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川の底

作者: 豚乃ハナ尾

特になんの変哲もない昔話です。


これは特に代わり映えもしない日常の話。

私自身の経験したことを、ただ書き綴るだけの日常の話。


その日、私は見知った人たちと川に遊びに来ていた。

いつも遊んでいる川には、大きな岩があり。

その周辺には大人でも足が付かないほどの水だまりができており、

飛び込みの名所としても有名な場所であった。


私たちは小さいころから、その岩周りで遊ぶことが多く、

見知った場所、遊びなれた場所であったが、

その日は少しだけ違っていた。


川で遊んでいてしばらくしてからのこと、

突然周辺が騒がしくなり、川辺に人だかりができはじめていた。


何があったのだろうと水から上がり、その人だかりに近づくと。

そこには横たわる小学生位の子供と、一緒に遊びにきていた大人が数人、

その子に対して懸命に心臓マッサージと人口呼吸を繰り返す姿があった。


その光景を見た瞬間、小学生だった私も"あぁあの子は溺れたんだ…"っと理解した。


すぐに救急車が呼ばれ、救命措置をしていた大人たちは事情を説明する。

私たち子供は帰り支度を済ませ、車の中でその光景を眺めていた。


車に戻ってきて、救急車で運ばれていった子供の無事を祈る大人たち。

事情を聞くと、祖父と遊びにきていたその子は川底に沈んだブロックから飛び出ていた

鉄パイプに引っかかり水の底に沈んでいたらしい。


翌日の新聞ではその子の訃報が掲載されてたいた。


私は、その日のことを思い出すたびになんとも言えない気持ちになる。

それは川の事故の怖さを思い出すとか、その子の不幸を悼む気持ちではない。


当時、水中ゴーグルをつけていなかった私には川底が見えていなかったからだ。

私は川の底をしっかりと見ることができていなかったからだ。

私が泳いで遊んでいた場所は、その沈んだ子供のすぐ近くで。

私は何度もその子の上を通り過ぎていたようだ。


その時のことを思い出すといつもぼんやりと浮かぶ光景がある。

それは水底にある、小さな人型の何か。


それがその子だったのかはわからない。

けれども、いつもぼんやりと思い出すのだ、川の底にあったその人型の何かを。


実際、あれはなんだったんでしょう。

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