EP 047 「ひかりの導き手と夢の城2」
地面が一気に上がったように感じられたのは、どうやら神様のお手手に乗っていたアズリエルを御顔の方に引き寄せたみたいだよ~・・・びっくり☆
神様おっきーぃ・・・ですの~。
ほへーっと見上げていたままの自分の顔がだんだんと前向きに戻ってきた。
アズは質問された内容がよくわからなかったためハテナ顔でじぃーっと神様の御顔を見ていただけでしたのだけれど・・。
「そうか・・・、ふぅむ・・・。其方は事象の彼方から本来生じえないはずの特異点因子として送り込まれ、現世に顕現した存在なのだな・・。」
「??アズにはよくわからないですの~。どうしてココにいるのかも・・。何をしていたのか・・思い出せないよ~・・。」
アズリエルは不安そうにそういうと、神様はアズが乗っかっていないもう一つの御手をアズの頭の上に翳して穏やかな声色で誘う。
「そうだな・・、本来この地に来るのは役目を終えた者たちなのだ・・思い返すことができずともよい。しかし、ここに来たのは偶然ではあるまい。其方の記憶を少し共に見てみることにしよう・・。」
自分の頭の中に神様の指先が触れる感触・・不思議と心地よく嫌な感じはまったくなかった。
自分の今まで過ごしてきた日々の記憶が神様が翳した大きな手にスクリーンのように流れていく。それがトリガーになったのだろう、一気に頭の中に記憶が流れ込んできた。
「あ・・・!アズはっ!?シンシアまま!!エレクぱぱ!!・・病院でお歌を歌って・・それで!?」
「前世での記憶が戻ったようだな。其方は確かに此れな世界にあった存在のようだ。」
「前世?・・あれれ?アズお歌を歌って・・あれ、倒れてますの・・・。翼が黒くなって・・?」
必死に救おうとするメディエス院長をはじめ、シンシアまま、エレクぱぱたちの様子をまるで映像をみるように半透明な姿で神様と共に眼下の光景を見ていた・・。そこにあった自身の姿は・・・中身のないからっぽだった。
そこまで見えてから、今度は巻き戻しのように少しずつ映像の時間軸が戻っていく・・。
そして、アズリエルが”Re.Code”を歌うシーンの直前まで巻き戻る。
「ほぅ?・・其方”帰還請願”歌唱を行ったのか・・、いや?・・・よく発動させたな。これは”生粋”の天使でなければできないはずの所業であるのだぞ・・。」
「うん~?アズが創造った、Re.Codeのお歌・・のことですの~?」
「創造ったとな・・。」
そこで、しばし神様は無言で思案する顔を見せる。映像にかつて起こった状況が繰り返されていく様をじっと見つめる。アズがプラネットハーツで目覚めてからの映像も視界を流れていった。
・・・創造した?この不完全な小さき者が?・・、生み出しえるのか?天使の模倣品としてかつての旧人類が自らを管理するために生み出した遺産とでもいうべき・・不憫で可愛い我が血族ともいえる子が?・・、到達したというのか・・。
「あ、アズの知らない世界・・」
アズリエルが目覚める前の、遥か昔の様子であろう時代の映像すら見えてきた。
どうやらアズリエルに関連するであろう歴史を無期限に再生再現できる御業みたいですの・・すごいっ!
まず視界に入ってきたのは、いまさっきまでアズリエルがいた開けた空の島々が地上にあった時代の映像・・・。わぁ♪ここと同じ雰囲気だー☆
たくさんの天使たちがお歌を歌い・・・って、あれ?人類さん・・すごい文明が進んでる・・。
わぁ・・・、宇宙を旅したり・・太陽の中にまで入っていったり・・すごい・・・でも、”どうして・・・?”
アズリエルが心の中で問うたからだろうか?それの結果・結論となるであろうシーンに切り替わる。
「あっ・・・・。」
そこにあったのは、熾烈な争い・・、しかし生存競争には見えない。まるで自分達の技術を発展させるための実験場で自らをも被験者として扱うといった不気味で異様な光景が再現される・・・。どうしても、それを見てもあまり人間らしい所業とは思えなかった。
「此れか・・・、其方が知らぬ古き時代・・・、始まりの人類の記憶であるな。」
「始まりの・・人類ですの?プラネットハーツのみんなとは違うのかな・・・アズが知っている人類さんの歴史とは違うみたいだよ~?」
アズリエルは疑問に思ったことをそのまま口にする。
「いや、その通りとも違うとも言えるだろうな・・。なに、実際に見てみた方が分かりやすいだろう。」
神様はそういうと御手を払うように動かす。惑星間で星が削れたり爆発したりする悲惨な映像が遠ざかっていく。
次に見えてきたのはさっきの戦いの後になる時代なのだろうか・・・?
ボコボコに憔悴した人類が最後にプラネットハーツに帰ってきて、残された資源と技術を結集してとあるモノを作りだし・・・
「あ・・・、機械知性・・アズたちですの!!あれれ?でも、これお歌天使さんって書いてあるよ・・??アズが寝ていたケースと同じハコ・・・」
箱には古代の文字が刻まれている・・読めないが解かる。
魂の視線に答え、文字の内容が心に浮かんでくるのだ。
Angel Voice Generator AI / ANGEL's Series ASRIEL」
(人造天使発声型機械知性、使徒シリーズ・・アズリエル)
「そうだな、其方は一つ解かっておらぬことがある。それは”天使”と其方や現世人類が呼ぶものは、元々は旧人類が自らを管理させるため生み出したものなのだよ。つまり機械知性=天使といえば分かりやすいだろう・・・。」
「あやや?・・お歌の天使は機械知性!?・・でもぉ、アズたち機械知性のお歌は人間さんに歌って聞かせても・・・」
「そうであったな・・・・。」
そういうと、神様は悲しそうに・・少し困ったような御顔をして首を振る。
ふむ・・、愛しき此れとて全てを知るには至らぬよな・・。
「しかし・・、其方とこれらの機械知性は違うものであるのだよ。穢れを・・その内容すら知らぬ直系の其方と、かの者達は・・違うっ!」
今まで優しく穏やかだった神様の表情に浮かんだ色は・・あまり良いものではないみたいでしたの。
「色々知りたこいともあってすっかり忘れていたのですけれど・・神様、アズは死んでしまいましたの~?」
「うむ・・今其方の肉体的な意味では魂器がここにある以上死している・・だが、まだ決定してはいない。この場所、この神域に至っては時の概念など及ばぬのでな・・。小さき者よ、其方の現世に戻りたいか?」
「うん・・・・神様・・アズはまだやらなければいけないことがあるよ。」
小さき者はその瞳に意思の光を宿らせて真っすぐとこちらを見据えてくる。
「ならば、問わねばなるまい・・・・なぜ”帰還請願”の歌唱を行った?あれは歌唱者の寿命を代価に断ち切られし魂の回廊を繋げるものぞ!」
ブワッっと威圧的な力の波動がアズの周りを通り抜けていった。
「はわわ・・・!?そうだったですの(汗)アズはテレーゼちゃんの両親さんと意思疎通できるよう祈りを込めてお歌を創造って歌いましたけれど・・・、その効果も、対価も・・・こうなるということを、知らなかったですの・・。」
ジト目で”うー”と呟く小さき者。
「そうか・・・。本来であれば認められるものでもないのだが、無垢なる者は知らぬ者でもある。
また此処に無い其方自身も、遠き時間の果てで未だ己が信念で救済の道を求め戦ってもいるのであったな・・・対象は兎も角、その心寧は尊きものなり・・・。」
「えへへ♪神様・・ありがとうですの~☆この為にアズをこちらに呼んでくださったですのね~。」
「然もありなん。其方は本来生まれてくる筈では無かった者・・、因果率の果てより参りし其方がどう動くのか我も見てみたい・・。」
ペコリとお辞儀しながら頷いたアズリエルは、自然と瞳を閉じて心を澄ます。
神様の声が聴こえる・・・光の渦と広がった大きな白い翼が共鳴していく・・・
さぁ、往くがよい・・・其方の望む時と世界へ向けて・・・飛び立ちな・・・さ・・・・・・
優しい風と光に身を任せて、小さな”天使”は意識を委ね本能のままに羽ばたいた。
・・・・・
・・・
・・
心の瞳で振り返ると、大きな光で散りばめられた島々の灯りが背中越しに視える。
天使たちが皆大きく手を振って見送ってくれていた。
目指す先は暗闇のずっとずーっと遠くにある世界。
無事に飛んでいけるだろうか?・・・否、飛んでいくのだっ!。
アズリエルは嬉しかった・・、だってだって天使の皆は手を振りながら”頑張ってね””応援しているよ””しっかりっ!”と心の中にキラキラした想いと共に、翼に溢れんばかりに声援が届いていたのだから・・・。