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竜騎士聖女は隠れて暮らす  作者: 卯月 霰
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3














ベアトリスと結婚してから、お父様はより一層屋敷には戻らなくなっていた

それもそのはず、束縛の酷いベアトリスはすぐにお母様の大事な遺品や肖像画を捨てるまではしなかったが全て倉庫に押し入れ、まるで我が物顔で屋敷を歩き回っているからだそうだ



お母様の影すら見えないあの屋敷を、誰が居心地良く使えるのだろう

自分の動き易いように使用人も全て代え、元いた者たちは他の貴族たちへと異動させられた


ダレンはあの最初こそ喜んでいたがお母様の件やべっとりとした感覚に嫌気がさしたのか、勉学や魔法、騎士の技術を学びたいと言って魔法学習院へと就学し、寮生活を行っている

行く時はダレンがずっと私と離れたくなくて泣いてたっけ…



私はというと、今は本城にはおらず…領地にある仮住まいの屋敷に身を寄せてひっそりと暮らしている




「お嬢様、ティータイムになさいますか?」


「うん、有難う…」




事の発端は、ベアトリスとお父様の間に生まれた子供

ミンディ・ローズ・ロックフェラーへの対処だ


他所の男と作ったのでは…と噂される程、仲が良くなかったお父様とベアトリス

やはりお父様は、お母様を早くに亡くした私達の為に結婚したとモーラやロイに聞いている


そしてロイによると、どうしてもお父様との子供が欲しいと毎日嘆いていたベアトリス

ある晩の夜会での事…管理していたはずの強いお酒が見当たらず、ベアトリスの部屋を捜索すると空になっている瓶を発見


部屋にはお父様とベアトリスが使ったであろうグラスが2つテーブルに置いてあり、お父様の部屋を開けると2人の露な姿があった…との事らしい

これは1度目の人生とそっくりそのまま同じやり方である

父はお酒が得意ではない、狙っての犯行だ



「はあ……」


「何かありましたか?」


「あ、ううん…そうだ、本が読みたいから持ってきてくれるかしら」


「かしこまりました」



生まれてから傍に居てくれたメイドのニナ

そう、この屋敷にはベアトリスに異動させられた人間を匿い、みんなで密かに暮らしている

メイド長のモーラ、執事長ロイ、料理長や他の執事もメイドも全員


これは私の提案

お父様だけが知っている私との秘密、ダレンも知らない


いずれベアトリスが虐待してくる事は分かっていた為、1度や2度は覚悟し、メイド長モーラに現場を抑えてもらった

お父様に報告が入り、私だけ呼ばれた際提案したのである



《全ての執事やメイドと共に、南西にある領地の屋敷へ行きたいのです》


《………何故、助けを求めない》


《皆を助ける為、自身を守る為にはそのようにしたいのです…きっとベアトリスお母様も寂しいんだわ…》


《…………わかった、手配する》



6歳の子供が発するとは思わない発言

軽くベアトリスを庇うように言えば、彼女にもそこまでお咎めがないだろう

そんな事も気にせず、実の娘に目も合わせず、頷くお父様

以前よりも痩せ細り…食事もまともにしてないようだった


そして、予測した通りミンディが生まれ…私が危害を加えるのではと心配していたベアトリスを横目に、療養の為として早々にこの屋敷に避難している




「ダレンが戻るまであと…14年…」



魔法学習院初等科から高等科、騎士育成院を卒業するのに残り14年もある

1年の内2回は帰って来れるが、首席卒業を目指すダレンは中々それすらもできない状態みたい

手紙の交換は月に3回

近状を聞く限り、楽しく過ごせているようで良かった



私はというと、ロイにより秘密裏に雇ってもらった教育係の教師3人と日々勉学やダンスに励んでいる


1度目の人生では…6歳の時すらまともに勉学も食事も出来ない状況下にされていたのだ

欲張ってはいけないと肝に銘じ、細々と暮らしている












―――――――――――――――――――――……














ミンディ7歳の誕生日、今日は私もダレンも招待されている

行きたくないのは山々だが、今回ばかりは手紙にて正式に呼ばれていた


お母様のドレスに身を通し、鏡の前で化粧を施す

今日はミンディがオレンジ色のドレスを着ると聞いてスカイブルー色のドレスを身に纏い、装飾品には瞳と同じパープル色のネックレスとピアスを着けている



「お嬢様、とてもお美しいです…」


「まるでミラ様の生まれ変わりのようだ…」


「本当?お母様に似てるなんて嬉しいわ」



私はもう13歳になっていた

淑女教育も終え、礼儀作法や勉学も終盤に差し掛かっていた

噂によるとミンディは母ベアトリスのスパルタ教育により、着々と教育を終えているらしい

それに、魔法が少し使えるとも聞いている

ベアトリスとミンディには1年に1度会うか会わないかの頻度だが、まだ本城で務めている庭師とやり取りしているメイドによるとそうらしい



私達が暮らしているグライハム大陸には基本の五属性、火・水・風・土・氷の魔法が存在している

それと光・闇・聖の魔法の3つは、ほぼ発生していないが稀に力を持つ者もいる

その中に光と聖魔法を使うお母様も含まれていた


そして、どの家庭にも誰にでも一属性は存在し、高レベルや二属性以上を司るのは生まれ持ったものや学習院での習得で決まる


貴族社会に生まれた者は皆、学習院へ入ったり、自宅で教育を施してもらう事が殆どである

平民の者たちは、生まれてしばらく経ってから各都市にあるギルドへ属性鑑定を申請し、ギルド教育院へ行くか各々で成長させるかである



私は現在、水と風魔法が使えるようになっている

1度目の人生で人より遅く習得したのは、基本の体力や知識、魔法を使う人間その者の意思が必要だったから

前世の私には、それすらも構う暇もなかったのだ

ただ生きる事と愛情に固執していた…


ダレンはというと現在も首席キープのまま、火・水・風属性の魔法が使えるようになったと手紙で書いてあった

背も私より伸びたとかなんとか



「ダレンも、今日は来れるのかしら…」


「ええ!そのように聞いております」


「本当?それなら、前に用意してたプレゼントを渡さなきゃだわ」


「勿論ですお嬢様、もう積み荷に積んでありますよ!」


「さすがニナね!」



あとミンディ様のも…と、しっかり積んだ事を確認したニナは得意げに笑っていた


そして今回、お父様とも1年ぶりに会う

去年はこちらの屋敷に3回訪問し様子を伺ってくれていただだが、今年は忙しいのか中々会えずにいたのだ

やはり街中が噂している、大陸全体の魔族増加によるものではと推測している

皇帝の騎士団長である父は、きっと忙しい毎日を過ごしているのだろう



「さ、馬車が着く頃ですよ!行きましょう!」


「分かったわ」














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