告白
『あなた達!何をしようとしているのぉ?!』
ロボットのスピーカーから最大音量で叫ぶラビィ。
「な…何って、デートの約束なんだけど。」
タツローがロボットの方に答えれば
「まぁ♪」
両手を頬に当て、満面の笑みになるミホ。
『デェ~~トォ~~?
いやいや、あんた達敵同士のはずでしょ?
何を惚気けているのぉ!』
ラビィの叫びも大きくなっている。
「そうなんですか?」
タツローがミホの方に振り返るが、ミホは首を横に振っている。
「違うらしいぃ~ぞぉ~!」
ロボットの方に振り返り叫び返すタツロー。
『ちょぉ~~と、待ってなさい!』
タツローの返事に答え、一声叫んだ後、ラビィの音声が不通になる。
程なくして、コックピットから飛び出してくるラビィ。
ラビィが駆け寄ってくると、何故かミホがモジモジし始める。
「どうしました?」
「目のやり場に困ります…。」
タツローの質問に伏し目がちに答えるミホ。
「おまたせ…わっふっ!」
駆け寄ってきたラビィに学ランの上着を放り渡すタツロー。
「ミホちゃんが、目のやり場に困るってさ。」
「分かったわ。」
タツローに促されて学ランの上着を羽織り、前ボタンもとめるラビィ。
ようやくミホも面と向かって話せる状態になる。
「なぁ、ラビィ。
オレ達が敵同士っていうのは、どういう事なんだ?」
いつの間にか、タツローと恋人つなぎをしているミホもタツローに同意するように頷いている。
「こらこら、そこの手を離す。」
ミホとタツローの手を離そうとするが上手くいかず、イライラ気味のラビィ。
「全く…。
話を進めるわよ。」
ジト目のミホとタツローに促され話し始めるラビィ。
「これは、マザーコンピューターに残されていた記録なんだけど…。
そこのバケモ…コホンッ、ミホちゃんの乗っていたロボットが地上に降りてきたのが5年前のこと。
そして、ミホちゃんのロボットを排除すべく、世界各国の軍隊がこぞって戦争を始めます。」
「…私は言われもなく攻撃を受けてしまいました。」
ラビィが淡々と語れば、タツローの隣で溜息を付くミホ。
「今、わたし達が使っていたロボットが登場したのは半年前よ。
百数十名のパイロットが選抜されて、戦線に投入されて…散って逝ったわ。」
ラビィは空を見上げる。
「誰も私との対話を望まなかったわね。」
「…ごめんなさい。」
ミホの相の手に頭を下げてしまうラビィ。
「ラビィ…君は?
そして、僕は一体?」
タツローが吐露すると、ミホは不安そうにタツローの顔を眺め、手に力が入る。
ラビィは中空を見上げた。
「私は、ラビリスタ…外星系の怪物退治という迷宮へ勇者を案内する存在。
そして、何度目かの人生を送る者。」
そしてタツローに向き直る。
「貴方はタツロー、マザーコンピューターの奥底に眠っていた意志を持ったAi。
もはや人類は消滅し、残された人間のカケラとして、その肉体に宿らせました。」
タツローへ振り返ったラビィの顔は、機械のように表情を失い、声も抑揚を無くしている。
「それじゃ…僕は人間じゃないんだね。」
タツローの問いにラビィは頷く。
「先程も話した通り、わたし達は人造人間なのです。
そして、寿命は三時間。
いずれ自壊が始まり、この地上から永遠に消えるのです。」
「そ…そんな…あんまりだわ!」
ラビィの返答に、それまで黙っていたミホが割り込んでくる。
「折角、お話しできそうな殿方にお会いできたのに…やっと一人の時間から解き放たれると思ったのに…。
どうして?
どうして、そんな事になったの?
…まさか!ラビィ、貴女自身も…。」
「はい。
私は、あのロボットの中で勝手に合成されるだけの存在です。
ロボットとパイロットの間を取り持ち、双方の最高能力を引き出す装置です。」
抑揚のないラビィの声に、思わずタツローから手を離し、両手を口元にあて、驚きの表情になるミホ。
「人間は滅んでしまいました。
ミホ、貴女とこのロボットで戦い始めた極初期の段階で。」
抑揚のないラビィの語りは続くのだった。