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短編集

別のフォルダ保存の正しい使い方

作者: 光乃永


『愛は死なない』


ずっとそう信じてた。


失恋したことは何度もあった。

その度に、永遠を信じ、永遠を信じては裏切られ、そして自らも裏切ってきた。


ある彼女はバスに飛び込もうとしたり、

違う彼女は、裁縫バサミを持ち出し一緒に死んでくれと言ってきたり、

そのまた違う彼女は、元鞘と浮気されて別れたこともあった。

たんに連絡を無視されて、時間が経ち自然消滅したことだってあった。


もう最後にしようと思ってたんだ。

次で『恋』をするのは。

その筈だったのに……。


僕が馬鹿なことをして笑わせたあの笑顔は、

寒空の星の下で繋いだ手の温もりは、

二人が交わしたあの約束は、

全ては、嘘だったのだろうか……。


彼女を想って赤い毛糸で作ったあの指輪は、もう横浜市の燃えるゴミ袋に入れられ灰になっているだろう。

物に罪は無いと言う彼女は、思い出には価値を感じない。

職人体験で一緒に作った形の歪な手鏡は、二人で写真を選んで作ったアルバムは、僕の送ったいくつもの手紙は、きっともうこの世にはないことだろう。


喧嘩して泣いて、

仲直りしたときの心の温かさは、

もうこの胸からも、とっくに熱を失ってしまった。


『もし切れても、何度でも繋ぎ直すよ』

小指を結んで、僕がそう言った運命の赤い糸は、もう繋ぎ直せないほどに散り散りになってしまったのかもしれない。


そして、思い出すことも少なくなり、いつしか愛は死んだのだ。



――三年経ったある日、ふと彼女との思い出が温かくなっていることに気が付いた。

年月は辛い思い出を風化させ、いつしか思い出さなくなり、改竄され、都合の良いことだけが思い起こされるようになる。


だから僕は都合の事実だけを思い出す。

この胸の内の温もりが愛ならば、きっと僕はこの想いを捨てることはできないだろう。


これも男の女々しさなのか。

これが僕の考えた別のフォルダ保存の正しい使い方。


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