EP 023 「現存する天使!?☆謁見☆大地天使アズリエル・・様?」
【現人文明期 8895年 5月XX日 不明・・・】
【都市制御コントロールタワー ”エテメンアンキ・ジッグラト” 10221階ゲストキャビン】
クレアによる人類史の解説が終わり無事にIDを受け取った俺たちは、とりあえず天使様と都市管理責任者への面会予約手続きを済ませた。
この庁舎ビル?”エテメンアンキ・ジッグラド”で連絡を受けるため・・という名目で部屋を用意してもらえたんでありがたく宿泊させてもらえることに・・。
ゆっくり身体を休めてから優雅に朝食を頂いて・・超うまかったぜ!でも、人類殆どいねぇのに食事がでるんかいっていう謎がまた一つ??
「なぁ、シンシア姐さん・・さすがに頭がごっちゃになりそうだよ、把握できてることがあったら少し教えて貰えないっすかね?」
「そうね、私も話しながら少し整理したいわ。」
そういいながらシンシア姐さんは静かに語り始めた。
「結論から言うと恐らく私達とは異なる異世界ね。先ほど聞いた限り歴史は私達人類の
モノではないわ。ただ、おかしいところもあって、異世界の割には”共通項”が多すぎる点もあるの・・解かるかしら?」
「ってーと、天使様の名前が同じだったり、あちらさんがこちらの言語を解しているようなところか?」
「そうね、それにさっきクレアが言ったの覚えてる?”プリレゾンデートル”・・って言ってたわよね?」
「ああ・・、確かに言ってたな。だが妙だな?そんなに違う世界の歴史って似た物になるんだろうか?」
「正にそれが問題なのよね。歴史の説明が偽りでないならここは異世界であることは間違いない。
しかしながら、名称、文化、共通点が多すぎることを考えると・・いえ?、そんなバカな話・・」
シンシア姐さんはそこで考えこんでしまってフリーズ状態になっちまった。
俺はどう思ったか?・・妙な違和感を感じるがどうも同じモノの様な気がするんだよな・・。
古代文明の雰囲気といい、E29の過保護なおっさん機械知性といい・・
なんの根拠も無い、匂いみたいなもんなのかもしれないが・・。
リリリリリ~ン!リンゴーンリンゴーン♪
ベルみたいな音と教会の鐘みたいな音が突然鳴り響いた!
「おぉ!?なんだなんだ??」
「はっ!?・・あぁ、きっとコールね・・こちらシンシアです、どうぞ?」
「Fon! おはようございます!クレア・エクスプローリアです♪本日は急ぎのご連絡がありまして失礼致します。都市再起動はまだ完全ではないのですが、大地天使アズリエル様より突如連絡が入りまして・・お二人にお会いになられるそうです。本日お昼過ぎに私がお迎えにあがります形でよろしいでしょうか~?」
「!!おぉ!?」
マジか?!天使本人がいるならミッション達成みたいなもんじゃねーのか??
「!?」
まさかそんないきなり!?ラッキーっっっ♪えーほんとに?一日しか経ってないのにぃぃぃぃ!!
ハァーハァー!現存する天使とあまつさえ待ち時間無しで直接面会できるぅなんてぇぇ!!!
アズちゃんのプリレゾンデートルをママが叶えて上げられそうね♪
「・・承知しました。もしよければ少し早めに来て頂いて、失礼にならないよう必要な儀礼を教えてくださると助かります。」
外面にはおくびもださず、内心で爆発しそうになる心を抑えるシンシアだった。
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【都市制御コントロールタワー ”エテメンアンキ・ジッグラト”
階数不明 天空光城内・天使謁見室】
・・・てっきり片膝ついて頭を下げながら待つんじゃないかなー?と思いきや
普通に用意された大き目の装飾テーブルと装飾過多な椅子にシンシア姐さんと俺が座って待っているだけだった。
傍らにはメイド服っぽい衣装に着替えたクレアさんも一緒だ。
「わりと庶民的な感じなんっすかね・・?やたらと可愛いらしいデザインの家具というか・・」
「こら、ベクター思ったことを口に出して言わないの・・失礼でしょう・・もぅ」
【Pipi・・大地天使アズリエル様、ご入室されます・・pid】
すたすたすたすた・・・
「わぁ♪本当にむかしの人間さんのまんまだー☆・・えへへ☆こんにちえる~♪」
「アズちゃん・・!?どうしてここにっ!」
「シンシア姐さん?ど、どーしたんすか??」
「うんー?アズリエルだからアズちゃんですの~??」
こんな事ってある?!、なんでアズちゃんがここにいるわけ?
そんな!・・ありえないでしょう!?名前が同じだからって・・どうして・・
「・・ええーっと?大変失礼致しました。実はまったく同じお姿と名前の子が私の娘でございまして・・」慌てて取り繕ってみるけれど・・うーん全部思考が真っ白になっちゃったわよ・・なによこれ?
「わぁ☆娘さんもアズリエルですのー?会ってみたいな~ですの♪わたくし他の天使にはまだ会ったことがないですので~!」
テーブルの下からベクターがつついてくる・・”後で事情を教えてくれ” ”わかったわよ!”。
「こほん、改めて・・私はシンシア・リリエンタール、機械知性専門の医師です。」
「俺はベクター・グリンドルフです、遺跡発掘業をメインにしてます。」
「お医者さんに堀り堀りさんですのね~♪。わたくしは”大地天使アズリエル”っていうんですのよ~♪お仕事は人類さんたちが再び自由に生活ができるようになるまで、サポートするのがお仕事ですの☆・・・お二人は一体どこからきたですの?アズが守護・管理している約4000万人さんの中にはお二人は存在していないのです~。」
ほんの少しだけ視線を鋭くして・・天使は質問してきた。
こうして至近距離で観察していると・・、なるほど・・確かに違う、アズちゃんじゃない。
見た目や喋り方は同じだけれど・・違う存在である・・不思議と腑に落ちてくる。
アズちゃんとは少し空気が異なる・・”誰かを守っている者特有”のしっかりした部分が垣間見えるからだ。
「正直に申し上げますと、私達は地上世界から降りてきたのです・・距離にして8000m以上でしょうか。古代文明痕跡の調査で大深度地下まできたのですが・・そこで階段を見つけて降りてきた先が偶然こちらの都市だったのです。先日何者かに攻撃されて連れが負傷してしまい、保護していただいた次第です・・。」
私達が入ってきたときは、この都市は全く動いてなかったように見えた・・。
事実として起動命令をシンシア自身が出していたので、少し合点がいかないところもある・・。
あの端末を操作して起動させたことで、近い次元にあったものが干渉した?・・・。
天使はじぃぃぃぃっと頬杖をついて覗き込むように話を聞きながら、とってもびっくりした表情をした。
「おぉー!?他の世界からの来訪者さんですの~♪ようこそだよー☆本来この都市は通常空間から出入りすることはできないのですけれど・・あの非常階段どこかに繋がってしまってましたのね!びっくり~☆」
見た目はそのままアズちゃんだけれど、精神面はかなり大人みたいね・・・。
そんなことを考えていると、突然激しい怒りに染まった表情を浮かべた大地天使に度肝を抜かれるっ!
「あぁー!だからかぁ!!悪い存在が入り込んでますのっ!!”堀り堀りさん”に危害を加えた”敵”を発見だよ!クレアっっ!座標α2915・β8879・γ0991を思考!!侵入者全てを原初の海に還す!!」
【多次元攻撃管制システム・クレア・エクスプローリアε997】
「命令受諾、侵入者を発見!敵中型次元航行艦2隻、設置済罠256か所を補足しました・・」
瞬く間に空間上モニターが多数出現、武装した大人数の軍隊らしき様子と私達を襲った無人攻撃兵器を多数捉える!思ったより大規模の武装集団だったのね!?危なかったわ・・・
「照準まかせたっ!天翼雷撃出力1.2%・・うううー!!ッ発射ァァ!!」
天使様は大きく翼を広げ真上に向かって手を伸ばす!!刹那直視できないほど眩い光柱を放つ!
天井に設置された大きな鏡のようなものに光が吸い込まれ・・
【多次元攻撃管制システム・クレア・エクスプローリアε997】
「次元鏡により時間軸マイナス60分に”天翼雷撃”を転送・・258発全弾着弾を確認!敵艦及び設置罠の”残存因果率”を全て消去致しました!残存脅威判定・・0です。」
今の攻撃は・・?あの子自身から放たれた光の柱?瞬く間に分裂して敵艦と罠だけ蒸発したわね・・。モニターの表示に時間差があることから・・過去に向かって攻撃して、敵を時空間の連続上から消し飛ばした・・?
「おぉ・・なんだこりゃ??・・・敵さんが消えちまったぜ・・」
「これは・・っ!」
確信した・・この子は絶対にアズちゃんじゃないわ・・こんな般若のような表情も、素早く敵を見つけて抹殺する精神も、あの子は持ち合わせてはいないもの・・。分かったつもりになってはいても・・その明確な違いを見せつけられてしまい、少し体が震える。
徐々に光が収まっていき・・
・・・ほわっと天使の表情がやわらいだ・・。
「”堀り堀りさん”に傷を負わせた悪いやつらはもういないですの・・。」
うっ、さっきのを見せられた後だと、ちっとばっかし青い瞳が怖えぇが・・けじめは大事だ。
俺は俺のスタンスを絶対に曲げねぇ!!
「昨日の支援に続きぃ!我々の命を助けていただいてありがとうございましたーーっっ!!」ドガッっと席を立って大きく一礼する。
大地天使様はビクッとして数歩後ずさりしたあと・・くるりと一周回ってえっへん♪と頷いた。