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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第二章 杯を重ねて世界を知る編

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100杯目「喪失と再生」

 守護者が消えた部屋には——。


 重い沈黙だけが残っていた。


 ミアは、床に膝をついたまま、動かなかった。


 守護者の力を受け継いだ彼女の体からは、淡い銀色の光が漏れている。


 でも——。


 その顔は、涙で濡れていた。


「ミア……」


 リリアが、そっとミアの肩に手を置く。


「大丈夫……?」


「……分かりません」


 ミアが、小さく答えた。


「守護者様の力が……体の中に……」


「でも……守護者様は、もう……」


 その声が、震える。


 俺は——。


 何も言えなかった。


 守護者は、最後まで俺たちを守ろうとしてくれた。


 自分の存在を犠牲にしてまで——。


「アル……」


 マーカスが、俺の肩に手を置いた。


「今は……休もう」


「ああ……」


 俺は、頷いた。


 みんな、疲れ切っていた。


 体だけじゃない。


 心も——。


 俺たちは、ゆっくりと部屋を出た。


 ミアは、リリアとルーナに支えられて歩いている。


 城の廊下は——。


 静まり返っていた。


 戦いの跡が、そこかしこに残っている。


 壁には亀裂が走り、床には黒い染みが点々と。


 でも——。


 汚染は、もう消えていた。


 守護者の最後の力が、すべてを浄化してくれたのだろう。


「部屋に戻って、休んでください」


 兵士の一人が、俺たちに言った。


「今夜は、もう何もする必要はありません」


「……ああ、ありがとう」


 俺たちは、それぞれの部屋に戻った。


 俺とマーカスは、同じ部屋だ。


 部屋に入ると——。


 マーカスは、大剣を壁に立てかけて、ベッドに倒れ込んだ。


「……疲れた」


「ああ」


 俺も、ベッドに腰を下ろす。


 体が、鉛のように重い。


 でも——。


 眠れる気がしなかった。


「なあ、アル」


 マーカスが、天井を見つめたまま言う。


「これで……良かったのかな」


「何が?」


「俺たち……守護者を救えなかった」


 マーカスの声が、暗い。


「守護者は、俺たちを助けるために……消えた」


「……」


 俺は、何も言えなかった。


 確かに——。


 守護者は、俺たちを救うために自らを犠牲にした。


 もし、もっと早く動いていたら。


 もし、もっと強かったら。


 守護者を救えたかもしれない。


「でも」


 俺は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「守護者は……後悔してなかったと思う」


「最後まで……俺たちに希望を託してくれた」


「それを無駄にしないことが……俺たちにできることだ」


「……そうだな」


 マーカスが、小さく笑った。


「お前、いつの間にか立派なこと言うようになったな」


「バカ言うな」


 俺も、苦笑する。


「ただ……そう思っただけだ」


 それから、しばらく沈黙が続いた。


 外からは——。


 王都の音が、かすかに聞こえてくる。


 市民たちは、まだ恐怖の中にいるだろう。


 でも——。


 少なくとも、今夜は安全だ。


 それだけでも——。


 守護者の犠牲は、無駄じゃなかった。


 翌朝——。


 俺たちは、王都の視察に出た。


 街は——。


 想像以上に荒れていた。


 建物の半分が倒壊し、道には瓦礫が散乱している。


 あちこちで、市民たちが復興作業に追われていた。


「ひどいな……」


 マーカスが、呟く。


「ああ……」


 俺も、息を呑んだ。


 これほどまでとは——。


 災厄の爪痕は、深い。


「アル様!」


 声がして、振り返ると——。


 若い女性の市民が、こちらに駆け寄ってきた。


 彼女は、包帯を巻いた腕で手を振っている。


「怪我は大丈夫?」


「これくらい、大したことありません」


 女性が、笑顔を作る。


 でも——。


 その笑顔は、少し疲れているように見えた。


「街の人たちは……?」


「負傷者は多いですが……幸い、死者は最小限に抑えられました」


 女性が、安堵の表情を浮かべる。


「守護者様の力が……最後まで、街を守ってくれたんです」


「そうか……」


 俺は、空を見上げた。


 守護者さん——。


 あなたは、最後の最後まで、この街を愛していたんですね。


「でも」


 女性の表情が、曇る。


「このままでは……復興に、かなりの時間がかかりそうです」


「人手が……足りないんです」


「俺たちも手伝おう」


 マーカスが、即答した。


「え……でも、アル様たちは……」


「俺たちだって、この街の一員だ」


 マーカスが、笑う。


「それに……何もしないで待ってるより、体を動かしてる方が性に合ってる」


「……ありがとうございます」


 女性が、深々と頭を下げた。


 俺たちは——。


 その日一日を、復興作業に費やした。


 瓦礫を運び、倒壊した建物を片付け、負傷者を手当てする。


 リリアとマリアは、治癒魔法で負傷者を癒していた。


 マリアの治癒魔法は、リリアよりも高度で——。


 重傷者たちを、次々と回復させていく。


 ルーナは、子供たちの相手をしながら、光の魔法で瓦礫の下に埋もれた物を探していた。


 ミアは——。


 川のそばで、一人座っていた。


 守護者の力を受け継いだ彼女には、今、休息が必要なのだろう。


 夕方——。


 作業を終えた俺たちは、城に戻った。


 体中が、汗と埃にまみれている。


 でも——。


 不思議と、心は少し軽くなっていた。


 何かをすることで——。


 守護者の死という現実から、少しだけ目を背けられたのかもしれない。


 三日目の夜——。


 俺たちは、城の食堂に集まっていた。


 テーブルには、質素だが温かい食事が並んでいる。


 戦いの後、初めて、みんなで囲む食卓だった。


「いただきます」


 みんなで声を揃える。


 食事は——。


 最初、静かだった。


 誰もが、まだ守護者の死を引きずっている。


 でも——。


「ねえ、マーカス」


 ルーナが、口を開いた。


「復興作業、頑張ってたわね」


「ああ……まあな」


 マーカスが、照れくさそうに笑う。


「子供たちが、喜んでくれたからな」


「子供たち……?」


「ああ。瓦礫の下に、おもちゃが埋まっててさ」


 マーカスが、話し始める。


「それを掘り出してやったら、めちゃくちゃ喜んでくれて」


「あんたらしいわね」


 ルーナが、クスッと笑った。


 その笑顔に——。


 場の空気が、少しだけ和らぐ。


「リリアは、治癒魔法、すごかったよ」


 俺が言うと、リリアが顔を赤らめる。


「そんな……私、まだまだです」


「いや、お前の魔法で、何人もの人が救われたんだ」


「……ありがとう、アル」


 リリアが、微笑む。


 その笑顔は——。


 本当に、美しかった。


「マリアさんも、すごかったです」


 リリアが、姉を見る。


「あれだけの重傷者を、次々と……」


「私は当然のことをしただけよ」


 マリアが、穏やかに微笑む。


「でも……正直、疲れたわ」


「無理しないでくださいね」


 ルーナが、心配そうに言う。


「大丈夫よ。みんなも頑張ってたもの」


 マリアが、テーブルを見回す。


「私一人だけ、弱音を吐くわけにはいかないわ」


「ミアは……どう?」


 ルーナが、ミアを見る。


 ミアは——。


 少し元気がないように見えた。


「……大丈夫です」


 ミアが、小さく答える。


「守護者様の力……少しずつ、慣れてきました」


「でも……まだ、実感が……」


 その声が、震える。


 俺は——。


 ミアの気持ちが、痛いほど分かった。


 大切な人を失った悲しみは——。


 簡単には消えない。


「ミア」


 俺が、声をかける。


「守護者さんは……お前に、川を託した」


「それは……お前を信頼してたからだ」


「だから……泣いていいんだぞ」


「でも……いつか、前を向くんだ」


「守護者さんの想いを……受け継ぐために」


「……はい」


 ミアが、涙を拭った。


「私……頑張ります」


「守護者様の分も……」


 その言葉に——。


 みんなが、頷く。


 俺たちは——。


 それぞれ、守護者に救われた。


 だから——。


 守護者の想いを、絶対に無駄にはしない。


「そういえば」


 マーカスが、話題を変える。


「第三の試練……って、守護者が言ってたよな」


「……ああ」


 俺は、頷いた。


 正直——。


 あまり考えたくなかった。


 でも——。


 避けては通れない現実だ。


「災厄の本体が……来るって」


「空に裂け目が開くって……」


「いつ来るのかな……」


 ルーナが、不安そうに呟く。


「分からない」


 俺は、正直に答えた。


「でも……きっと、そう遠くない」


「だから……今のうちに、できるだけ準備をしておかないと」


「そうだな」


 マーカスが、拳を握る。


「今度こそ……絶対に勝つ」


「誰も……失わせない」


 その決意に——。


 みんなが、頷いた。


 俺たちは——。


 もう、失いたくない。


 大切な人を——。


 大切なものを——。

もし面白い、続きが見てみたいと少しでも思っていただけたら☆☆☆☆☆をポチポチして貰えたら嬉しいですm(_ _)m

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