EP 016 「地上にねぇなら地下に行く!」
【現人文明期 8895年 5月24日】
ペア結成後、一旦必要装備の準備等に戻り、翌朝・・
たくさんの作業員や技師たちが巨大な機体の周りで調整作業をしていた。
おぉ・・!コイツが相転移掘削移動機の現物かぁ・・
男心をくすぐってくるなぁぁオイ、無骨でシンプルでデカくてサイコーだぜ!
集合場所に設置された巨大なボーリングマシンを見上げて悦に浸っていると・・
「はぁい、ベクター!この世とお別れする覚悟はできたかしら~?特大の棺桶を前にしちゃって~ふふふ!」
「シンシア姐さんよしてくださいよー、って姐さんも行くのに縁起でもないっすよ!?」
遺産機械主任技師
「もう間もなく準備が完了します、搭乗後指定座標の確認と各部チェックシーケンスをお願いします。」
「いくわよベクター!」
「おうよ!」
「相転移制御システム起動!対消滅型重力子エンジン作動!」
カウントダウン開始
10、
9、
8、
7、
6、
5、「エンジン内圧力正常出力毎時500メガトンで固定、相転移ドリルブレード発生を確認!!」
4、
3、
2、
1、「点火よい旅を!!」
カウントダウンが終了した途端、俺の体は一瞬で地下へと向けて爆発したかの如くスピードで押し出される!!
ドゴォオォッォォォン!ガガガッギギギギギギギギギ!!!
うごごごごご、おぉぉおぉおぉおぉ、シシアアァァァネサンッゴオッゴゴゴ、コレ!?
脳が震えてまともに言葉がでないッ!!
・・・・
・・・
・・
・
次の瞬間、突如として無音に・・なった・・・?
【機内制御装置AI”グラビトンユニーバース”】
「Fon!告・・地層振動元データ収集完了、最適化ヲ実施。全振動、騒音ヲキャンセルシマス ・・Pind」
・・・・スゲェ!、窓から見える下降スピードは変わらねぇのに全く揺れも音も無くなっちまった。
「ベクター?あんた本当にバカねぇ・・点火直後は話しちゃダメってさっき言ったじゃないの!聞いてないんだから・・もぅ」
「すんません!つい興奮してて・・」
「ここから5000m程度までは早いんだけれど、そこから先は岩盤のかわりに”ペトロンセラミック”やら”超硬化テクタリウム”だとかの地層になるから一気にスピードが出なくなるわよ」
そう・・なんだよな。なんでか知らねーがこの世界の遺跡ってのは単純に土に埋まった過去の文明ってわけじゃねーみたいなんだよ。
シンシア姐さんがいった通りある程度まではそうなんだけどな・・・・。
地層ごとに深くなるほど、昔の地層に向かうほど”何故かより硬い人工岩盤”になって行きやがるんだよ。
過去他の遺跡発掘業者が岩盤構成材料を少し削り取って持ち帰った事があったらしいが、仮に名前を付けて分かっちゃいるフリはしているみてーだが、どんな構造で何が原料なのかも分からない・・そんな”岩盤”が昔の文明を未だ空間ごと支えている。
まぁ、第三級機密IDの俺はそこまでしか知らない。
だから、この間俺がヘマやらかしたのも生きて下の地層まで落ちたなんて本当に奇跡なんだよな・・。
下の地層と崩落物に押しつぶされて死ぬってーのが俺たち遺跡発掘業者の一番多い死に方なんだ。
・・・・ガガン!ドッドドドドドド!!ギギギィィィィィィン!!
「ほら、来たわよ・・!このあたりから遺失文明期手前の”ペトロンセラミック”地層に入るッ!」
「おほっ!、空間転移技術なんてトンデモドリルで削っているってのに抵抗衝撃があるなんてヤベェな!!」
・・・ギギギィィィィィィン!カカッドドドッドドド!!
【機内制御装置AI”グラビトンユニーバース”】
「Fon!告・・推定硬度419万ヘクトン、掘削能率が11.7%マデ遅滞。振動キャンセラー出力80% ・・Pind」
・・・
・・
・
ガガッガッゴゴゴッゴゴ!キュドッ!
「・・抜けたみたいね!オプティトロンシーカーの数値は?」
「・・深度7000m辺りっす」
機内設置のオプティトロンシーカーは、この間俺が落ちてきた辺りの深度で地層を一つブチ抜き終わったらしい。なんでもねーように見えるが、スタートからもう12時間以上は経っている。
「残存空間の多い領域を簡易スキャン!・・・Zr291・Rq1133の辺りで一旦止めるわよ!」
「了解、目標座標まで6・5・4・3・2・1・アンカー!」
ギュギューン!ドドッドッッドッッッド・・・・ゴォーン!
「ふぅ・・・、っと ”グラビトンユニバース”システムチェック頼む!」
【機内制御装置AI”グラビトンユニーバース”】
「Fon!承、簡易システムチェック・・・システム良好、破損等ハ未検出デス・・メインタンク残存エネルギー69% ・・ディープチェックヲ開始・・推定6時間後マデメインエンジンヲ停止シマス・・Pind」フィィィィィィィィィィン・・・
おしっ、まずは好調なスタートと言えるな。
流石この大深度レベルの地層まで潜ってくると”修理”が必要な状態になっちまって、ろくに調査する時間もなく修理しながらスグ引き返さざるを得ないケースが殆どだ・・・というのは発掘業者仲間からよく聞く話だ。
だから無事に戻れないケースもかなりある、イコール”無事な機体”はあまり残ってねーのさ。
無傷でこれたってのはとんでもない幸運だぜ!。まぁ、まだ道半ばだけれどな。
「・・・大丈夫そうね、故障無し無傷でこの地層にこれた人類って、私達二人が初めてなんじゃないかしら?」
シンシア姐さん・・あんたこの間無傷で降りてきて、無傷で俺を連れ帰ってくれてたような・・・?
「そこボサッとしない!手分けしてスキャナを設置、いくわよ!」
「っ・・!了解!」
この間みたいに落ちたらそこが”古代文明の遺跡”だったなんていう素敵展開ではないので
周囲にスキャナを設置して、空間解析を進めないと進むべき方向すら判らなないわ。
この間の大地震・・アズちゃんが目を覚ました日に起こった災害で、この間見つかった地層はメタメタになってしまい該当座標ポイントを掴む事はできなかったみたいなのよね。
スキャナの設置を終えて、軽く休憩しつつ周囲の解析結果を待つ。
・・・数時間後・・・
俺は解析結果を出た順番に読み上げる。
「ポイントα(アルファ)残存空間小規模、人工的空間の形跡認められず・・」
「ポイントβ(ベータ) 残存空間大規模、反応は弱めだが人工物の可能性あり・・」
「ポイントγ(ガンマ) 残存空間小規模、人工物と認められる可能性大・・」
「あら?意外と脈ありじゃない・・・まずはポイントβ(ベータ)かγ(ガンマ)に絞るべきでしょうけれど・・」
そう、難しいのはここからなのよね・・。スキャナは小さなデバイス1つや敷設されたケーブル類、ただの長方形の空間構造にも
反応するときがあるのよ・・・どちらも探索したいが、それはスケジュール的に難しいし・・・。
「シンシア姐さん、スキャナの立体推定データを見るに、ポイントβの方は空間構造そのものがHITしたみたいな反応だしポイントγの方がそれより小さな空間中に反応が多いみたいだぜ・・・つまり」
「より人工物が密集している可能性が高いわね!」
やはり本職を連れてきて正解だわ!浅層でも深層でも基本は同じっていうわけね・・。
グラビトンユニバースのディープメンテが終了次第、ポイントγへ絞って探索することが決定した。