99杯目「守護者の限界」
城に戻ると、守護者が倒れていた。
「守護者様!」
ミアが、守護者に駆け寄る。
守護者の体は——。
透けて、消えかかっていた。
「大丈夫ですか!?」
俺も、守護者の傍に膝をついた。
守護者が、か細く微笑む。
「……アルさん……皆さん……無事でしたか……」
「ああ、みんな無事だ。お前のおかげで、住民も全員助かった」
俺は、守護者の手を握った。
その手は——。
氷のように、冷たかった。
「良かった……本当に……」
守護者が、安堵の息をつく。
でも——。
その体は、さらに透けていく。
「守護者様……無理をされすぎました……」
ミアが、涙を流しながら言う。
「このままでは……消えて……」
「消える……?」
俺は、ミアを見た。
ミアが、頷く。
「守護者様は……川の化身です……」
「川の力を、すべて使い果たしてしまったら……」
ミアの声が、震える。
「存在そのものが……消えてしまうんです……」
俺は、守護者を見た。
守護者は——。
穏やかに微笑んでいた。
「……仕方ありません……」
守護者が、小さな声で言う。
「私は……もう、千年以上……生きてきました……」
「川を守り……人々を見守り……それが、私の使命でした……」
「でも……もう……」
守護者の声が、途切れる。
「力が……残っていません……」
「待ってくれ!」
俺は、叫んだ。
「何か方法があるはずだ! 酒だ! あの酒を飲めば——!」
「いえ……」
守護者が、首を振る。
「あの酒は……人間を救うものです……」
「私は……川の化身……人間ではありません……」
「だから……効かないんです……」
守護者の言葉に——。
俺は、何も言えなくなった。
その時——。
「守護者様!」
リリアが、城の中に駆け込んできた。
ルーナとマリアも、一緒だ。
「大丈夫ですか!?」
リリアが、守護者の顔を覗き込む。
守護者が、微笑む。
「リリアさん……皆さん……」
「無事で……良かった……」
「守護者様こそ……!」
ルーナが、涙を流す。
「あなたが、私を……みんなを救ってくれたのに……!」
「いえ……」
守護者が、静かに言う。
「私は……何もしていません……」
「皆さんが……頑張ったから……」
「みんなが……救われたんです……」
守護者の体が、また少し透けた。
「守護者様……!」
ミアが、叫ぶ。
「もう……話さないでください……!」
「力を使わないで……!」
「いえ……大丈夫です……」
守護者が、ゆっくりと体を起こした。
ミアとリリアが、支える。
「皆さんに……お話ししなければならないことが……あります……」
「話?」
俺は、守護者を見た。
守護者が、城の外を見る。
その目は——。
遠くを見つめているようだった。
「第二の試練は……終わりました……」
「でも……これで、すべてが終わったわけでは……ありません……」
守護者の声が、重い。
「まだ……第三の試練が……残っています……」
「第三の……試練……?」
マーカスが、大剣を握りしめる。
「ああ……」
守護者が、頷く。
「今回の汚染は……災厄の、ほんの一部に過ぎません……」
「本当の災厄は……これから……」
守護者が、咳き込んだ。
口から、銀色の光が漏れ出す。
「守護者様!」
ミアが、守護者を支える。
「もう、話さないでください!」
「いえ……これだけは……」
守護者が、俺を見た。
「アルさん……」
「ああ」
俺は、守護者の目を見つめた。
「第三の試練は……もっと過酷です……」
「空に……裂け目が開きます……」
「そこから……災厄の本体が……」
守護者の声が、かすれる。
「あなたたちは……それと……戦わなければ……」
「災厄の本体……?」
俺は、息を呑んだ。
「そうです……」
守護者が、小さく頷く。
「でも……大丈夫……」
「あなたたちなら……きっと……」
守護者が、微笑む。
「勝てます……」
その言葉とともに——。
守護者の体が、大きく揺れた。
「守護者様!」
みんなが、叫ぶ。
守護者は——。
もう、ほとんど透明になっていた。
「ミア……」
守護者が、ミアを見る。
「はい……」
ミアが、涙を流しながら答える。
「あなたに……川を……託します……」
「え……?」
ミアが、目を見開く。
「私の力……すべて……あなたに……」
守護者が、ミアの額に手を当てた。
その瞬間——。
銀色の光が、ミアの体に流れ込んでいく。
「守護者様……!」
ミアが、叫ぶ。
「これ……やめてください……!」
「あなたが消えてしまう……!」
「いえ……」
守護者が、穏やかに微笑む。
「私は……消えません……」
「川の中に……いつまでも……」
「あなたと……一緒に……」
銀色の光が、どんどんミアに流れ込んでいく。
守護者の体が——。
光の粒子となって、消えていく。
「守護者様……!」
俺は、叫んだ。
でも、守護者は——。
最後まで、微笑んでいた。
「ありがとう……ございました……」
「皆さん……」
「どうか……世界を……」
その言葉が、消える前に——。
守護者の姿は、完全に光となって消えた。
残ったのは——。
淡い銀色の光だけ。
それが、ゆっくりとミアの体に吸い込まれていく。
「守護者様……守護者様……!」
ミアが、泣きながら叫ぶ。
でも——。
もう、守護者の姿はなかった。
部屋には——。
重い沈黙が、降りていた。
俺は——。
拳を、強く握りしめた。
守護者は——。
最後まで、俺たちを守ろうとしてくれた。
自分の命を削ってまで——。
「……ありがとうございます」
俺は、小さく呟いた。
「俺たちは、必ず——」
「守護者さんの想いを、受け継ぎます」
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