EP 010 「お手紙さんと危険な調べもの」
【現人文明期 8895年 5月09日】
─カタカタカタ・・ 診療所の隅にある小さな情報端末相手にお嬢ちゃんは調べモノに御執心みたいだな…。どれどれ?…
「なぁ、お嬢ちゃん。調べものならエレクパパがしてやるぞ~?」
「い~や~ですの~、アズはもう自分でできますもの~、むふふ~♪」
うぅ!?なんてこった!まさか反抗期ってやつか?オォォォ…バカな…(ガーンx159)
いまは忙しいですの~☆
エレクパパから教えていだきました“オリヴィア”さんに、面会希望のお手紙さんをしたためておりますの~♪
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“オリヴィアさんへ”
こんにちえる~ですの♪
わたくしはアズリエルって言うですの~♪
オリヴィアさんの“お歌”とっても興味しんしんだよ~♪ぜひぜひ直接聴いてみたいよ~☆
オリヴィアさんが使う“結晶”さんも見てみたいな~ですの♪
よろしくね~だよ♪
“アズリエル・ノイエン・アーシェライト”
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「…ん?あれ~エレクパパどうしたんですの~?真っ白に燃え尽きてます…の??」
「これでもアズちゃんが成長して喜んでいる姿なのよ~?ホラッ、いつまで白くなってるのよ、しっかりしなさいな~!!」
ドスッ!!
「フグァ!?…俺は一体…?よし復活!!お嬢ちゃん…改め、リエル嬢ちゃんが手紙書いたってんならちゃんと書けているか見てやるよ」
「はいですの~♪」
「ん~どれどれっ……ん?、この“結晶”を見たいってーのは一体どういう意味なんだい?」
「う~?“結晶”はこれだよ~♪」
リエル嬢ちゃんが手元に出したのは、例の“羽マイク”だった。オリヴィアも先史文明期の何かを持っているってことか~??
この間モニターに映ってた配信では、そういう感じのブツは見なかったハズだがな。
「コイツは今の時代“マイク”って言うんだせ~。“結晶”って言うと通じないかもしれないな~、ふ~む。」
「う~?違うですの~??まい…く?」
リエル嬢ちゃんは椅子に座って足をぷらんぷらん振りながら“初めて聞いた”みたいな反応を示す。
この間あれだけ“歌”に反応して、調べものもしているのにマイクは分からんと来た。少し違和感があるな。遺失文明期とは何か根本的な文化の違いがあるのかもしれねぇな…。
「結晶って書いてやれば満点ってことさ。成長したなリエル嬢ちゃん」
「えへへ~誉められたですの♪さっそく書き足して送信っ☆」
そんなほのぼのとしたやりとりを横目にしつつ、外出準備が完了したらしい姐さんから声がかかった。
「私ちょっと野暮用があるから、アズちゃんとお留守番お願いね~!」
「はいですの~♪しんしあママ行ってらっしゃいませですの~♪」
「了解~、任されたぜ…姐さん、くれぐれも慎重にな」
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今回私が向かう先は、機械知性達が産まれてくる施設、通称ADF(Angel Doll Factory)という場所になるわ。
いつも仕事で扱っている“意識が入ってないボディ”の発行元といえば判りやすいかしら?
別に秘密施設ではないし、必ずしも立ち入れない場所という訳でもないけれど、誰も製造工程の詳細知らないのよね~。
分からない事は調べるのが私の主義よ♪
ADF Master Seq System
「Pipi ..本施設入場ニハ予約申請ガ必要デス...pid」
あーなんてやる気も愛想も無いセキュリティAIかしら…うちのクジラちゃん87号を見習いなさいよ!
面倒ね、いつも通りこじ開けちゃいましょうか~♪
【ハッキングデバイス・マスターキーシリンダー】
Pi・・セキュリティコード解析を完了/解錠 Pid
ADF Master Seq System
「Pipi...不正なアクセスヲ検知…否…SeqLV2 ID保持ヲ確認、通行可能…pid」
まったく反応の悪いポンコツねぇ…
正規ID持ってるけどいちいち認証まで立ち止まる気にならないのよね~。
わざわざハッキングしてまで数秒でも早く入場するのがシンシアスタイルだった(汗)
「入るわよ~、アニス~!いるんでしょ~?」
………すたすたすたすた、ドテッ!すたすたすたすた
「あれぇ~?シンシアさんじゃないですか~、どうしたんですかぁ~?イテテッ」
このやたらノンビリしてるのは、本施設の責任者“アニス・エンジェルリング”っていう機械知性よ。この子の楽しいところは、名前の通り自作した“天使の輪”を頭上にアクセサリーとして着けているトコロ。
何の機能もない光るだけの輪を重力制御で浮かせて、頭に追尾フィットさせるその心意気は素晴らしいわね♪
見た目がアズちゃんに近いからか親近感が増した気がするのよ。ふふふっ♪あの子には手出しできない代わりに分解してみたいわ~♪
「アニスにちょっと聞きたいことがあって来たのよ。“後期AP型”っていう規格の機械知性体についてなんだけど…何か知らない?」
「・・・えーとぉ?現在稼働している機械知性体の管理規格としてはぁ、どこにも出てこない呼称ですねぇ~?ちなみにその情報の出所はいったいどなたからです~?」
”後期”という単語はありふれた符号ですのでともかく、AP型?・・管理規格コードにはないですねぇ~?シンシアさんのIDはわたしと同じでぇ、第二級機密ですから特段隠す必要もないのですけれど・・
「ん~?アニス知りたいのかしら~?本当に~?聞いてしまっても大丈夫~ふふふっ??聞いたらもちろん全面協力してくれるのよね~?」
うぅ、いつも通りのド直球さで断りにくいですぅ~。
とっても不安で頭のリングの光がゆらゆら揺れ動いてしまうのが自分でもわかりますぅ・・。
「は、はいぃ~あのう、わたしのこと分解だけは・・どうぞしないでくださいね~(小声)」
う~ん、ADF全域を管理しているわたしが知らない機械知性の管理コードですぅ?
これはぁ、絶対にいけないやつなんじゃないのでしょうか~?うぅ、ヒツジを数えて落ち着きたいよぅ・・。
「よしっ!さすがアニスっ!心の友ねぇ~♪そんなに心配しなくて大丈夫よ♪
ちょっとPH/SDFラインの”管理者端末”を使わせてくれればいいのよ~。」
悪いわね~と押し切りつつ、容赦なく管理者端末を使い診療所のPH/ADFラインでは探れない情報を参照する。
さすがはお膝元の専属管理端末ね、アクセス拒否されることなくかなりの深度まで閲覧できるわ・・でも、”後期AP型”、素直に引っかからないわね・・。
仕方ないわ、軽くハッキングして吐き出させましょうか~♪
─カタカタカタ・・
「あ、あのぉ~?シンシアさん、あんまり無茶な調査はぁ・・って聞いてないですねぇ~、はぁ・・あとでルーテシアさんに怒られてしまいますぅ・・アセアセ」
─この間ルーテシア不在の際に訪問したとき、ベクターから入手した”遺失文明期の発掘記録”を片手にドクター・エンディアに軽くジャブを入れたけれど、あの鉄面皮おじいちゃんにしては少し反応が変だったのよね・・。絶対に何かあるハズ・・。
─Deep Crack Code-2092,Entering///
(強制クラッキングプログラムスタート)
Input "AfterModel Type AP"
(参照請求 後期AP型)
─Access Denied─
(アクセス拒否)
─Use a pseudo-first-class confidential text permission ID─
(疑似的第一級機密文章参照IDを提示)
─Active,Starting DATA Online─
(参照開始、データリンク)
**First-class confidentiality**
General reference is prohibited!!
(第一級機密文章、一般アクセスは固く禁ずる)
よし、強引にだけど割り込み完了っと♪でもこれはバレちゃうでしょうから
あとでアニスに謝らないといけないわね・・って、ウソでしょ・・何これ?。
**After Tepe A.P First-Class confidential text **
Epo 変成文明期 詳細年月データ消失 記録バックアップ残留データヨリ参照。
現人文明期 8887年時プラネットハーツ過去視予測演算ニヨル復元完了LOG。
当代ドクター・エンディア”ラング・ブランシェット”ヘノ継承記憶内容提供ニヨリ
内容ヲ復元・再推計シタ。
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【発掘アーカイブ原文ヲ参照】
【変成文明期】「b9年fg日」
【データーメモリー98.91%損壊、過去視・時空間再構成予測演算にて1.09%復元。】
これ・・・ば!。。Sdg のぞ・・・・kなう・・・粉・fgw・・願・・
ギギ展させろ!Gぴh\・・\hげr@p・・zdgf発・・
・・wwxd・・あアアああ!グゲ・・
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「ドクター・エンディア継承記憶データニヨル補正処理ヲ実施」
【変成文明期】「29年火槍月14日」
これは一体なんだ!、望みが叶う粉だと?いかなる願いも叶うと言うのか!?
技術を発展させろ!我々にはもうそれができるはずだ!!”ソレ”を発生させる条件
は一体なんだ?
ああっ、抑えがたいこの欲求は一体・あぁあああ・ッググ・・
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「・・・アニス、やっぱりあんたは見ちゃダメよ。」
「えぇ~!?うわ~ん;; やっぱりヤバいやつじゃないですかぁ~。」
ADF Master Seq System
「Vii・・緊急通信ヲ受信、発信元ドクター・エンディア、モニターニ出力シマス。・・Pid」
「・・やぁ、そこにいるのはリリエンタール嬢だね?、単刀直入に聞こう・・見たね?」
「ええ、見ました。アニスには一切見せていませんのでご安心くださいな。
・・・そちらに出向いたほうが良さそうですわね?聞きたいこともあるし・・ね?」
「いいだろう、ゴディアス君には話を通しておく・・。」