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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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15/61

15杯目 王城の調停者

翌朝、マーカスが宿に迎えに来た。


「準備はいいか?」


「おう」


俺は軽く頷いた。


リリアとマリアは角を魔法で隠している。


「緊張しますね…」


リリアが不安そうに呟く。


「まあ、なんとかなるでしょ」


「アル殿は相変わらず気楽ですね」


マーカスが苦笑いした。


「だって、緊張しても仕方ないじゃん」


俺たちは城へ向かって歩き出した。


王都の朝は活気に満ちている。市場では商人たちが声を張り上げ、子供たちが走り回っている。


「でも、まだ貧しい人も多いんだな」


道端で物乞いをしている人々の姿が見える。


「ああ。王位継承問題で政治が混乱している影響だ」


マーカスが答えた。


「だから、俺たちが調停するわけか」


「そうだ」


---


城の門に到着すると、衛兵たちが一斉に敬礼した。


「マーカス・オダ騎士団長!お待ちしておりました!」


「ご苦労」


マーカスが軽く手を上げる。


「魔王様の客人、アル殿たちをご案内します」


「はっ!どうぞお通りください!」


衛兵たちがスムーズに道を開けた。


「さすがマーカス、話が早いな」


「事前に連絡してありますからね」


城の中は豪華絢爛だった。


「すげえな。魔王城とはまた違う感じ」


「人族の権力の象徴ですからね」


リリアが小声で言った。


「アル殿、こちらです」


マーカスに案内されて、俺たちは謁見の間へ向かった。


---


重厚な扉が開くと、そこには多くの貴族たちが集まっていた。


そして、中央には二人の若者が立っている。


一人は真面目そうな青年——ルンブラン王子。


もう一人は、美しい少女——


「あれ?」


俺は目を疑った。


「昨日の…エマ?」


そばかすはない。完璧な美貌。艶やかな赤髪。


間違いない。昨日の酒場の女の子だ。


「ルーナ姫です」


マーカスが小声で教えてくれた。


「え…姫!?」


「ふふ」


ルーナ姫が俺を見て、いたずらっぽく笑った。


やられた。完全に騙された。


「魔王ゼクセルの客人、アルです」


マーカスが俺を紹介する。


「ようこそ、アル殿」


ルンブラン王子が丁寧に頭を下げた。


「はじめまして。私はルンブラン」


「あ、どうも」


俺も適当にお辞儀した。


「私はルーナよ。初めまして」


ルーナ姫がにっこり笑う。


初めまして、じゃないんだけどな。


「えーと、よろしく」


「ふふ、よろしくね」


ルーナの目が楽しそうに輝いている。


完全に遊ばれてる。


「では、早速ですが——」


一人の貴族が進み出た。


「王位継承問題について、お二方の意見を聞かせていただきたい」


「ちょっと待った」


俺は手を上げた。


「まず、現状を教えてくれないか?何が問題なのか、さっぱり分からん」


「何を!無礼な!」


一部の貴族たちが騒ぎ出す。


「静粛に」


ルンブラン王子が手を上げた。


「アル殿の言う通りだ。まずは状況を説明すべきだろう」


---


簡単にまとめると、こういうことらしい。


現在の王は高齢で、もうすぐ退位する予定。


後継者として、長男のルンブラン王子と、長女のルーナ姫が候補に上がっている。


しかし、貴族たちが二つの派閥に分かれて対立している。


ルンブラン派:「男子が王位を継ぐのが伝統だ!」


ルーナ派:「姫の方が民衆に人気があり、王位継承にふさわしい!」


双方が譲らず、政治が麻痺している状態だ。


「なるほどね」


俺は腕を組んだ。


「で、当の二人はどう思ってるの?」


「私は…」


ルンブラン王子が口を開いた。


「正直、王になりたくない」


「兄上!?」


周囲がざわついた。


「私は学者になりたかった。政治より、学問に興味がある」


ルンブラン王子は真剣な表情で続けた。


「だから、ルーナに王位を譲りたいと思っている」


「じゃあ、ルーナ姫は?」


俺が尋ねると、ルーナは少し困ったように微笑んだ。


「私も…王になりたくないわ」


「え?」


「私は…自由に生きたい。城の外を歩いて、色々な人と話したい」


ルーナは俺を見た。


「王になったら、そんな自由はなくなる」


「なるほど」


俺は頷いた。


「つまり、二人とも王になりたくないのに、周りが勝手に押し付けようとしてるわけか」


「そうです…」


ルンブラン王子が苦しそうに答えた。


「でも、私たちが何を言っても、貴族たちは聞いてくれない」


「勝手なもんだな」


俺は貴族たちを見回した。


「あのさ、二人とも王になりたくないって言ってるんだけど?」


「しかし、王位継承は義務です!」


「伝統を守らねば!」


貴族たちが騒ぎ出す。


「うるせえな」


俺は溜息をついた。


「お前ら、自分のことしか考えてねえだろ」


「な、何を!」


「ルンブラン王子を支持すれば、自分の派閥が有利になる」


「ルーナ姫を支持すれば、民衆の支持を得られる」


俺は続けた。


「でも、本人たちの気持ちなんてどうでもいいんだろ?」


「そ、それは…」


貴族たちが言葉に詰まった。


「ねえ、マーカス」


俺は振り返った。


「魔界ではどうしてるの?王位継承」


「魔王は世襲ではありません」


マーカスが答えた。


「最も優れた者が選ばれます。実力主義です」


「へえ、いいね」


「それに…」


マリアが口を開いた。


「父上は、娘たちが幸せになることを最優先に考えています」


「権力より、家族の幸せか。いい親だな」


俺はルンブラン王子とルーナ姫を見た。


「で、二人は本当はどうしたいの?」


「私は…」


ルンブラン王子が口を開いた。


「学問を究めて、この国の教育改革をしたい。民衆が学べる環境を作りたい」


「いいね。具体的だ」


「私は…」


ルーナ姫が続いた。


「城の外に出て、民衆の声を直接聞きたい。そして、貧しい人たちを助けたい」


「それもいいね」


俺は笑った。


「じゃあ、まずはじっくり話し合おうぜ」


「話し合い?」


ルンブラン王子が尋ねる。


「そう。お前らの本当の気持ち、やりたいこと、全部な」


俺は貴族たちを見た。


「とりあえず、今日の会議はこれで終わり。俺が二人とちゃんと話してくるから」


「勝手なことを!」


貴族たちが抗議するが、王が手を上げた。


「よかろう。アル殿に任せる」


老いた王が微笑んだ。


「私も…この子たちと、ちゃんと話したことがなかった」


---


その日の午後、俺は王子と姫、それぞれと個別に話すことになった。


まずはルンブラン王子から。


「アル殿、本当にありがとうございます」


王子は深々と頭を下げた。


「いやいや。で、教育改革って具体的にどんなこと考えてるの?」


「はい!」


王子の目が輝いた。


「まず、王都に公立の学校を作りたいんです。貧しい子供も無料で学べる場所を」


「おお」


「今は貴族の子供しか教育を受けられません。でも、教育は全ての人の権利だと思うんです」


王子は熱く語り始めた。


「知識があれば、貧困から抜け出せる。犯罪も減る。国全体が豊かになる」


「なるほどね」


「それに、教育制度を改革すれば、農業技術も発展します。魔法の基礎理論を一般に広めれば、魔道具の開発も加速する。さらに、識字率が上がれば、法律や政策が民衆に正しく伝わり、誤解による紛争も減ります」


「あ、ああ…」


俺は頷くが、王子の勢いは止まらない。


「そして、図書館も必要です!王都だけでなく、各地方都市にも設置して、誰でも本を読めるようにする。知識の共有こそが国を強くします!」


「うん、うん…」


「歴史学も重要です!過去の戦争や失敗から学ぶことで、同じ過ちを繰り返さない。教育カリキュラムに歴史を必修科目として—」


(…おい、止まらないぞ)


俺は内心で冷や汗をかいていた。


王子の教育への情熱は本物だが、話が専門的すぎて、正直ついていけない。


「—それから、教師の育成も課題です。質の高い教育者を養成するため、教員養成所を設立し、定期的に研修を—」


「あ、あの」


「はい?」


ようやく王子が息継ぎした。


「その…すごく熱いのは分かったから、ちょっと休憩しない?」


「あ…」


王子は我に返ったように頬を赤らめた。


「す、すみません。つい夢中になって…」


「いやいや、いいことだよ」


俺は笑った。


「でも、王になったら、そんなことをする時間がない。毎日、政治と儀式に追われる」


王子は悲しそうに言った。


「私は…学者として、教育者として、この国に貢献したいんです」


「わかった」


俺は頷いた。


「じゃあ、その夢を叶える方法を考えようぜ」


---


次はルーナ姫。


城の庭で待っていた。


「よう」


「来たわね」


ルーナは俺を見て、少し照れたように顔をそらした。


「昨日はごめんなさい。騙すつもりじゃなかったんだけど…」


「いや、面白かったよ」


俺は笑った。


「で、民衆を助けたいって、具体的には?」


「まず、貧しい人たちに食料と仕事を提供したいの」


ルーナは真剣な表情で言った。


「昨日、あなたがおじいさんを助けたでしょ?」


「ああ」


「ああいうことを、もっと大規模にやりたい。城の金庫には余ってるお金がたくさんあるのに、困ってる人がいる」


ルーナは拳を握りしめた。


「それっておかしいわよね?」


「そうだね」


「でも、王になったら、そんなことできない。貴族たちが反対する。儀式や会議ばかりで、民の声を聞けない」


ルーナは俺を見つめた。


「私は…自分の目で見て、自分の手で助けたいの」


「わかった」


俺は頷いた。


「じゃあ、その夢も叶える方法を考えようぜ」


「本当?」


ルーナの顔がパッと明るくなった。


「おう。任せとけ」


「ありがとう…アル」


ルーナは少し頬を赤らめた。


でもすぐに顔をそらす。


「べ、別に!あなたに頼んだわけじゃないけど!」


「はいはい」


俺は笑った。


ツンデレだな、この姫。


---


その夜、俺は王と面会した。


玉座の間に入ると、王は寝台に横たわっていた。


顔色は悪く、呼吸も浅い。


「アル殿…どうでしたか?」


王は弱々しい声で尋ねた。


「二人とも、ちゃんとした夢を持ってますよ」


俺は答えた。


「ルンブラン王子は教育改革。ルーナ姫は民衆支援」


「そうか…」


王は目を細めた。


「私は…あの子たちに、ちゃんと向き合ってこなかった。病に倒れてから、ますます何もできなくなった」


「王様、体の具合はどうなんですか?」


「正直に言えば…もう、政務を執るのも難しい。だから、早く後継者を決めなければと…」


王は苦しそうに言った。


「でも、そのせいで国が二つに割れてしまった」


「王様」


俺は前に出た。


「俺に、提案があります」


「聞かせてくれ」


「まず、王様の病気を俺たちで治します」


「何?」


王が驚いた表情を見せる。


「この王国には、万病に効くと言われている伝説の薬草があるって聞きました」


「ああ…『聖なる癒し草』のことか」


王は小さく頷いた。


「しかし、あれは険しい山の奥深くにしか生えない。しかも、強力な魔物が棲む危険な場所だ」


「だったら、俺たちが取ってきます」


俺は力強く言った。


「マリアもリリアもマーカスも、みんな強い。きっと手に入れられる」


「本当に…そんなことができるのか?」


「やってみます。約束します」


俺は続けた。


「そして、王様が回復したら、しばらくは王様が国を治める。その間に、ルンブラン王子には教育改革のプロジェクトを任せる。ルーナ姫には民衆支援の活動を任せる」


「ほう?」


「二人がそれぞれの分野で実績を作って、成長する。そして、いつか本当に王位を継ぐ準備ができた時に、改めて考えればいい」


「なるほど…」


王は深く頷いた。


「それなら、二人とも自分の夢を追いながら、王族としての責任も果たせるわけか」


「そうです。しかも、二人が協力し合えば、派閥の対立もなくなる。政治の分裂も防げます」


俺は力を込めて言った。


「ルンブラン王子が教育で国を強くし、ルーナ姫が民衆の支持を集める。二人が手を取り合えば、誰も文句は言えない」


「素晴らしい提案だ、アル殿」


王は微笑んだ。


「私も、まだ子供たちを見守る時間があるということか」


「ええ。家族で支え合えばいいんです」


「そうだな」


王は目を潤ませた。


「アル殿、本当によろしく頼みます。私の命も、この国の未来も…」


「任せてください。まずは王様の病気を治すことから始めましょう」


俺は王に向かって深く頭を下げた。


---


深夜、俺が宿に戻ろうとすると——


「アル」


ルーナ姫が廊下に立っていた。


「どうした?」


「あのね…今日は、ありがとう」


ルーナは小さな声で言った。


「初めて…本当の自分の気持ちを、誰かに話せた気がする」


「そっか」


「でも、城では姫として接してね。みんなの前では」


「了解」


「じゃあ、おやすみ」


ルーナは走って去っていった。


赤い髪が月光に揺れる。


「可愛いな」


俺は呟いた。


---


翌朝、俺は宿で目を覚ました。


「アルさん!大変です!」


リリアが飛び込んできた。


「どうした?」


「街で…人が倒れてるんです!たくさん!」


「何?」


俺は飛び起きた。


「案内して!」


リリアと共に街へ走る。


そこには——


倒れている民衆たち。


苦しそうに呻いている。


「これは…」


マリアが駆けつけて、魔法で調べる。


「呪いの魔法です。しかも、かなり強力な…」


「くそ…誰がこんなことを」


俺は拳を握りしめた。


「強力な呪いの魔法を使える奴なんて、そうそういない…」

最後までお読みいただきありがとうございます!


読んでくださる皆様のアクセスが増えてきており、すごく励みになってます!


まだまだアルの酔いどれ旅は始まったばかりですが、お酒でも飲みながらゆっくり楽しんでいただけたらうれしいです。


感想やリアクションなどもお待ちしております!

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