EP 027 「活動報告と真実の開示 その2」
【現人文明期 8895年 6月02日】
【政府庁舎ドクター・エンディア執務室】
ひとしきり泣いて落ち着いてきた頃・・・・
「これが代々ドクター・エンディアだけが背負ってきた罪過なのだよ。人類の罪と汚れた歴史をただ一人ずっと引き継いできた・・・。ワシがこの記憶を引き継いだその日、正直自殺しようと何度も思った・・・、だができなかったのだ。もし罪の歴史さえも全て忘れた人類であったなら、今以上の災厄が降り注ぐような気がして・・な。」
私は黙って全てを背負ってきた老人の独白を聞いていた。
「正直なところ、君が天使様本人から”天使は人類を見ててなんかないっ”との言葉を聞いて他の誰でもない、ワシが一番救われた気持ちになったよ。この言葉は代々のドクター・エンディアが最も許しを請うべき相手から聞きたかった言葉だろうさ・・。まだ我々は何一つ贖罪などできてはいないというのに。」
私は確かに自らの意思で踏み込んだ、そのことに後悔なんてない。それにしても何故そこまでして私に情報を開示する必要性が・・?・・あぁ、なるほど・・だから”合格”ってそういうことね。
私はしっかり顔を上げて目の前の相手にハッキリと言葉を向ける。
「つまり、私が次のドクター・エンディア候補になった・・という解釈でよろしいでしょうか?」
「その通りだよ、長い間・・それでも歴史から見れば僅かだが、人一人が背負うにはあまりにも重い問題だ。見ての通りなんの因果かこの年までワシはレスェルミンを患ってこなかったのもあってな・・。しばらくの間公表はしない、だが次代は君がドクター・エンディアとなるだろう。」
「乗りかかった船ですもの、途中下車は致しません主義ですので・・ふふっ♪」
これでもそれなりに覚悟は決めてきたつもりよ。少し驚いたけどまぁやるしかないわね!
やってやれないことなど、ありはしないのだから!
「考えてみれば、ドクター・エンディアが一人で全て抱えまなくてはいけないなどという法律は
無かったわけじゃしな・・と寂しそうに、だが少し嬉しそうに共犯者然とした顔で老人は茶目っ気たっぷりにウインクした。」
およそ話がまとまったところで、執務室の自閉モードが解除され、しばらく・・・
「失礼します、ルーテシアです。」
「入りたまえ」
入室してきた機械知性の才女はチラリとシンシアの方を確認して、ある要請を切り出してきた。
それは”アズちゃんを機械知性側の第一号者としたレスェルミン患者の見学兼慰問役”の受任について・・だ。
「レスェルミン患者の見学と慰問・・ですか?」
「はい・・、現在シンシア様の庇護下にありますアズちゃん様に是非ともお願いしたく・・噂に聞くところによると歌に興味があるとのことでしたので、オリヴィア様と同様の歌唱慰問活動などをされてみてはいかがかと・・?」
「そうねぇ、確かにアズちゃんは歌に執着を見せますし只今もスタジオへ通って練習中ではありますね。一度本人に希望を聞いて、其の上でよろしければといったところでしょうか?」
「承知致しました、もちろんご本人の意思を尊重致しますのでよろしくお伝えくださいませ。
・・・あ、それとADFにアクセスの際は事前にご連絡いただきたいとお伝えいただけないでしょうか?”どーなつ画像”と言っていただければ把握していただけるのではないかと・・?
アズちゃん用の正規のIDをお渡ししますので力任せのアクセスだけは何卒ご容赦をいただきたく・・・(;'∀')」
とても言いにくそうに白旗を切り出すルーテシアがなんだか可笑しくて、笑顔で請け負うシンシアだった。