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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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101杯目「嵐の予兆」

 五日が経った。


 王都の復興は、少しずつ進んでいる。


 市民たちの顔にも、笑顔が戻り始めていた。


 でも——。


 俺の心には、拭えない不安があった。


 守護者が言っていた、第三の試練。


 それは——。


 いつ来るのか。


 その日の夜——。


 俺は、城の屋上に立っていた。


 星空を見上げながら、深く息を吸う。


「眠れないの?」


 声がして、振り返ると——。


 リリアが、そこにいた。


「リリア……」


「お前も、眠れないのか?」


「うん……」


 リリアが、俺の隣に立つ。


「なんだか……落ち着かなくて」


「そうか……」


 俺も、同じだった。


 この静けさが——。


 逆に、不安を掻き立てる。


「ねえ、アル」


 リリアが、俺を見る。


「第三の試練……怖い?」


「……ああ」


 俺は、正直に答えた。


「怖いよ」


「守護者があれほど言うってことは……相当、ヤバいんだろうな」


「そっか……」


 リリアが、小さく笑う。


「アルも、怖いんだ」


「当たり前だろ」


 俺も、苦笑する。


「俺だって、人間だからな」


「でも」


 俺は、拳を握る。


「怖くても……やるしかない」


「俺たちが戦わなきゃ……この世界は、終わる」


「……うん」


 リリアが、頷く。


「私も……頑張る」


「アルと一緒なら……怖くない」


 その言葉に——。


 俺の心が、温かくなった。


 そして——。


 ふと、思い出す。


 あの日——。


 リリアが、何か言おうとしていたことを。


「あの……リリア」


 俺は、少し迷ってから口を開いた。


「あの日……街が襲われる前に……お前、何か言いかけてなかったか?」


「え……」


 リリアの顔が、一瞬赤くなる。


「あ……あの時のこと……覚えてたの?」


「ああ……気になってたんだ」


 俺は、リリアを見つめる。


「何を、言おうとしてたんだ?」


「それは……」


 リリアが、視線を逸らす。


 その頬が、ほんのり赤い。


「……今は、まだ……」


「まだ?」


「うん……」


 リリアが、小さく頷く。


「全部が終わったら……その時に、ちゃんと言うから」


「第三の試練が終わって……みんなが笑顔になったら……」


 リリアが、俺を見つめる。


 その目には——。


 強い決意と、少しの恥ずかしさが混ざっていた。


「その時まで……待っていてくれる?」


「……ああ」


 正直すごい気になるが俺は、頷いた。


「待ってる」


「ありがとう、アル」


 リリアが、微笑む。


「一緒に……戦おう」


「うん!」


 リリアが、笑顔を見せる。


 その時——。


 風が、強く吹いた。


 空を見上げると——。


 星が——。


 いつもより、暗く見えた。


 まるで——。


 何かが、近づいているかのように。


「……来るな」


 俺は、呟いた。


「第三の試練が……」


「うん……」


 リリアも、空を


 俺は、リリアの手を握った。


 そして、六日目の朝——。


 城が、激しく揺れた。


「何だ!?」


 マーカスが、窓の外を見る。


 俺も、窓に駆け寄った。


 そして——。


 息を呑んだ。


 空に——。


 巨大な裂け目が、開いていた。


 真っ赤な、不吉な光を放つ裂け目。


 そこから——。


 黒い何かが、溢れ出していた。


「まさか……」


 ルーナが、震える声で言う。


「第三の試練……もう、始まったの……?」


「ああ……」


 俺は、剣を握りしめた。


「守護者が言ってた……災厄の本体……」


「あれが、来るんだ……」


 裂け目が、どんどん広がっていく。


 黒い霧が、空から降り注ぎ始める。


 ルーナが、震えながら呟いた。


「これが……第三の試練……」


 俺は、剣を握りしめた。


 守護者が言っていた——。


 災厄の核が、姿を現す——。


 その時だった。


 黒い霧の中から——。


 紫色の煙が、ゆらりと立ち上った。


「……!」


 俺は、目を見開いた。


 見覚えのある、あの煙——。


 そして、その中から——。


「ハッハー……」


 低く、楽しげな笑い声。


 煙が、人の形を取る。


 白黒混じりの髪。


 ぼろぼろのローブ。


 そして、紫色のタバコを咥えた——。


 中性的な人物。


「煙……!」


 俺は、叫んだ。


「お前……!」


「やあ、アル君」


 煙が、タバコを吹かす。


 紫の煙が、ゆらりと広がる。


「久しぶりだねぇ」


 でも——。


 その目は、笑っていなかった。


「お前、なんでここに……!」


「なんでって……」


 煙が、首を傾げる。


「君たちが、ここまで来たから……僕も来ただけさ」


「お前が、災厄なのか……!」


 俺は、剣を構える。


「さてねぇ」


 煙が、空の裂け目を見上げる。


「それは……君がどう思うかによるんじゃないかな」


「ふざけるな!」


 マーカスが、大剣を握りしめる。


「はっきり答えろ!」


「ハッハー、怖いねぇ」


 煙が、笑う。


「でも、答えは教えてあげないよ」


 煙が、俺を見る。


 その目は——。


 冷たく、でもどこか……寂しそうだった。


「覚えているかい、アル?」


「何を……」


「僕が、最初に君に言ったこと」


 煙が、タバコを吹かす。


「『最後には——空が裂けるよ』って」


「……!そんなこと言われた覚えないぞ」


「そして——」


 煙が、裂け目を指差す。


「『そこから、何かが出てくる』って」


 俺の背筋に、冷たいものが走る。


「お前……」


 俺は、煙を睨んだ。


「お前は、何が目的なんだ……」


「目的?」


 煙が、首を傾げる。


「そんな大層なものはないよ」


「ただ……興味深いんだ」


 煙の目が、俺を見つめる。


「君たちが、どんな選択をするのか」


「選択……?」


「さてねぇ」


 煙が、ゆっくりと消え始めた。


「待てっ!」


 俺は、手を伸ばした。


 でも——。


「楽しみにしているよ、アル君」


 煙の声だけが、響く。


「君の……君だけの選択をね」


 そして——。


 煙は、完全に消えた。


 ただ、紫色の煙だけが——。


 空に漂っていた。


「くそ……」


 俺は、拳を握りしめる。


 煙の言葉が、頭の中で響く。


 選択——。


 何を、選べというんだ……。


 その時——。


 裂け目が、激しく脈動した。


 ゴゴゴゴゴ……


 不気味な音が、空から響く。


「何だ……!?」


 マーカスが、空を見上げる。


 裂け目が——。


 少しずつ、大きくなっていく。


 真っ赤な光を放ちながら——。


 まるで、何かが内側から押し広げているかのように。


 そして——。


 裂け目の奥から——。


 黒い霧が、噴き出してきた。


「来る……!」


 俺は、剣を構える。


 黒い霧の中から——。


 無数の影が、現れた。


 人の形をしているようで、していない。


 黒いモヤのような、不定形の存在。


 でも——。


 その存在からは、強烈な悪意が感じられた。


「あれは……!」


 ミアが、息を呑む。


「災厄の欠片……!」


「欠片……?」


「ええ……本体が現れる前の、前触れです……!」


 影が、俺たちに向かって襲いかかってくる。


「みんな、迎え撃つぞ!」


 俺は、叫んだ。


 マーカスが、大剣を振るう。


 ガキィン!


 影が、真っ二つに斬られる——。


 かと思った瞬間——。


 影が、二つに分裂した。


「なんだと!?」


 マーカスが、驚く。


 二つになった影が、それぞれマーカスに襲いかかる。


「くそっ!」


 マーカスが、大剣で防ぐ。


 でも——。


 影の攻撃は、物理的な実体がないかのように——。


 大剣をすり抜けて、マーカスの体に触れた。


「ぐあっ!」


 マーカスが、膝をつく。


「マーカス!」


 リリアが、魔法を放つ。


 炎の球が、影に直撃する。


 影が、一瞬怯む——。


 しかし、すぐに再生した。


「魔法も効きにくい……!」


 リリアが、歯を食いしばる。


「私が……!」


 ルーナが、前に出る。


 剣を構え——。


 剣に、光の魔法を纏わせる。


「光よ……邪悪を払え!」


 ルーナが、光を纏った剣で影を斬る。


 シュウウウウ……!


 影が、悲鳴のような音を上げて——。


 消滅した。


「効いた……!」


 ルーナが、驚く。


「光の魔法が有効です!」


 ミアが、叫ぶ。


「みんな、光の魔法を使って!」


 リリアが、光の魔法に切り替える。


 俺も、剣に魔力を込める。


 そして——。


 俺たちは、影との戦いに挑んだ。


 無数の影が、次々と襲いかかってくる。


 斬っても、斬っても——。


 まだ出てくる。


「くそ……キリがない……!」


 マーカスが、汗を流しながら叫ぶ。


 その時——。


 ミアが、川の力を解放した。


 銀色の光が、辺りを包む。


 影たちが、光に触れて——。


 次々と消えていく。


「今よ!」


 ミアが、叫ぶ。


 俺たちは、一斉に攻撃を放った。


 リリアの光の魔法。


 ルーナの光を纏った剣。


 マーカスの大剣。


 俺の剣。


 そして——。


 マリアの浄化の魔法。


 全ての攻撃が、影たちを飲み込む。


 光が、辺りを満たす。


 そして——。


 影たちが、完全に消滅した。


 静寂。


「……やった、のか?」


 マーカスが、息を切らしながら言う。


 俺は、空を見上げた。


 裂け目は——。


 まだ、そこにあった。


 閉じていない。


 それどころか——。


「……大きくなってる」


 俺は、呟いた。


 裂け目は、さっきよりも——。


 明らかに、大きくなっていた。


「まさか……」


 リリアが、震える声で言う。


「これは……まだ序章に過ぎない……?」


 ミアが、裂け目を見つめる。


「ええ……本当の災厄は……」


「これから、来ます……」


 裂け目が、ゆっくりと脈動している。


 まるで——。


 何かが、生まれようとしているかのように。


 俺は、剣を握りしめた。


 これは——。


 嵐の前の静けさだ。

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