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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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103杯目「旅立ちの準備とハプニング」

 翌朝——。


 城の会議室に、全員が集まった。


 リリア、マーカス、マリア、ルーナ、ミア。


「忘却の海……?」


 ルーナが、驚いた顔をする。


「ええ」


 俺は、昨夜のことを説明した。


 煙の言葉。


 忘却の海のこと。


 そして——。


 両親がそこにいるということ。


「……」


 会議室に、沈黙が流れる。


「アル」


 マーカスが、重々しく口を開いた。


「それは……罠かもしれないぞ」


「分かってる」


 俺は、頷いた。


「でも、行かないわけにはいかない」


「両親に会いたい……それもある」


 俺は、拳を握りしめた。


「でも、それ以上に——」


「煙の正体を知りたい。災厄の真実を知りたい」


「それを知らないと、第三の試練には勝てない気がするんだ」


 俺は、みんなを見回した。


「だから、行く。忘却の海へ」


「……私も行きます」


 リリアが、立ち上がる。


「アルさんを一人にはできません」


「私も!」


 ルーナも手を挙げる。


「アルが行くなら、私も行く」


「それに……」


 ルーナが、少し寂しそうに笑う。


「もしかしたら、私も……お母さんに会えるかもしれない」


「ルーナ……」


 人族の王の妻——ルーナの母は、ルーナが幼い頃に亡くなったと聞いている。


「私も……行きます」


 ミアが、静かに言った。


「え? ミア?」


 俺は、驚いた。


「守護者様の力を受け継いだ私には……」


 ミアが、自分の手を見つめる。


「忘却の海で、何か分かるかもしれません」


「川の源流のこと……守護者様が知りたかったこと……」


 ミアの目には、強い決意が宿っていた。


「それに……」


 ミアが、俺を見た。


「守護者様も、きっと望んでいると思います」


「アルさんを、守れと」


「……」


 俺は、何も言えなかった。


「では、決まりだな」


 マーカスが、大剣を握る。


「俺は、王都に残る」


「マーカス……」


「誰かが、ここを守らないとな」


 マーカスが、にっと笑う。


「裂け目はまだ広がってる。災厄の欠片が、また襲ってくるかもしれない」


「……頼む」


「任せろ」


 マーカスが、俺の肩を叩いた。


 その時——。


 マーカスの腕に、黒い痣が残っているのが見えた。


「マーカス、その腕……」


「ああ、これか」


 マーカスが、少し顔をしかめる。


「災厄の欠片に触れられた時の痕だ」


「まだ、少し痛む」


「それ……放っておいたら危険です」


 ミアが、立ち上がった。


「災厄の力は、体を蝕みます」


「ミア……?」


「私が……治します」


 ミアが、マーカスの腕に手を当てた。


 淡い青白い光が、ミアの手から溢れ出す。


「これは……」


「守護者様の力です」


 ミアが、目を閉じる。


「この力で、災厄の痣を浄化できます」


 光が、マーカスの腕を包み込む。


 そして——。


 黒い痣が、ゆっくりと薄くなっていった。


「……すげぇ」


 マーカスが、自分の腕を見つめる。


「痣が……消えた」


「体も、軽くなった気がする」


「よかった……」


 ミアが、安堵の表情を浮かべた。


「でも、これで全部じゃありません」


「マーカスさん、無理はしないでください」


「ああ、分かった」


 マーカスが、ミアの頭を撫でた。


「私も残ります」


 マリアが、静かに言った。


「汚染が再発した時のために」


「マリア姉様……」


 リリアが、姉の手を握る。


「行ってらっしゃい」


 マリアが、優しく微笑んだ。


「必ず、無事に帰ってきてね」


 *


 会議が終わり、俺たちは準備を始めた。


 忘却の海へ向かうための——。


 旅の準備。


「地図は?」


 リリアが、古い地図を広げる。


「忘却の海は……この辺りかしら」


 地図の端、世界の果てに——。


 青い海のような印が描かれている。


「遠いな……」


「ええ。徒歩で三日はかかりそうです」


「食料は十分に持って行かないとな」


 俺は、倉庫から干し肉やパン、果物を詰め込んだ。


「水筒も」


「寝袋も」


「それから……」


 ルーナが、小瓶を取り出す。


「以前アルが飲んだ時に回復の能力出たでしょ?あの時の酒も、念のため持ってきましょ」


「ああ、ありがとう」


 俺は、荷物をまとめながら考えた。


 忘却の海。


 魂が集まる場所。


 両親に会える場所。


 そして——。


 煙の正体が分かる場所。


「よし……準備完了だ」


 *


 午後——。


 準備を終えた俺は、汗を流すために城の大浴場へ向かった。


「さて……ちょっと汗流すか」


 城の大浴場は、広くて立派だ。


 入口は一つだけ。


 男女別れてないのか……?


 まあ、そういう文化なのかもしれない。


 俺は、気に留めずに入った。


 *


 脱衣所には、誰もいなかった。


「今日は誰も入ってないのか?」


 まあ、いいか。


 俺は、服を脱ぎ——。


 浴場のドアを開けた。


 ざばー。


 湯気が立ち込めている。


 広い湯船に、透明な湯が張られている。


「いい湯だな……」


 俺は、体を洗ってから——。


 湯船に浸かった。


「ふぅ……」


 温かい湯が、体に染み渡る。


 戦いの疲れが、溶けていく気がする。


「……明日から、また旅か」


 俺は、天井を見上げた。


 忘却の海へ。


 煙の正体を知り——。


 両親に会う。


 *


 その頃——。


 城の廊下を歩くリリアとルーナ。


「リリア、一緒にお風呂入らない?」


 ルーナが、にこにこしながら提案した。


「お風呂?」


「うん! 私の家族がよく使ってる浴場があるの」


 ルーナが、リリアの手を引く。


「せっかくだから、そこで一緒に入ろう!」


「え、ええ……分かったわ」


 リリアは、少し戸惑いながらも頷いた。


 二人は、城の奥へと向かう。


 そして——。


 ある浴場の前に辿り着いた。


「ここよ」


 ルーナが、ドアを開ける。


「小さい頃はよく家族みんなで入ってたわ」


「広くて、気持ちいいわよ」


「そうなの……」


 リリアは、脱衣所に入った。


 *


 二人は、服を脱ぎ——。


 タオルを体に巻いた。


「じゃあ、入ろうか」


 ルーナが、浴場のドアを開ける。


 ざばー。


 湯気が立ち込めている。


「あれ?」


 ルーナが、首を傾げた。


「誰かいるの?」


 湯気の向こうに、人影が見える。


「え……?」


 リリアが、目を凝らした。


 そして——。


 気づいた。


「ア、アルさん……?」


 湯船に浸かっているのは——。


 アルだった。


「え……?」


 アルが、凍りついたように固まる。


「え、ちょ、リリア!? ルーナ!? なんでここに!?」


「え!? こっちが聞きたいですっ!!」


 リリアの顔が、真っ赤になる。


「どうしてアルさんがここに!?」


「え……?」


 アルは、周りを見回した。


「俺、城の大浴場に入っただけだぞ……?」


「ここ……」


 ルーナが、顔を真っ赤にする。


「私の家族がよく使う浴場なの……」


「城の大浴場じゃなくて……」


「あ……」


「間違えた……」


「ちょっと!! どうして確認しないんですか!!」


 リリアが、タオルを胸に押し当てながら叫ぶ。


「ご、ごめん!! すぐ出る!!」


 アルは、慌てて湯船から飛び出そうとして——。


 足を滑らせた。


「うわっ!!」


 ばしゃん。


 アルは、盛大に湯船に落ちた。


 そして——。


 その水しぶきが——。


 リリアとルーナのタオルを、直撃した。


「きゃっ!!」


 二人のタオルが、ずり落ちかける。


「あっ……」


 アルは、目を逸らそうとしたが——。


 一瞬だけ——。


 見えてしまった。


 リリアの白い肌。


 ルーナの華奢な体。


 柔らかそうな曲線。


 そして——。


「見ないでくださいっ!!」


 リリアが、タオルを掴んで体を隠す。


 顔が、耳まで真っ赤だ。


「あ……」


 ルーナは、タオルを押さえながら——。


 少し顔を赤くしたが——。


 すぐに、いたずらっぽく笑った。


「まあ……アルが見たいなら、別にいいけど♪」


「え……?」


 俺は、驚いて顔を上げた。


「ル、ルーナ!?」


 リリアも、驚いている。


「だって、アルだもん」


 ルーナが、少し照れながらも微笑む。


「私の体……興味ある?」


「え、あ、いや……」


 俺は、慌てて目を逸らした。


「ふふっ、冗談よ」


 ルーナが、くすくす笑う。


「でも……わざとじゃないなら、許してあげる」


「ル、ルーナ……ありがとう……?」


 数分後——。


 俺は、脱衣所で正座させられていた。


 タオルで体を隠したリリアとルーナが、俺の前に立っている。


「説明してください」


 リリアが、冷たい声で言う。


「え、えっと……」


 俺は、冷や汗をかきながら答えた。


「間違えた……としか」


「間違えたって……」


 リリアが、顔を真っ赤にしながら言う。


「普通、確認するでしょ!?」


「ごめん……」


「それに……」


 リリアが、恥ずかしそうに俯く。


「見ましたよね……?」


「え、あ、いや……」


「見たんですね!?」


「ご、ごめん!!」


 俺は、深々と頭を下げた。


「本当に、わざとじゃないんだ!!」


「わざとじゃなくても……」


 リリアが、顔を覆う。


「恥ずかしい……」


「……」


 沈黙が、流れる。


 その時——。


「まあ、私は別にいいけどね」


 ルーナが、少し笑いながら言った。


「え……?」


 俺とリリアが、同時にルーナを見る。


「だって、アルだもん」


 ルーナが、肩をすくめる。


「わざとじゃないし」


「それに……」


 ルーナが、少し頬を染める。


「アルに見られるなら……まあ、悪い気はしないかな」


「ル、ルーナ!?」


 リリアが、驚いて声を上げる。


「え、なに? 正直に言っただけだよ?」


 ルーナが、にこにこ笑う。


「私、アルのこと好きだし♪」


「……」


 俺は、言葉を失った。


 ルーナは、こういうところが大胆だ。


 その時——。


「……まあ、いいです」


 リリアが、ため息をついた。


「わざとじゃないなら」


「でも、次は気をつけてくださいね」


「……ありがとう」


「別に……」


 リリアが、少し照れたように微笑む。


「それに……」


「それに……?」


アルは正座しながら首をかしげる。


「え、あ……」


 リリアが、慌てて口を押さえる。


「なんでもないです……」


リリアはうつむいて恥ずかしそうにしている。それに呼応するかのように角も赤くなっていた。


「そ、そうか……」


 俺は、少し残念な気持ちになった。


 なぜだろう。


「でも……」


 ルーナが、俺を見る。


「次はもっとちゃんと見せてあげるから♪」


「ル、ルーナ!!」


 リリアが、真っ赤になって叫ぶ。


「冗談、冗談!」


 ルーナが、笑いながら手を振る。


「……本当に冗談なの?」


 俺が、恐る恐る聞くと——。


「さあ、どうかな♪」


 ルーナが、ウインクした。


「……ルーナ」


 俺は、頭を抱えた。


 この子は、本当に大胆すぎる。


 俺は、二人に頭を下げた。


 そして——。


 心の中で、誓った。


 次は絶対に、間違えない、と。


 *


 その夜——。


 俺は、城の屋上に立っていた。


 二つの月が、夜空に輝いている。


 そして、その間に——。


 赤く脈動する、裂け目。


「明日……」


 俺は、呟いた。


「明日から、旅が始まる」


 忘却の海へ。


 両親に会うために。


 真実を知るために。


「父さん……母さん……」


 俺は、夜空を見上げた。


 赤く脈動する裂け目。


 何とかなる。いやなんとかするそれしかないか。


 裂け目は不気味に輝いていたが、そこまで不安には感じなかった。

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