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竜騎士聖女は隠れて暮らす  作者: 卯月 霰
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玄関へ行き、馬車に乗る準備をする

すると馬車の前に、見知った人物が立っているのが分かった



どうして…此処に…そう思った時には、言葉が出ていた




「お父様…」




父オーウェンが正装をし、私を待ち構えて居たのだ

私と合わせたかのようなブルーのスーツを着て…


ベアトリスの傍に居なくて良いのか、此処に先に来たと知ればミンディが怒るのではないか…色々と聞きたい事はあったが私の準備で長く待たせただろうと思い少し駆け足で近寄り、戸惑いを隠せず見上げる

お父様はそんな私に少し目を細め、微かに微笑んでいた



「綺麗だな、エレノア」


「あ、有難うございます…」


「久しく会ってなかったから、此処まで迎えに来た」


「…はい、有難うございます」


「…、さあ行こうか」


「はい…」




予想だにしていなかった父の訪問・褒め言葉に驚きながら、

手を取り馬車へ入る

エスコートしてくれるのは護衛騎士に頼んでいたが、何も知らされず取り止めになったのだろう

お父様は外に出てきたロイやモーラと何か言葉を交わし、中へと入ってきた


窓の外を見るとロイやモーラ、他の家臣達がとても心配そうにする中…出発します!との掛け声で馬車は進み始めた

もう一つの馬車には、プレゼントに着替え…何かあった時の為にメイドのニナと執事のケニスが待機してくれている



「……元気だったか?」


「え、?あ、はい…何不自由なく暮らしておりました」


「そうか…」


「「……、」」



気まずい…そりゃそうよ、1年もまともに向き合って話もしてなければ前世では国外に追放されているんですもの

今更何を話せば良いかわからないわ


お父様の視線と気まずさに耐えきれず、いつもの癖でキュッとドレスを掴む

するとお父様が私の右手を取り、薬指に指輪をはめ込んだ



「あっ…」


「倉庫から見つけた、ミラの指輪だ。お前が持っていなさい…無くさないように」


「お父様…有難うございます、絶対大事にしますわ」



ぶわりと目に涙が溜まる

わざわざ見つけて、届けに来てくれたのだ

ベアトリスやミンディに見つからないよう、私の為に


1度目の人生を思うと、悔しいし苦しい…何故私を守ってくれなかったのかと叫びたくなってしまう

しかし、お父様も己との格闘があったのかもしれない

今のお父様を見るとそう思わずにはいられない程、今世では距離のもどかしさを感じてしまう

お互い、中々素直になれないのね…



「エレノア」


「はい…」



ふと、握られていた手が離れ…お父様が真剣な眼で私を見る



「お前も…もう社交界に出る歳だ。そこでお見合い相手を探そうと思っている」


「……、そう…ですわね」



まさかの発言に言葉が詰まる

前世ではこんな話をされた事も無かった


先程モーラやロイに話していたのはこの事か…と腑に落ちる

だからあんなに心配そうな顔をしていたのだろう


お父様は外を眺め、溜息を吐いてしばらく沈黙した

私はどうすれば良いかわからず、ただ馬車の揺れに合わせて動く自分のドレスの端を見ていた








―――――――――――――――――――――――――――……









長い沈黙の中、もうすぐロックフェラー領の本城に到着するのではないだろうか

ベアトリスとミンディには会いたくないが、何よりも大切なダレンに会えるに心が踊る


お父様も、指輪や見合いの話を第三者がいる中でしたくなかったのだろう…配慮してくれた事に心から感謝している



「エレノア…」


「…?お父様」



呼びかけられ、答える

すると目の前にはとても哀しそうな、嬉しそうな複雑な感情が入り乱れているだろう顔をしたお父様がいた

こんな表情をしているのは、今まで見た事が無い



「お見合いの話だが、もうほぼ決まっているんだ」


「え…?」


「勝手に進めてすまないと思っている。だが安心して良い、私が最も信頼している方のご子息だ」


「…それは、もしかして……」


「ああ、お前もよく知っている…ルーカス皇太子だ」


「!!!」



この西帝国を納める現皇帝 テオドール・マルティネス

先帝が20年前に亡くなり、当時神殿で聖女として活躍していたお母様の大親友である現皇后 ベル・マルティネス(旧タイラント侯爵令嬢)と共に今も尚、国民に慕われ続けている良き両陛下


その息子、ルーカス・マルティネス皇太子との婚約が進められているとは…彼は確か私より2歳年上な筈…

もう15歳の年齢で婚約者は決まったいなかったのかと、そこにも驚いている



…思いもよらぬ言葉に絶句してしまう

お父様は確かに帝国の騎士団長であり、皇族を守る盾・剣である

しかし、私なんかが皇族と…ましてや皇太子と結婚するなどと考えた事も無い


ルーカス様とは幼い頃、ダレンを産んだ後に著しく体調を崩したお母様の見舞いに来てくれた両陛下の後ろに、ぴったりと引っ付いていたのが初対面だ

その頃はダレンも赤ん坊でみんなお母様かダレンに付きっきりで誰も遊び相手がおらず、お互いに人見知りだったが打ち解けてからは良く庭園で鬼ごっこにお茶会ごっこをしていたものだ


お母様が亡くなってからは、 お父様もより忙しくなり…両陛下が滅多に訪問する事も無くなって会う事もなかった

その当時にはもうルーカス様は魔法学習院へ入学していたと聞いていたし…お互いに忘れていたと思う









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