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竜騎士聖女は隠れて暮らす  作者: 卯月 霰
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メイド長のモーラ、家令兼執事長のロイ…数多くの屋敷の人間がお母様を慕っていた

帝国神殿で働いていたお母様の悲報を聞きつけ、神殿の人々もお墓に花を添える


そして我が国の皇帝・皇后陛下、皇太后様もお母様の葬儀に参列していた


啜り泣く声が、こだまのように響く


それほどまでに大事にされていたお母様

神は何故助けてくれなかったのだろうか…




生憎の曇り空、まるでこれから雨が降ると言わんばかりに











――――――――――――――――――――――――……










月日が経ち、私は5歳へと成長していた

お母様亡き後も、1度目の人生のように精一杯やれる事をやるだけと思い生きている

ダレンとお父様、屋敷のみんなが幸せならそれで良い


そして今日は弟ダレンの3歳の誕生日パーティー

天気が良く雲ひとつ無い空の元、大きな庭園で沢山の人を招いてお祝いをしていた

主役のダレンはとてもかっこよく着飾り、得意げに挨拶をして回っている



「エレノア姉様!」


「ダレン、ごきげんよう。どう?楽しんでるかしら」


「うん!姉様のプレゼントも嬉しいもん!!」



屈託のない笑顔で抱きついてくるダレンを可愛がり、幸せなひと時を過ごしていた

今年のプレゼントは時計にしたけど、壊さないかしら?なんて思ったものの、いつも物を大事にしているダレンの事だから大丈夫だろう


すると、庭園の出入口が少しざわつき始める




「何かしら…」


「お客様かな?見てくるね!!」




ドクンドクンと…嫌な予感が伝わってくる

幸せは長くは続かない、よく分かっている…

1度目の人生を考えるとまだお父様が再婚するには3年早い

なのに、拭えないこの冷や汗は何なのか


考えるでもなく入口から入ってきた人物が目に入ると、悪寒と憤りを感じ、逃げ出したくても出来ぬまま小さな脚でその場に必死に立つしかなかった




「この度はご招待頂き、誠に光栄ですわ…オーウェン閣下」


「こちらこそ嬉しく思う」




エスコートしている父オーウェンにベッタリとくっつく令嬢

私を死へと追いやった張本人の継母


ベアトリス・モール・イーガン


イーガン男爵の一人娘で我儘し放題、遊び放題

領地に鉱山を持ち、金持ちの成り上がり…北の大国との繋がりがある一族

1度目の人生では心無い慈悲として、一族が管理する領地へと私を追いやったのだろう、あの寒さで死んだ事を思い出し怒りで握っている拳に血が滲む


艶やかな赤髪に真っ赤なルージュ、似合わない派手なドレスに豪華な装飾品を纏いこちらへ向かってくる

世の男性はこんな奴が好きなのか…

ベアトリスは他の令嬢には嫌われていたが、男性の人気は凄まじかったのだ

猫を被るでもなくありのまま、あのままの風貌が世の男性を狂わせるという


お父様もお母様を亡くし、考えないようにと我振り構わず必死に働き、毎日疲れて帰っているため正常な精神では無い…そこに付け入られたのだろう




「あら…ご挨拶を…、私ベアトリス・モール・イーガンと申します。エレノア公爵令嬢様、ダレン公爵子息様、どうぞお見知り置きを」


「ごきげんよう、イーガン男爵令嬢…」


「ごきげんよう!」



下から上まで、べっとりとした目線を不快に思いつつ挨拶を交わす

私はお母様にそっくりな為、憎たらしいといつも見えない所を虐待されていたのを思い出す

1度目の人生で分かったことは、ベアトリスは母ミラに異様なまでに嫉妬していたのではないだろうか


その上…顔は殴らず、傷が残らないようポーションを使っては毎回背中に鞭を打たれていた

何か気に食わないことをすれば、すぐに脚に蹴りを入れられもした



「ダレン公爵子息様、私からもプレゼントがございますの」


「えー?!なになに?!楽しみ!!」



ああ、ダレン…そんな人に近寄らないで…

そう叫びたくとも、まだ何もしていないベアトリスに非は無い

しかし、前世の自分が喉がちぎれるほど泣き叫んでいるのが分かる



「ベアトリス…」


「あら、閣下!もう良いではないですか」



嫌な予感は当たる、というけれど…早すぎる絶望に目が回る



「私、オーウェン閣下と結婚致しますの。貴方のお母様になりますのよ!」




プツリと、糸が切れたように…目の前が真っ白になる

何故1度目の人生よりも二人が早く出会ってしまったのか

私の何がいけなかったのか

ぐるぐると頭を巡る思考に追いつけず、ただひたすらに笑顔を貼り付けていた気がする

もう、そこからの記憶はあまり無い













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