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プラネットハーツ ~世界の心臓~  作者: アズリエル ノイエン アーシェライト(お歌好き幼天使vtuber)
第一章 「現人文明期 8895年代 ~主観現代 始まりの礎~」
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EP 029 「アンチレス・メディカル」

挿絵(By みてみん)

【現人文明期8895年 6月07日】


えーっとぉ・・あんちれす・あんちれす・アンチレス・メディカルー♪

白い大きな建物発見ですの~☆


きょうはブランシェットのおじいちゃんから、レスェルミンさんっていうのを患っている人達を

”よく見てくるように”ってお願いされてやってきたですの~。



シンシアままは無理しないでもいいよって心配してくれたですけれど、この時を逃しては

いけない・・そんな気がしてウズウズしてたです、絶対に来たかったような気がする?ですの。


シュィィィィィーン・・自動扉さんが開いて病院内に入るとそこは・・・



「皆どうして一列に並んでる??ですの・・・?」

不思議な光景にキョロキョロしていると、青い長髪を後ろに垂らして止めている機械知性さんが優しく話しかけてきた。


「やぁ、君があずりえ・・うくっ、・・・アズ君かな?ようこそアンチレス・メディカルへ!

私は病院長をしているメディエス・カプセルというんだ。」

本当に名前が呼べないのだな・・、これは驚いた!翼にリングのある機械知性など初めてお目にかかる・・。首のプレートすらもナシか・・実に興味深いな・・。



「メディエスさんこんにちえる~ですの♪ブランシェットおじいちゃんから見学に行って欲しいと頼まれましたアズリエルだよ~。」ペコリ。


ご挨拶を交わしつつも、ついつい謎の行列に目が行ってしまう。ずーっと端っこから反対側まで数えられないくらいの人々が4列でキチット立ちながらも、ぼんやりした表情で並んでいる。



「やはり、外から来た人はあれが気になるかい?これはねレスェルミン”初期症状”患者の列なんだ・・。彼らはあそこに順番に並んで待ち、食事を受け取り、自分の病棟へ戻っていくんだが・・

毎朝ナースに”そう言われた通り”にしか動けないから、1cmの狂いもなく立ち、順番の間違いも決して起こさずに行動するんだ。わざわざ端から並ばせているのは身体が鈍ってしまわないようにする運動のためでもある。」


どの程度リハビリ効果があるかはまだ良く解かって無いんだが・・と少し眉根を寄せながら説明してくれる。



そこには、まるでロボットが足並みを揃えているみたいに綺麗に動いている人、人、人。

「これは・・・みんな人間さんですの?、わたくしたち機械知性さんはいない・・?」



「あぁ、そうだね。これは人類だけしか罹患りかんしない。機械知性たる私やアズ君は決して

わずらうことはないと思うよ。ついてきたまえ・・・そろそろ次の病棟の列がこの辺りに待機する頃合いなんだ、院長室で続きを話すとしよう。」


列に待機している人達の様子がとても気になったが、背を向けて歩き出したメディエスさんを追って場所を移動する。



【アンチレス・メディカル 院長室】

【アンチレス・メディカルセキュリティAI ウィッシュ・ザ・リザレクト245号】

「Pipi・・院長オカエリナサイ、ゲストサンヨウコソ!心穏ヤカニ光満チルコトヲ祈ッテ・・Pid」


「さて、まずどこから話すとするか・・、アズ君は”レスェルミン”について知っていることはどんな感じだい?それを聞いてから説明した方が分かりやすいと思う。」



「えっと、アズは殆ど何も知らないですの。でも、分かっていることもあるよ、彼らは心が極端に少ないですの。まるで中身が空っぽみたいに・・・」


これは驚いた!、今までテキスト的に解釈したレスェルミン患者の知識を返されたことしか経験が無かったし、それを不思議にも思わなかったが”中身が空っぽみたい”だと!・・この視点はひょっとすると?・・。いや・・考察は後にしよう。



「面白い視点だね、”中身が空っぽみたい”というのを事前知識なしで”感じた”のなら満点に近いとおもうよ。改めてこの病気”レスェルミン”について一から説明してみよう。もしかしたらアズ君にとっては逆に目新しい発見があるかもしれない。」


うん、聞きたいですの!と真剣な顔で聞く姿勢になる目の前の幼子に対し、メディエスはなるべくかみ砕いて分かり易くできるよう整理しながら静かに語り始める。


「まず、この病気は発見されたのが数千年も前の大昔であるという記録が残っているんだよ。

昔の人類、そして時の機械知性たちが総力を挙げてこの病を治療しようとした。・・むろん特効薬を開発しようとしたり、せめて進行を遅らせる事は出来ないかということも含めて、長い長い年月努力してきたんだ。・・・わかるね?」


ここで一旦言葉を切って、アズ君の方に視線を向けると”こくん”と理解を示しているのを

確認する。うむ、外観年齢のわりに理解力がある・・・。話しているレベルの調整はそう問題ないなと判断して続きに戻る。



「そしてその悉く(ことごと)が全て失敗に終わった。この病気は直す手術もできず、特効薬の開発もできず、遅滞療法ちたいりょうほう(*1)ですら不可能だったんだ。何よりあろうことか原因すら未だ分っていない状態といっていい。」


**********************************

(*1)遅滞療法=人間さんたちの世界のエイズさんみたいに”治せないけど発症や進行を遅くする”タイプとでもいうべき治療法のこと。完治できないが罹患者の命と生活を守るという意味では欠かせない重要な治療アプローチの一つ。

**********************************


「つまり治った人は居なくて、みんな死んじゃうですの・・・?」

「いや、死亡者という意味ではここ数千年でおそらく一人も被害者はいないんだ・・・。

アズ君の言葉は前半はその通りで治った者はいないんだが、後半については違う。」


「死んじゃうひとはいない・・?あれ?でも治った人はいないなら、いずれ寿命でそのまま亡くなってしまいませんの??」


「そうなんだ・・。だからこの病気はまるで呪いとしか思えないんだよ・・。どうか驚かないで聞いてほしい。レスェルミンは発症すると、”死ねなくなる”のだ。寿命だろうと、外傷ケガだろうと、酸欠だろうと・・・ね。」


そのまま口には出さず、圧死、溺死、失血死、絞死、などいずれも不可能であった過去データを思い浮かべるが、目の前の小さな存在に対して言うべきではないと心の内にしまい込む。



「つまりね、一人残らず生きているのさ・・・、何千年もの昔からこのままの状態で、変わらず、年を取らず、言われたままに反応するだけの状態で全員・・ね。」


「!・・・そんな!・・・ひどい・・神様はそんなこと決めてないですの・・。最後の安らぎすらも取り上げられるなんておかしいですの!天のことわりに反する・・ですの。」

はじめは強い調子だった言葉は、徐々に力無く、重くなっていった。


「色々な方法を試みてきた・・・、ウィルスでも無ければ放射線障害でも無く、感染症でもない・・。アズ君には少し想像しににくいかもしれないが、病院で徹底的に検査をした結果がなんて出ると思うかい?」


「・・・・たぶん、この人は健康です、みたいな結果・・ですの?」

「・・・そのとおりだ。何万回やろうともあらゆる角度から検査しても”健康状態は良好”としか出ないんだ・・・。自らの意思で何事もできはしないというのに!」


今の私は酷い表情かおをしているのだろうな・・、だが抑えることはできず・・。

不思議とこの小さな子との対話は私の精神こころのカバーを取り去ってしまうようだ。


「大体はこんな感じだよ・・、さて、先ほどロビーにいたのは”初期症状”即ちまだ感情的起伏が弱いがある程度は心が残っている者たちだったのだが・・・、”重度症状”の患者も見ておくべきだと思うよ。」


そういって別の病棟への道を歩き出す。

何度か長い自動通路を乗換え、さらに重力EVに乗ること15分・・・


【アンチレス・メディカル 終末病棟ラストランド/第2149781 安置室】


「今から君が面会するのは”ミシディア・エルトラム”という男性患者だ。

彼は発症からおよそ1000年は経っていると考えられる末期完了形のレスェルミン患者だ。

先ほどのロビーにいた者たちとの違いを、アズ君自身で感じてみて欲しい・・」


プシューウン!扉が開くとそこに一人の男性さんが窓に向かって座っていた。

ライトブルーの頭髪が窓から差し込んだ光に反射して思いのほか健康そうにみえる。

アズはてっきりベッドに寝ているようなイメージを抱いていたので少し面食らう。


「・・・エルトラムさん?こんにちえる~ですの♪わたくしはアズリエルっていうんだよ~☆」

思い切って声をかけてみる・・すると首と頭だけがスッと声をしたアズの方に向いた・・・


「・・・・・あずり・・える・・コンニチワ。」

辛うじてアズの名前を途切れ途切れ口から言葉を放つと、灰色の眼差しでしばらくこちらを見つめてくる。


「あの・・ご機嫌いかがーですの?きょうはとっても良い天気だね~♪」

「・・・・状況・・ワルクナイ、晴テン・・・・。」


言葉は途切れ途切れだけど、一見普通に感じられる・・・でも、”表情が全くない!”。

悲しみも苦しみも疑問も喜びも・・そこにはナニモナイ。


無表情、無感動、無衝動、無欲求、つまりこれが・・・永続性心身喪失疾患レスェルミン


少し泣きそうになりながら、言葉を続ける。

「窓の外なにか面白いものでも見えたですの?ずっと見ていたから、気になるよ~(キになるよ)。」

「・・・木ニナル・・・・」

最後にそういうと微動だにしなくなり・・・、呼吸が止まったようにすら見えた。


「あの・・?え・・うぅ・・?気になる?!木になる?ぁ・・えぇ??」

とくん・とくん・とくん!心臓の音が激しくなってうまく息が吸えない・・っ・!・周りがよくみえなくなっ・・

ぱたん・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


まだ夕方というには早めの時刻、ガルの手によって診療所に運び込まれた

本日最後の患者は、アズリエルとなってしまい・・・。


小一時間ほどで意識を取り戻したが、その日は眠りにつくまでリエルの嬢ちゃんは

遂に一言も言葉を発することは無かった。



【リリエンタール&ハーモニクス診療所 深夜 アズリエル私室】


心少ない原因見つけた・・、心少ない理由わからない。心無くなったのどうして・・?


心死んだら身体もいずれ・・・、身体が死んだら心は閉ざされる。

神様がそう作った・・・・例外は・・・ない。

誰かが捕えている・・?無理に押しとどめている??ひどい・・ひど・・・い


そうつぶやく枕元には月明かりに照らされて小さな水面みなもが悲しげに揺れていた。


挿絵(By みてみん)

えへへ~♪読んでくださってありがとうだよ~☆



気に入ってくださったら



ぜひぜひ本作品“プラネットハーツ”の


【ブックマーク】さんと広告下に表示されている


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら嬉しいですの~☆



みんなの感想さんを楽しみにしてますの~☆



アズはVtuberさんをしてますので



【Twitter】


@vtuber_asriel 遊びにきてくださいませね☆

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