EP 038 「機械知性たちの休日☆舞台の裏側で~♪」
「現人文明期8895年 7月25日 政府庁舎内プライベートルーム にて」
久しぶりの休日ですわね~♪あ~~っ
私室のグラフィックカーテンを払うと宇宙小鳥AIたちがチュンチュンしていた。
オハヨー♪オハヨー♪
陽気な声を上げる私はルーテシアァ♪素敵な休日~♪るるらら~♪おはよー♪
近日大変に忙しかったため、OFFタイムは本当に久しぶりですね~。
今日は久しぶりにインカムを外して、秘書さんではないレア私服姿なルーテシアだった。
え?いつものルーテシアっぽくないですってー?
そういえば~、私はONとOFFで性格が異なると言われますねぇ~。
私の休みはプラネットハーツのシステムメンテナンス等に影響を受けますので~、不定期ではあるのですけれどこうして時折”ルーテシア個人”としてのお時間をいただいてるんですよ~。
さてと~、まずはアズちゃんの配信チェックからですね~♪
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あぁ~♪癒されるぅうう~。抱き枕をぎゅむー♪としながらエヘエヘ☆タイムに突入する。
そういえば最初にテンニエスさんからいきなり大規模なイベントをしたいと、先月・・えーっとたしか6月27日にご相談いただいたときはとーっても驚いたことを思い出しました~。
だってぇ・・・、通信を頂いて、最初の一言が・・・
エリーン・テンニエス
「りえるがデビューする前に大きなイベントしたい!一帯の道路封鎖して使わせて!・・・・
いつ?・・・今日の午後2時から!」
「エェェエエエー!?ほ、本日ですかー?それはムリというもの・・」
「これも”りえる”のため、えーっと・・”アズちゃん”のため!、それにタダでとはいわないっ!」
こ、困りましたね~。アズちゃんのためといわれますと弱いですが・・・でも、規則や準備が色々ありますし~。
当日いきなりはさすがの私でも・・・
「いまなら!!プロデューサーのエリンPが公式ファンクラブ会員番号”マボロシの0番”を特別に提供することを約束するーっ!今しか手に入らない!他からは手に入らない!しかもカード保持については秘密厳守のおやくそくー♪さぁー!さぁさぁさぁさぁ!?」
映像電話口のろりーた少女は遠慮なくバンバン捲し立ててくる・・。映像のうさみみを見ているとまるで催眠にかけられたようにやるべきだと感じられてくる・・・。チラリと端末を確認すると時刻は11時・・本番開始までたったの3時間!?
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「うっ・・・マボロシの0番・・・、いましか・・ゴクリっ・・・・・・・・・・・・ナントカシマス」
「よく言ったー!それでこそ0番を持つにふさわしーい!おじーちゃんの方はもう手を打ったから大丈夫。それじゃ道路封鎖と・・、あと警備局お手伝いにだしてねー♪」
個人の権限で許された限界までプラネットハーツを使い、実現可能なプランを組み立て始める。
道路占有のための電子標識変更手配、申請各種、臨時の警備局の人員投入について・・etc
当然ながら全く期限が間に合っていないため、”政府公式”のイベントとして登録せざるを得なかったのだがこれには私に加えてドクター・エンディアの承認が不可欠。
恐る恐る端末に向かってドクター・エンディアの本日予定欄をチェックすると・・・そこには何故か”空欄”のイベント申請書にドクターの実行許可サインが入っている不思議なデータがあり・・・、それにルーテシアの署名を加えて、ハチャメチャな警備計画とセットで申請ボタンを押してみたところ、なぜか受理期限を無視してプラネットハーツに受理された。
「ええ!?嘘っ・・・申請できちゃった。」
「0番なーいす!」
ちゃんとテントに席もグッズも用意しとくからー!と元気な声が響いてそこで通信は切れた・・・。
交渉していたのはわずか1分に満たない。
断り切れない条件をしっかり下調べして、後顧の憂いとなりそうなドクターは先手を打ってある・・・。さりげなく追加オーダーまで通して素早く席を立つ胆力・・・うぐぐ、とっても政府交渉人に欲しい人材ですねぇ・・テンニエスさんっ・・。
すぐに追っかけでメールが届き開いてみると、画像が一件添付されており・・・、”りえる饅頭”の写真と共に機械知性でも食べれる!とCMが入っており・・・”お席にお届けします!”とメッセージが添えられていた。つまり、来なきゃ食べられないぞー!という明確な一手というわけだ。
鮮烈に記憶に焼き付いた思い出に浸りながら、ゴールドに輝く”0番”と書かれたマボロシのファンクラブカードを胸にぎゅーっと抱きしめ・・・ふふっ、イベント楽しかったなー♪と笑うルーテシアだった。
*~一方その頃~*
【Angel Doll Factory アニス・エンジェルリング プライベートルームにて】
ふわぁぁ~☆AI羊さんが1機~AI羊さんが2機~♪
ボケーっとヨダレを垂らしながらAI羊を数えるベッドに同化したアニスの姿があった。
ちなみにベッドでゴロゴロしており、全く起き上がる気配は・・・ない。
あーー、システムメンテナンスの日はお休みの日~AI羊さんが3機~♪
素敵なーひつじさーん4機~♪
この間のイベント楽しかったなーホクホクだったなー♪と喜びに浸るアニス。
そう、実は決してADFの外に出ないという触れ込みだったアニスが、初めてプライベートで外出した先が”りえるえりん”のイベントで屋台出店するというモノだった。
某日・・・ADF端末がコールされたため、アニスは通信をONにしたところ・・・
いきなり後光が指す不思議な背景が写り、影になった小さな女の子?が次のように捲し立ててきた・・・!?なお、この通信は二回目である。
「わたしはエリンP、アニス・エンジェルリングぅー!そなたに天使の環を与えるものなりぃ・・・」
「は・・・ははぁ!」
気が付いたら端末に向かって低頭しており・・・、まったく意味が分からないのに心の奥深くに”逆らわなければ願いが叶う”という謎の感覚が瞬時に沸き上がるっ!、気が付いたらもう本能に従っていた。やっぱり前回色々要求された時と同様に体が勝手に動いてしまうのだ。
「天使の環を増やしたいという、そなたのぉー願いをかなえよう~!ついては以下の内容を頭にたたきこめ~っ!」
1、さっさと身支度をして自分のエンジェルリングを付けて指定の会場にむかえ!
2、オネダリして愛想を振りまきながら、スポンサーを求めるべし!
3、そこに最適な者達を送り込むから、精一杯持て成して”予約”だけ先にとって入金され次第どんどん製造しろ!
4、これをクラウド・エンジェルリングという、天使の環を世界に増やすただ一つの方法である!
「以上ッッ!解散行動開始っ!!」
荘厳なBGMと共に導き出された”神の一手”にアニスは猛然と動き出すのであった。
指定の場所に入り次第バカみたいに天使の環をアピールしまくったところ結果は・・・
「予約数2000リングオーバー!続々前金入金中っ!!」
思わず声に出して叫んでしまうアニス・・。あぁ・・・神様(えりんP)!!・・・。
アニスが休日を過ごしている今この時もADF施設の一部を間借りして、”天使の環”を生産している。
もちろんこれには裏があった・・・。エリンPは基本与え過ぎず奪い過ぎないポリシーなのだ。
ちなみに、この機会にアズちゃんの配信をチェックするようになっていくアニスはもう完全にエリンPの手駒と化していたっ。
えへへ~ぇ☆イベント楽しかったなー♪またやらないかなーと嘯くアニスなのだった。
【少し前のある日・・・】
【現人文明期8895年 某月某日 スタジオ・マシンハートにて】
「ふっふっふー、エリンはマルーに相談があるー!」
「うーんなんさね?あらたまって・・・」
「マルー食べ物飲み物好きでしょー?たくさん機械知性に広げたいー?」
「そうさねぇ、そうなったらいいと思って活動しているよ。あたしのもう一つのプリレゾンデートルみたいなもんさね。」
「うーし、ならその願いエリンがかなえようー!ぶつはADFで作ってるー?手元に一杯あるー?」
「あぁ、そうだよ。製造は全て委託しているからあんまり手持ちにはないねぇ。ふぅー。」
「ADFにはエリンから話をつける、入金も後からでいい条件で数万個製造できるようにするっ!」
「ふぅー・・ぶはっ!けほっけほ・・そんなにたくさん注文してどーするんだい?」
「これやる!来る人いっぱい!そこでアピールして一気に広げる!!都市中に広げる!!」
そういうとエリーンは企画書?のようなものを出して説明を始めるのだった・・・。
【Angel Doll Factory アニス・エンジェルリング プライベートルームにて】
【現人文明期 某月某日 イベントよりかなり前の日】
「か、かみさま・・・コレを数万個製造しろ・・・可能な限り・・・ですかぁ~?」
「うむー。”上”に話は通している。気にせず言われた通りにするよろし~♪」
え・・・話は通している・・?ルーテシアさんかドクターさんですよね~?神様は・・一体なにもの?
「でもぉ・・・確認しないとさすがにこれはぁ・・・」
「だいじょーV!!”ブランシェットおじーちゃん”は陥落済み”ルーテシアお姉ちゃん”もばっちり落とす準備はできているっ!・・」
あー・・・、ドクター様がOKならいいですよね~♪ルーテシアお姉様も大丈夫になるならいっかぁー。天使の環・・・広げたいですぅ・・・。
【これよりしばらく前のこと・・・】
【政府庁舎 ドクターエンディア 執務室にて】
「うむ、ラング・ブランシェットだ・・・うん?お嬢ちゃんは誰かね・・?この番号をどこから・・・??」
「私はエリンP!そなたに救いを与えるものであーる!!ドドン!(←自分の口で言っている)」
「いや、ワシは特段困ったことなど特にない・・いたずら電話は・・」
「テレーゼちゃんに寂しい思いをさせているッ!・・、そんなおじいちゃん向けにポイント挽回する秘策がっ!テレーゼちゃんに年の近い人類少女が言うから間違いないっ!!」
「!?・・・・聞こうか・・・。ふむふむ、アズ君が主賓となるイベントに子供受けするおいしい土産付き・・?」
おおむねこんな感じでエリンPに誑かされた人々は、等しく彼女の悪だくみに手を貸すことになったのだった。
エリーン・テンニエス・・年若き人類・・、彼女の背景にはやる気しかない!だがその情熱こそは本物中の本物なのである。