「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
ここはおふだ専門店
ここはおふだ専門店『札束』
「札子くん、在庫の確認よろしく」
「店長……札子ではなく礼子です。いい加減覚えてください」
「お札屋さんなんだからさ、この際札子に改名しない?」
「しません」
このやり取りはもはやお約束。
礼子が仕事を始めると早速お客さんがやってくる。
「いらっしゃいませ」
「お札屋さんって珍しいから覗かせてもらったんだけど、色んな種類があるんだな」
お店を訪れるのは興味本位の人が多い。
礼子はいつものように淡々と接客を始める。
「売れ筋は必勝祈願おふだとか合格祈願おふだですね。受験シーズンですし」
「へえ……お守りとお札って何が違うんだ?」
「基本的に同じものですが、お守りは持ち運びが出来るようにした簡易版のお札と考えてもらえれば。効果はピンポイントで直接貼るお札の方が強いので用途に応じて使い分けるといいですね」
「なるほどねえ……これなんて普通の可愛いシールにしか見えないけど、これもお札なの?」
デフォルメされた可愛い動物の絵が印象的なシールを見て尋ねる客。
「ああ、それは動物除けのお札ですね。例えばクマさんのは熊除けで人気がありますよ。ネコちゃんの猫除けはアレルギー体質の方に喜ばれます」
小さくても効果は変わらないし、目立たない場所に貼ることも出来るのでシールタイプは人気が高い。
「こっちのマグネットは?」
「冷蔵庫に貼ると省エネになりますし、防腐効果も期待できますね」
「もしかして、この冷とか温っていうのは……」
「はい、保冷と保温ですね。ペットボトルや缶コーヒーに使うと便利ですよ」
「もう何でもありだなお札……だが、なんだか俺も欲しくなってきた」
興味深そうに店内を物色し始める男。
「お気に召したものはございましたか?」
「ああ、これが気に入った。妙に惹かれるんだよなコレ。どんな効果のお札なんだ?」
男が指差すお札を見てなるほどと頷く礼子。
「きっとそのお札をお気に召すと思っていましたよ」
礼子は男の額にお札をビターンと貼り付ける。
「な、何をする!? あれ……体が動かない!?」
「そのお札は吸霊札。貴方みたいな彷徨える浮遊霊を呼び込むお札なんですよ」
「そうか……俺は死んで……ありがとう……すべて思い出した……」
額に貼られたお札の効果で、男の体が光の粒子になって消えてゆく。
「良かったですね。悪霊になる前に成仏出来て」
「札子くん、新しい制服メイド服で良いよね?」
「煩悩退散!!」
「ぎゃああ、それ高いやつ!!」