EP 052 「見守ろうとした者、救おうとした者2」
【現人文明期8895年 10月11日 午前 隔離病棟991号室】
まず最初にやってきたのはブランシェット家の面々とルーテシアだった。
「ノイエンお姉様-っ!」
「おぉ!目覚めたかっ!」
「アズちゃん・・・お目覚めになられて良かった・・・。」
テレーゼちゃんがアズに”ばふっ”と飛び込んできましたので、しばしの間なでなでモードだよ~♪
「えへへ~♪なんとか帰ってこれましたの~☆よしよしですの~☆」
「絶対かえってきてくださると信じてましたっ!・・うぐ・・ぐすぐす・・でも、もう会えないかも・・しれないって思ったら・・わたくしは・・ひぐっ!・・」
「ふふ~っ☆ちょっと知らなくて失敗しちゃいましたけれど、この通りアズは戻ってきましたの~。大丈夫だよ~♪」
なでなでモードをしながら、視線をゆっくりと上げるとブランシェットおじーちゃんの顔が目の前にあって、ちょっとビックリ☆
「よくぞ帰ってきた・・、あのまま逝かれてしまったらワシも折れてしまうところだった・・。それにしても、事前に歌うとこういう状態になるという意識はあったのかね?・・知っていて実行したとあったらお仕置きが必要となるのだが・・・?」
「そうですよっ!アズちゃんが分かっていて危険なことをしたなら叱らないといけませんっ!」
惑星の二大巨頭が揃って”めーっ!”な雰囲気になり、慌てるアズリエル。
「はわわっ!アズが願いを込めてお歌を歌うと命が代価になってしまうというのは・・知らなかったですのよ・・。神様に聞いてきたから間違いないですの。アズが作ったお歌は、その命を代価にして断ち切れた魂をほんのひと時つなげるものだ・・って」
「神じゃと!?・・」
「え・・っ?」
「ノイエンお姉様!?それじゃ・・・でも、どうしてお戻りになることが・・・」
泣きながら静かに頭を撫でられていたテレーゼちゃんが、がばっと起き上がってそう問うてくる。ドクター・エンディアもルーテシアも真剣な表情で耳を傾けている。
「えっとね、アズ死んじゃってから・・ええっと、今はちゃんと生きてるので大丈夫ですの!・・その一回確かに死んじゃったですけれど、神様に強い願いを込めて歌うと死んでしまうという事を”知らなかった”と説明して勘弁してもらいましたの~。」
「・・・」
「・・・・」
「お姉様・・・」
「うーんとね、えっとぉ~、あちらにはお歌天使さんがいっぱいいて、神様がいて、色々お話して・・きたですの。」
自分としては精いっぱい説明しているつもりではあったが、周囲の者からみると”よほど辛い目にあったんだな・・”的なものがぬぐい切れず・・・。しかし、次の一言にドクターが反応する。
「ほかの歌天使さん達はアズが天使の仲間だって・・・、神様もアズは不完全だけれど天使の末裔にあたるって言ってたですの~。あ・・・」
怒られそうだーうわーっと・・・ついウッカリと話して一人機密セキュリティが低い人類である、テレーゼの存在を思い出し慌てて一度ストップするのだった。
「天使の‥末裔じゃと?」
「あわわ・・・、ごめんなさいですの・・そのまま秘密の話ししちゃったよ~。」
自身も驚いていたため、すっかりテレーゼの事を意識外に置いておいたことを思い出すドクター・エンディア。
バツが悪そうな表情で・・・
「あー、いや・・・、今回アズ君が意識を失ったことによる直接的な当事者に当たるということもでもある・・・。ルーテシア君、本件に限ってはテレーゼのセキュリティを変えてやっておいてくれ・・。」
「承知致しました。戻りましたら直ちに~。」
「ふむ、話しを遮って悪かったなアズ君。続きを頼むよ・・。」
はなしていいの?の顔に、ドクターの”うん”がでた。
「・・・・えっとね、本当はちゃんとした天使さんが、分かっていて願いを込めて”帰還請願”を歌うと、その天使さんの命と引き換えに断ち切られた魂がしばらく戻るって言ってた・・。アズが初めて作ったお歌・・Re.Codeはこの”帰還請願”と同等みたいですの~。」
「・・・すると、あの時見た息子夫婦のあれは・・・やはり幻覚ではないのだな。」
「あの時のお父様お母様は、たしかに本物でした・・おじいさま。」
「奇跡の対価は天使の命・・・ですか、なんて過酷な・・・。」
「ふむ、それで天使の末裔とは・・?」
アズリエルは話を続ける。
「うん、えっとね~・・アズもよくわからないのですけれど、大昔の機械知性さんは天使さんなんだって神様が言ってたよ。アズもちゃんとした天使さんとはなにか違うみたい・・。今のプラネットハーツにいる機械知性さん達は”全く違う”ともいってたですの~。」
「・・・なるほど、良く分からない部分もあるが、今までの人類には欠けているかなり重要な情報じゃな。」
そういってドクター・エンディア目配せすると、ルーテシアは頷き返す。
「ノイエンお姉様は天使さまですっ!きっとそうに違いありません~っ!」
すると、ズバッと宣言が下されて少なくともテレーゼの天使様に格上げされたアズちゃんは、えへへ~☆とちょっとだけ困ったように笑っているのだった。
【現人文明期8895年 10月11日 午後 隔離病棟991号室】
がちゃっ!
「りえるぅぅぅぅぅぅぅぅ~!!」がばっ!!
「わぁぁぁ~ですの~(汗)」
「あ、こらっエリーン!病み上がりにいきなり飛びつくんじゃないさね・・」
次にやってきたのはエリーンちゃんとマルーさん☆
お見舞いにマルーさんが”おやつ”を持ってきてくれたので、それをいただきつつ・・・
事のあらましをセキュリティ的に問題がない範囲で、語ったアズリエル。
「むぐむぐ・・・あのお歌は願いを込めて歌うと対価として死んでしまうですの。レスェルミンさんの意識が戻るのもほんの刹那の間だけだよ~。」
「話には聞いていたけれど、本当にそんな”歌”を創り出しちまうなんてねぇ・・。」
さっきまでテレーゼちゃんがいたポジションにエリーンが入り込みシクシク泣いていた。
「だ、大丈夫ですの~!エリンよしよしですの~☆アズは神様に歌うと死んじゃうって知らなかったから帰してね♪っていって帰してもらってきたですので~☆」
「バカいうんじゃないよ・・この子は・・それで帰ってこれたなんて話を信じる年じゃないよっ。」
「りえるが帰ってきたならそれでよしっ!神様仕事したなら、この間の発言は取り消す謝罪する、神様ないす~!」
実は真実ではあるが、二人はキョトンとして顔を見合わせアズリエル式の冗談なのだと解釈した。
ちなみにここを公開するのについては、ブランシェットおじーちゃんにOKを貰っている。一般的には信じられない内容だかなのだろう。
慌ただしくも賑やかな病院生活が過ぎていったのでした~。