻ってきます!」


リリアは全速力で走り出した。


「待て!」


ゲルドが追おうとするが、俺が立ち塞がる。


「お前の相手は俺だ!」


「……フン。邪魔な奴だ」


ゲルドが手を振ると、配下の魔族たちが俺を取り囲んだ。


「捕らえろ」


「くそっ!」


俺は抵抗したが——


ドガッ!


背後から殴られ、意識が遠のいていった。


「アル……ごめんなさい……」


遠くでリリアの声が聞こえた気がした。


---


その頃、王都では——


マーカスとマリアが、呪いの犯人を追っていた。


「この魔力の痕跡……間違いない」


マリアが地面を調べている。


「ゲルドの配下です」


「やはり……」


マーカスは拳を握りしめた。


「必ず捕らえます」


---


そして——


リリアは必死に王都へ向かって走っていた。


涙を流しながら。


「アル……待っててください……必ず助けに戻りますから……!」


リリアの手には、マナエーテルが握られていた。


---


次回予告:「捕らわれの酔っぱらい」

最後までお読みいただきありがとうございます

読んでくださる皆様のアクセスが増えてきており、すごく励みになってます!

お酒でも飲みながらゆっくり楽しんでいただけたらうれしいです。

感想やリアクションなどもお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ