暗夜に灯火を失う〈1〉
※残酷描写注意
初連載です!
学生の書く共感性羞恥誘発駄文ですが、温かい目で楽しんで読んでいただけると幸いです!
忘れることはない。1年前、ここで起こったことを。
飛び散る黒い液体。君からとめどなく溢れ続ける。手についたそれを見ると真赤に輝いていた。
ああ、青い光の中にいたから黒く見えたのか。
状況が読み込めない。
もう一度前を見る。君が黒い液体の中で倒れている。
『君が血の海の中で死んでいる』
絶叫。自分の声だ。自分の喉から出ている音のはずなのに遠くから聞こえる。
君の敵のあのうさぎが、なんの感情も浮かべずこちらを見つめる。
せめて笑い飛ばしてくれれば私も楽になれたのに。
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「あの日」なにがあったか、最初に話しておこう。
私と私の幼馴染は一年前、夜の世界に招待された。
夜の世界という場所はヨーロッパにある聖堂のような形貌をしており、重々しい8つの大理石の壁に囲まれていた。
そのうちの7つには様々な装飾が施された楕円形の額縁が貼られているが、うさぎの絵画、高校生くらいの体格をした男性(かなりの美形)の天使が薔薇の弦によって十字架にくくりつけられている絵画が飾られている額縁2つ以外の5つの額縁は空であった。
そして、残り1つの壁にはオペラのコンサート会場の2階席のような空間が地面から5mほどのところにあり、その上にとても大きな白く髪の長い女性を模した、ステンドグラスがあった。
私達の他にも様々な年齢、性別の人間が10人ほど一緒に招かれたようだ。
あの頃の夜の世界はとても小さかったから、15人ほどしか入らなかった。
状況が理解できている人はおらず、会場は混乱に包まれていた。
壁を叩く者、「ここから出せ!」と叫ぶ者、連れている女性の胸ぐらを掴んで怒鳴る者。
私はどうすることもできず、ただ一緒に来た幼馴染の手を握っていた。
突然、高らかなトランペットの音が爆音で鳴り響く。某ネズミの国で流れていそうな明るい曲。
耳を塞いでいても鼓膜が破れそうだ。
2分ほどたった頃、ピタッと音が止んだ。急な静寂に誰も声を出すことができない。
ステンドグラスの壁の方からぴょこっと可愛らしい音がした。
全員の視線が一気にその方向に動く。
そこにいたのはツルハシをもったきぐるみのうさぎであった。
とても小さく70cmほどで人が入ってるとは思えない。
そのうさぎはツルハシを床に置き、壁をもぞもぞと探ってスケッチブックをだしこちらにむけてきた。
「私の名前はラビ。」
「あなた達は今、夜の世界にいます。」
「夜の世界からは最後の1人になるまで出ることができません。」
「あなた達は今から私による制裁を受けてもらいます。」
「今からルールを説明します。」
器用にペラペラとスケッチブックをめくって説明していく。
「ちょっと待てよ。」
先程、女性の胸ぐらを掴んでいた男がきぐるみの方に歩いていく。
「ルール説明が終わっていません。直ちに立ち止まってください。」
声が出せないのだろうか、またスケッチブックをめくる。
「なんの権限があって閉じ込めてんだよ、早く出せ!」
「私は神の使いです。全人類を管理する権限があります。早く止まりなさい。」
男はラビの右腕を掴み、ラビの目を自分の目の高さに合わせた。
「神とか使いとかどうでもいいんだ、早く俺をここからだせよ!!」
スケッチブックを落としてしまい、意思疎通をとることができないのがラビはずっと男の目を見つめている。
「早くしろ!」
と男がもう一度怒鳴った瞬間、ラビが左手を振り上げた。
その手には先程まで床に置いていたツルハシを握っていた。
次の言葉を発する暇もなく、そのツルハシは男の頭部に突き刺さった。
ドサッと横に倒れ込み、血が飛び散った。
「きゃあああああああああああああああ!!!!!」
男と一緒にここにきたのであろう女が絶叫した。
ワンテンポ遅れて状況を把握した大勢がそれに続くように叫ぶ。
私はあまりの恐怖に叫ぶことすらできずより強く幼馴染の手を握った。
それに気づいた彼女はこちらを見つめ、笑顔で握り返してくれたので私はパニックにならずにすんだ。
「ここから出せええええええええ!!!!」
「死にたくない死にたくない死にたくない…」
ラビが男の血で汚れたスケッチブックを手にとってめくる。
「静粛に。」
その3文字では静かになるわけもなく、混乱は続いた。
「静粛に。」
もう一度スケッチブックをめくる。状況は変わらない。
次の瞬間、声を張り上げていた人たちの頭が弾け飛んだ。
血と脳漿の雨に思わず吐き気を催す。
ラビはその場一切動いていない。ましてや指の一本も動かしていない。
神の使いの権限というものを使ったのだろうか。
「静粛に。」
念を押すようにもう一度、スケッチブックをめくる。
声を出したら死ぬ、殺される、はっきりとそう認識した。
私達含めた5人以外は"今の"でみんな死んでしまったようだ。
ラビは満足そうに頷くと、スケッチブックをめくった。
「今からルールを説明します。」
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