EP 021 「亜空間都市”ジオ・リングブライト=アズライェール” #2」
アズちゃんがマシンハートで過ごす日々の裏側で・・・
【現人文明期 8895年 5月28日くらい??】
ポッドを降りて警察拠点の建物内に入ったところで・・
急に二人に対して声がかけられた!?
【第997ーGPSI E29】
「第997番ガードポリスステーションへようこそ!私は通称E29(いーにく)、ご用件を伺います・・。」
「うおっ!??いい肉?」
「へーえ?生きてる機械知性遂に発見ねー♪」
声がする方を振り返ってみると・・・そこにはディスプレイがあり・・・でっぷり太った中年っぽい男性の映像が映っている。
「あら?映像・・?自立型機械知性じゃないのねー?まぁいいわ・・こんにちはE29、私たちはすぐそこの交差点で何者かは分からないけれど・・一方的に光学兵器で撃たれて負傷したのよ。可能であれば武器の貸与、又は防御策の提供を希望したいのだけれど?」
思ったよりローテクだった為ちょっと残念そうなシンシアだが、サッと自然に会話を切り出す胆力はさすがだった。それにしてもボディが映像だけどこの子は言葉がかなり流暢ね~、対人インターフェイスだからかしら?
【第997ーGPSI E29】
「・・身体スキャンをします・・、お連れ様に光線銃創を検出・・指定街区の記録映像から本日昼過ぎに”当都市未認可の光学兵器”による攻撃損害を確認・・記録状況から申請内容と一致、被害者と判断。」
「現在当都市はメンテナンスモードにより、セキュリティポリスの出動ができない状況です。しかしながら緊急性を考慮し、敵の脅威度から第三種護身武器/防具の貸与が可能です。」
ガッシャン!ゴゴーン!!
E29の判断によりロックが解除され奥の武装保管庫に進めるようにしてくれた。
「おぉ!、マジか・・ありがてぇ!」
「未認可の光学兵器・・・!やっぱり武装勢力が入り込んでいるってことで確定ね。私は少しE29に質問があるから、ベクター貴方は先に取りにいきなさいな。」
シンシア姐さんから許可をもらって、一足先に保管庫の中に入り込む。
入室した部屋の中央、一番目に着く大型のクリアケース内に置いてある筒状の武器。
・・んー何々・・?
”260mm次元粒子構造体崩壊式、密度行列破壊砲”?
説明が書いてあんな・・本武器は都市外より侵入してくる次元戦闘艦船や空間歪曲弾道弾などその質量の大小に関わらず過去・現在・未来に渡り全次元から同時に存在を消滅させます・・?
うわ、なんだこの兵器は・・!
あ・・・、レッドランプでロックされてるからコレが貸出品ってわけじゃねーよな!
いや・・よかった・・こんなもん使えってんなら一撃で大陸ごと吹き飛んじまうんじゃ??・・やりすぎだぜ。
「えーっと、第三種護身武器ってーのは・・っと、お・・・アレか?」
保管庫の端のエリアに拳銃型のデバイスと、プロテクター、良く分からない果物みたいな形をした透明のボールが2名分おいてある。グリーンランプが点滅しており使用可能を告げていた。
ケースの手前にある説明プレートによると・・・
拳銃型のが”50mmガーディアン・レーザーニードル”とかいう光学銃みたいだ。専用のホルスターに収まっている。
威力は・・普通にレーザーとして撃つ場合ペトロンセラミックは1m程度まで貫通・・、対人対物どちらの場合でも貫通するかしないかは思念で制御可能。
えっと・・装弾数は・・ハァ!?残弾30億発以上だと!!・・予備弾倉は・・いらんわ!!
一生使えんじゃねぇか!
補足・・”ガーディアン・ディフレクト・バリアーマー”装着者に向けて撃った場合装着者に
一切影響は及ばないため人質に取られた際などにも安心して敵ごと射撃可能です・・。
えっと次!
この透明のプロテクターは防具だよな・・胸当てみてぇな感じだな・・・
何々・・?”ガーディアン・ディフレクト・バリアーマー”・・・おぉ、さっき補足説明に書いてあったやつか!
装着者に合わせて自動フィッティングする。装着する者の体格は無視して全身を完全防御可能。
携行火器レベルまでの光学兵器、実態弾兵器を完全無効化するバリアを常時展開・・・ぁ?えぇ!無敵??
・・嘘とは思えねぇ、これ借りてたら自殺もできねーんじゃねーか?ってくらい安全な気がする・・。コイツはありがてぇな・・今一番俺と姐さんに必要なもんだ。
最後の果物みたいなのはなんだ・・?
んーっと・・・”アンティマテリアル・ワープグレネード”?
強く握りこんでから敵対勢力を思いうかべると、敵勢力に対し即転移して0距離にて着弾爆発する。到達距離は半径6000キロまでの範囲となり、空間転移命中率100%で重力子制御の妨害は受け付けない。
爆発規模の調整は思念でコントロール可能、火薬の手榴弾程度から武装集団1000名程度、又は戦車大隊の壊滅程度までが適正の範囲・・・。
適正・・・適正!?・・・適正!・・、どんだけ物騒なんだよこの国は!!
いやほんっと、第三種で十分っす。怖くてグレネードなんか使えねぇって・・。
悪用する気にもならねぇよこんなヤベー装備。
この国のセキュリティシステムを停止させたシンシア姐さんの判断はナイスだわ・・
セキュリティが稼働している状態で、侵入者として一歩でも外にでたら存在ごと消滅させられちまいそうな気がするぜ・・・。
「ベクター?お気に召したのがあって?」
E29と会話を終えたシンシア姐さんが保管庫の中に入ってきた。
「あー、えっとな・・多分 貸与品3つで世界最強の軍隊並みの戦力だわ・・・」
俺はまともに説明する気にもならず、説明プレートのところを軽く指で振った。
サッと読んだシンシア姐さんの顔色が青くなる。
「何よこれ!!これで一番最低ランクの自衛手段貸与だっていうの?どんなヤバいのが仮想敵なのよ・・・」
まぁ、細かいことは忘れてありがたく使わせてもらおう。
特にこの”バリア”は俺と姐さんの命を繋いでくれそうで実に頼もしい。
胸当てっぽいソレを宛がってみると、シュっと自動でちょうどいいサイズになった。
「おぉ、ホントに勝手にサイズ調整されんだな・・」
シンシア姐さんもスグに装備した模様・・よし、これで安全面はかなり担保されているといっていい。
装着と同時に頭の中にメッセージが響く・・・
(護衛対象、装着者の装備を確認・・・、バリアを展開します。連続稼働時間は約200万時間・・)
「あー!もう驚かないぜ、5000年以上うごきっぱで行けると。」
「ほんと・・凄いわね・・。それにしても一体この国の人々は何と戦っていたのかしら・・?」
想いは様々、保管庫を後にした・・。
【第997ーGPSI E29】
「この度は当都市内において第三勢力からの攻撃を許すなどという失態をどうぞご容赦ください。貸与品の持ち出しを永続的に許可します。また、都市セキュリティが回復次第”有罪判定”となった敵勢力はガーディアンポリスが必ず抹消致します。ご安心ください!」
「おめー本当にいいやつだな、世話になった・・ありがとうよ!」
「ありがとう、これで失礼するわ」
お礼を言って建物の外に出る。
やはりそうだ、古代文明は”人類”に対してやや過剰ともとれる配慮や優しさみたいなものを感じる。今対応したE29もやりすぎな感じはするが、保護してくれているという点ではかなりのものだ。
「いくら無敵モードとはいえ、敵に位置を知られるのは避けたいわ、可能な限り都市コントロール施設まで急ぎましょう。」
「そうだな、相手が同レベルの武器防具を持ってないとは限らない・・」
夜の闇を疾走する二つの影は先に向かって進んでゆく・・・